0.陰謀

「この男か。〈解除キー〉を仕込むのは」


「はい。この男なら既に身内らしい身内もいませんし、最近は誰とも会っていないようですから、間違って〈解除〉してしまう可能性も少ないのではないかと思われます」


「うむ。それで、件の非検体Xはどうなった?」


「非検体Xは先日無事に死亡が確認されました。ニュースでは不審死として取り扱われているようです」


「馬鹿!そんなことを聞いているんじゃない!死体はどうしたかって聞いてるんだ!あれを解剖されるなんてことになったら終わりだぞ。ちゃんと関係施設を通したか?」


「そちらの方もぬかりなく。病院の方に通達して、解剖などは行わないか、行うにしても、特定の医師や病院以外は関わらせないようになっております」


「よし。これできちんと〈増殖〉してくれるんだろうな?」


「大丈夫だと思います。葬式はつつがなく行われたようですので、参列者の中から徐々に死者が出てくるものと思われます」


「よし……後は何かあるか?」


「一つ気になることが」


「気になること……?」


「はい。XX大学付属病院の元院長が我々のことを妙に嗅ぎまわっているという噂があるのですが……」


「あいつか……今は確か名誉院長だったか……でも、噂だろ?」


「はい。でも火の無いところに煙は立たないと言いますし」


「まあ、大丈夫だろう。やつ一人では何も出来ん。もし面倒なことになったら適当に処理しておいてくれ」


「かしこまりました」


「警察や関係閣僚への根回しも忘れるなよ!」


「はい、承知しております」


「よし……しかし、まさか想像もしないだろうな。人間に寄生し、生命活動を支配する地球外生命体が存在するなんて」


「まあ、私も未だに信じきれませんからね……それを用いた支配計画なんてのもなかなかに驚きですけどね」


「まあな……でも、これで我らの立場は安泰なわけだから。簡単なものだ。はははははは」

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