第17話 怪談 肝試しの帰り道

 これ、私の同僚の話なんですけどね。彼、肝試しが大好きなんですよ。ヒマを見つけては幽霊スポットなんかに出入りしてね。



 その彼がI湖の幽霊ペンションにでかけたときのことなんですが……


 F県I湖の幽霊ペンションっていったらF県の人間ならたいがい知ってるんじゃないかなあ。


 殺人事件の現場になった地下室はもう埋め立てられちゃってて、中に入れなくなってるんですが稲川淳二も取材に来てましたしね。


 まあ、今でも肝試しのメッカというやつで。




 その日も何組か肝試しグループがいたりしたんだけど……結局何事もなくってね。


 しょうがないやって仲間と別れて帰ることにしたんだ。


 すると帰りのT峠でね、急に猛スピードで走ってきたカローラⅡにピッタリ後ろに張り付かれちゃった。



 彼、その時な~んか違和感を感じたそうですね。


 よく考えたらごく平凡なカローラⅡなんて、こんな場所であおってくるような車種じゃないんですよ。


 スカイラインとかシルヴィアならわかりますがね。T峠っていったら下手するとポルシェやフェラーリまで出てくる走り屋の人気スポットで。


 またやっかいなのに捕まったなぁと思ってたんだけど、もう80km超えてるのにピッタリ張り付いてて一行に離れない。



 彼もなんだか気持ち悪くなっちゃってね。


 ちょうど数百mさきに無人の自動販売所があって……そこでコーヒーでも買って後ろのカローラⅡをやり過ごそうと思ってたそうですよ。


 それで助手席においてあった財布に手を伸ばした……その時何の気なしにフッとリアウィンドウが目に入ってきて……彼「あっ!」って叫んだそうですよ。



 いない! 後ろにカローラⅡなんていないんだ!。


 うそだろ、おい!ってバックミラーを見たら……今度は確かに写ってる!


 もう一度後ろを見ると……やっぱり誰もいない……コリャこの世のモンじゃねえぞ!


 そう思った瞬間ゾッとするような低い男の声で



「よくわかったな……」



 ……って、そう言われたそうですよ……。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る