Ⅱ.発展

 Bさんの死と、その“症状”は、センセーショナルな事実として、日本全土を駆け巡った。警察はこのことに関して「Aさんの死との関連性は不明」という声明をだしたものの、そんなものを信じる人間は少なく、話題は面白おかしな方向へと、多くの尾ひれをつけて拡散されていった。


 だが、自体は急変する。


 Bさんの死と前後するような形で、Cさん(55歳・会社員)が亡くなる。CさんはBさんの父親であり、つい先日、実家で家族団欒の時を過ごしたばかりだった。


 それだけではない。○○県を中心とした全国各地で、原因不明の変死が相次いだ。


 それらはいずれも「Aさんの関係者」だった。


 BさんはAさんと同僚で、歳は離れているものの、友人のような関係性だったため、葬儀にも参列をしていた。


 CさんはAさんの葬儀には参列していないものの、Bさんの実父であり、つい先日顔を合せたばかりだった。


 一人のサンプルではどうすることも出来ない。


 しかし、二人、三人とサンプルが揃ってくれば、出来ることはある。


 死亡者の数が三桁を数えたあたりで、「Aさんや、Aさんと接触のあったものと接触し人物」のみが死に至っているという事実が確認される。


 この事実は瞬く間にネットなどで拡散される。その結果Aさんの勤めていた会社では退職希望者が相次ぎ、○○県からは引っ越しを希望する人間が後を絶たなくなった。他方、○○県から遠く離れた自治体では「○○県出身者を県内に入れるべきではない」という論調が広まったが。それは差別に当たるという論調も強く、結果として人々は何かにおびえるようにして、○○県から“脱出”した。


 それから数週間後、不審死は全国各地で相次いだ。


 Aさんの死から数週間はただの「不審な死」程度にしか捉えられていなかったので、海外へと渡航する人物も多くいた。


 その為、このころになると、日本国外でも同様の死が確認されるようになり、国際的な日本への批判も高まった。


 死者の数は指数関数的に増えていく一方で、不思議な点が二つ見受けられた。


 まず一つ。死者を診た医者や、彼らを火葬した葬儀関係者には一人も死者が見受けられなかった点。


 もう一つは、海外に波及したはずの死者はほとんど増えないまま、収束の一途をたどったこと。


 この二つに関しては最後まで誰も説明が出来なかったのである。

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