猫女は激怒する-2 ミーコ
しまった。思わず飛び出して来たゃった。
だって普通信じる? あんな口からでまかせ……本部のビルで登場して驚かせようと思ってたのに!!
このあたし、今世紀最高の美猫女金城美依子は、取りあえず男爵に近づくと、持っていたスリッパで「スパン」とその剃り上がったつるっ禿を殴りつける。
ちなみに男爵というあだ名はあたしが付けてやったものだ。
「グオっ! いきなり何をする!」
「阿呆! あんな口からでまかせ素直に信じる奴があるかっての!」
「何? でまかせ? 何がだ? 本人が違うと言っているぞ?」
阿呆かぁぁぁぁぁい! んな言葉、何で信じやがれるんじゃい!
うなだれていると裕太がそれに追い打ちをかける様に口を開く。
「ええ、僕の名前は神無月航太。水無月裕太なんて名前ではございませんが、それが何か?」
ムッカァァァ!!
恋人が出てきたってのになんだその態度はぁぁぁ!!
「いえいえアタクシあなたのことを以前お見かけし……」
「人違いです。それでは失礼」
シュタッと手を挙げ裕太は背を向け歩き始めた。
……人の……人の話を……遮るなぁぁぁ!!
「ふ……ふ、ふふふふふふふふ……ふはははははははははっ!コロス!!」
あたしは一声叫ぶと瞬時に戦闘態勢に入る。
「烈花!!」
あたしの唱えた言葉と共に指先に集められた妖気の弾丸が裕太へと襲いかかる。
「爆!」
裕太は1枚の符を人差し指と中指で挟んで取り出すと、妖気の弾丸に向かってそれを放った。するとその符は妖気弾に触れるその瞬間弾け飛び、妖気弾はその爆風に煽られ軌道を変えてあらぬ方向へと飛んで行く。
「うぎゃっす~!!!」
あ、しまった。手下Aに流れ弾が……ま、いいか。死にはしないって。
「こ、こら猫女! 周りを見て戦え! だいたい今回は穏便に……」
男爵が何か叫んでいるが、取りあえずは無視を決め込む。
この乙女の純情踏みにじったナンパ男に正義の鉄槌を食らわしてやるまで戦いは続くのだ!
絶対に土下座させてやるぅぅぅ!!
「久しぶりに会ったってのにいきなり攻撃とはどういった了見だい?」
「あら? 人違いなんじゃなくて? 神無月航太さん」
「お茶目な冗談が通じないのは相変わらずだね。じゃあこめかみに
「……なんでございましょうか?」
「ミーコさんは何で『そっち』側にいるのかな?」
「あたしに勝てたら教えてあげるわ」
「また
「そんなものは……自分の胸に聞け!」
あたしの周囲であたしの妖気に当てられた空気が渦を巻く。
術を発動しようとしたその寸前、しかし今度は裕太の方が一歩早く攻撃を仕掛けてきた。
「俺には何ら覚えがないんだけど?」
喋りながら取り出した数枚の符が宙に舞い、次の瞬間空中で影で出来た狼に変化する。影狼達は、あたしの周囲を取り囲むと、すぐ様一斉にパカッと口を開いた。
ゴォォォ--
あたしは次々に襲いかかってくる衝撃波を時には避け、時には妖気で相殺し、時にはスリッパで叩き落とす。
「うげ!?」「うが!?」「うご!?」
あぁぁぁぁぁ~!手下B~Dが巻き添えにぃぃぃ!! あんたらの仇はあたしがとるから安心して成仏してぇぇぇ……って、まぁそれはそれで置いといて。
「浮気者には正義の鉄槌をくれてやるぅぅぅ!」
タッタッタッ--
「とりゃゃゃ! くらえぃ! ジャスティスストレートォォォ!!」
三角跳びの要領で裕太の頭上へ飛び上がると、右の拳に溜めておいた妖気を裕太に向かって解き放つ!
文字通り鉄槌だ!
因みにあたしが妖術を放つのにホントならば言葉はいらない。気分だ気分。
「だから身に覚えがないっぇぇぇ!!」
裕太はそう叫びながら符を指で挟んだ右手を掲げる。
「裂!!」
唱えたキーワードを引き金に、符が空間の亀裂を生み出して、あたしの放った妖気の塊を切り裂いた……が、しかし
「ふははははははは! 甘ぁぁぁい!」
しかしあたしの妖気塊は切り裂かれつつも地面に到達し、波紋状に衝撃波を撒き散らした!
「俺は無実だぁぁぁ!!」
叫びながら裕太が吹き飛んだ!
いい気味ぃぃぃ♪
あ、男爵も吹き飛んじゃったけどまぁいいか。
あたしは、スタッと華麗に地面に降り立った。
ふふ~ん。じゃあ早速、無様に地面とキスしてる裕太の御身を拝見させていただきますとしますか……ん? あれ?いないぞ? そんなに遠くまで転がっていっちゃったのかな?
その時、背後からカサカサと音がしたので慌てて振り返る。そして迂闊にもカサカサの原因を発見した瞬間目を点にしてしまった。
「……やっこさん?」
折り紙のやっこさんがこっちに向かって歩いてくる……何故にやっこさんが?
「はっ?! 唖然としてる場合じゃないぃぃぃ!」
案の定、やっこさんが襲いかかってきた!
「クッ……」
あたしはバシンとやっこさんを叩き落とす。
バホッ--
「しょーげきはがぁぁぁ!」
吹っ飛ぶ私ぃぃぃ! 乙女になんてことをぉぉぉ!!
地面にキスする事だけは避けようと必死の思いで体勢を立て直し、ズザサ~っと地面を滑ると、立ち止まらずにすぐさま跳び退いた。
直後、頭上から銀色の雫状の物体が降り注ぎ、地面を穿つ。これは以前に出会ったばかりの裕太が使っていた謎の銀色球体で、符呪士が使う式神の一種だそうな。実は某ゲームが大好きな裕太が、メタルなあれを模して式神に仕立て上げたらしい。
今のは上手く避けられたけど、しかしまだまだ油断は出来ない。相手はあの水無月裕太だ。心の隙を突くいやらしい攻撃に関しては右に出る者はいない。アイツは喪○福造かぃ!
「相手をおちょくる相変わらずな攻撃の数々。性格の悪さがにじみ出てるわね。女の子に嫌われるわよ?」
あたしのありがたい忠告に裕太は瓦礫の陰から姿を現し、肩を竦めながら言葉を返してきた。
「俺はミーコさんに嫌われなければ他はどうでもいいけど?」
……は!
いやいやいかんいかん! お、臆面もなくそんなことを……こいつは自分が何をしたのかあたしが知らないとでも思ってるのか!
「ねぇ、いい加減教えてくれないかなぁ……俺なんかミーコさんの気に障るようなことした?」
しらばっくれる気か? こうなったらこいつの悪事を白昼の元にさらしてくれる!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます