Ⅵ.教祖
救世主が現れた。
一部のマスコミはそう報道した。
医療関係者でもなんでもない、一成人男性が、“Unknown”の患者を次々と蘇生したという事実は瞬く間に日本全土を駆け巡った。
一部ではその男の自作自演ではないのか?とする見方も広まったものの、それもやがて沈静化し、後に残ったのは正体不明の不審死を食い止められるのはその男一人であるという事実だった。
男は自分一人で各地を回るのは難しいが、自らの力を分け当たえることは出来るとし、一部の人間に力を分散させる。実際に「力を分け与えられた」とされる人間は“Unknown”の患者を見事に治癒して見せたため、彼の力はさらに崇め奉られることとなった。
やがて、事態が鎮静化していくのにあわせ、一つの宗教法人を設立。そして、その信徒になれば“Unknown”の脅威からは逃れられるという主張を開始した。
これも初めは半信半疑で受け入れられていたが、信徒にならなかったものが再び“Unknown”の症状を見せ始めたことから、彼に対する信仰は集まり続ける。やがて彼は日本国の誰よりも発言権を持つ“神”として君臨する。
その後、彼は言うのだ。日本国のみならず。海外でも“Unknown”の脅威は広がるかもしれない、と。
そして、そうなったときに、自らの教えに従えばきっと救われるであろうという主張も添えたのだ。
これも初めは懐疑的な目で見られていた。
しかし、結果は同じ。嘘のようにぴたりとなくなっていた海外での“Unknown”発生は、彼のこの発言をきっかけとするように増加の一途をたどったのだ。
やがて、彼を教祖とする新興宗教団体は世界各地に広がりを見せた。彼の自らを“神”とする発言は、文字通り、達成されたのだった。
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