第6話 怪談廃屋の一夜
前回の友人と旅行した時の話で……北海道のYにいったときのことなんですけどね。
もともと炭鉱で栄えてた町なんですよ。それが何十人も亡くなる大事故が起きてからまもなく炭鉱は閉鎖されちゃいましてね。
町を賑わしてた炭鉱労働者がいなくなったもんだから町の収入は激減、過疎化まっしぐらというわけで……
財政再建で話題になったから知っている人も多いと思いますよ。
訪れた当時は有名な町なのに随分寂しいとこだなあ……なんて思いましたがね。
町についたのがだいたい午後3時くらいだったから……ちょこちょこ歩いてみたもののなにも見るとこなんかなくてね。
いい時間になってきたし今日はもうここに泊まろうか……って話になって・・今考えれば魔が差したんですねえ……
「ここいいね……この家に泊まろうよ!」
って私そう言っちゃったんですよ……。
その家っていうのが廃屋でね。
町を歩いてて驚いたのが廃屋が異常に多いんですよ!
3軒に1軒……は言いすぎにしてもやたらと廃屋が多かった。
みんな町を出ていっちゃったんでしょうね……。そのなかの比較的傷みの少ない家を選びましてね、
ここで一晩明かそうと……ちょうどいい具合に宿泊費が浮いたってんでその時はラッキー!なんて友人と笑ってましたね。
そんで食堂探して腹ごしらえをしまして……軽くビールで一杯やったりしてね。
もう戻ってきたときには真っ暗ですよ。
でも酒が入って気も大きくなってるし手探りでずんずん進んでいきましてね。
客間らしい8畳くらいのスペースがあって……そこで寝袋ひろげてあっという間に寝ちゃった。今考えると旅行期間中って、小学生みたいに早寝早起きでしたね。(笑)
夜中の何時ごろかわからないんですが……どうもやけに寝苦しくて目が覚めましてね。
なんだか知らないがむしょうに暑い。
ストーブのまえで熱にあぶられてるような……そんな不自然な暑さで……ふと友人のほうに目をやると友人もうんうんうなって寝苦しそうにしてる。
でもそん時私は寝ぼけてたんでしょうね。北海道は日中は涼しくても夜はあんまり気温が下がらないのかなあ……なんてぼんやり考えてた。
脳が働かないんでそのままどれくらいぼんやりしてたのか定かでないんですけどね、ほら、夜中に目を覚ますと目が暗さに慣れちゃってるでしょ。
寝るときにはわからなかった部屋の状況が見えてくるんですよね。天井板がところどころ不自然に黒いなあとか、壁がなんとも奇妙な模様をしてるなあとか……。
しばらくたってようやく頭が働いてきましてね。
おい、ちょっと待てよ、と。さっきから畳にしちゃあどうもちくちくすると思ったけどこりゃあ畳の感触じゃねえな。かといって絨毯でもない。
なんだろうって寝袋から手を出しましてねゆっくり床に触れてみた。
「あああああああああっ!!!」
思わず叫びましたよ。
髪だ!ちくちくすると思ってたものの正体は髪なんだ。慌てて寝袋をでて床を見渡したら何十人分かわからない髪がびっしり敷きつめられてる。
それでさっき気になってた壁の模様……それが模様なんかじゃない、呪いの言葉なんだ!
死ぬまで追い詰める、とか殺してやる、呪ってやる、とかそんな恨みつらみがびっちりと壁の一面に書き綴られてる!
冗談じゃないこんなとこいられるか!って友人たたき起こして逃げ出しましたよ。
別に幽霊を見たってわけじゃない。でも私にとっては幽霊を見るより怖い体験でした。
あの家にいったい何があったのか……気にはなりますけど……もう二度と行くつもりはありません。
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