フリ
〈ユア視点〉
この病院の良いところは定時に帰れるところだ
田舎の病院だからか午前中は近隣のお年寄りや
老人施設からの受診者が多く混み合うけど
午後は比較的いつも空いていて
医療事務作業よりも雑務作業の方が多い位だった…
17時ピッタリになると先輩達や看護師
同じ建物の病棟勤務のスタッフで
ごちゃごちゃになるロッカールームは
私にとってはまた居心地が悪く
「戸締りと警備作動ボタン押して帰ります」と
言っていつも時間を潰して皆んなが帰った後に
ロッカールームに行き着替えて帰っていた
今日も戸締りを終えて自分の席に腰を降ろして
ぼーっと机に張り付けてある点数早見表を眺めた
(電子カルテさえあればあんまり必要ないのに…)
ミヨシ「おい…」
予想していない声が耳に聞こえて肩を
ビクッと揺らして恐る恐る振り返ると
三好先生がコーヒーを片手に立って
コッチを見ていた
「あっ…お疲れ様です」
ミヨシ「・・勉強してるフリしてる位なら早く帰れ」
「・・・え?」
先生はそう言って
自分の診察室へ消えていった…
( 勉強してる・・フリ? )
フリって何よ!とムカムカと気分の悪さを
感じながら立ち上がり
鍵を閉めて警備ボタンを押してから
そのまま女子トイレへ行き時間を潰した…
家に帰ってお弁当箱をキッチンで洗っていると
お母さんが帰って来て「お帰り」と声をかけた
母「お弁当どうだった?」
「うん…美味しかった」
母「他の人もお弁当持って来てるんでしょ?」
「・・・うん…」
一人で車で食べてるなんて言えないよ…
あと……10ヶ月位我慢しなきゃいけないのかな…
学生生活も終わり社会人でこんな
イジメみたいなことをまさか自分が受けるなんて…
タイチ「結愛、仕事はどうだ?」
「・・・普通…」
夕飯の時に兄が唐突に訪ねてきて
一瞬ドキリとした…
タイチ「仕事は簡単なんだろ?」
母「簡単な仕事なんてないわよ!
でも、医療事務は大学で習ってたんだし
ある程度は問題ないんでしょ?」
タイチ「違うよー!
うちの外来に比べたら結愛の病院は
外来人数少ないから少しは楽だと思ったんだよ」
「・・・・お兄ちゃん…紹介してくれた人って…」
タイチ「まだ会ってないのか?
院内薬局にいるはずだけど」
お兄ちゃんは別の病院で薬剤師として働いている
院内薬局にいる友達は
きっと薬学部の友人なんだろう…
辞めたら迷惑か相談しようかな…
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