第39話 ローレンスの恋

「卒業式は間に合いそうにないな、早めにアルファードの地盤固めが先決だ」

「この日程では無理だなぁ、しかしアルファード殿下を行かせることは出来ない。こちら側で交渉するしかないか」

「また他国にちょっかいかけられても困るから」


「アルファード殿下がツァーリ嬢と政略結婚していただけたら国内外押さえられるんですがね」

「お互い、それは無理だと言われたよ、アルファードはシャーリス嬢をずっと待たせていたし、マッケンナ嬢も政略の為、小さい頃から王妃教育をしていて、こちらが駄目だからあちらへは出来ないと言われた。好きな人がいるともな」

「振られましたね、殿下」

「まぁな、隣国の公爵家だと言う、出来るだけ願いを叶えてあげたいと国王とツァーリ公爵と話し合い、第一王女が隣国の王太子に嫁ぎ、マッケンナ嬢が公爵家に嫁げば、政略的に思えるし、悪い言われ方はされないだろう」

「殿下はどうされるので?」

「自分が政略で使えるようならそれでもいいが、アルファードも努力しているが、まだ王太子教育が終わってない。まだ国内にいる必要がある」


何ヵ国か外務をするため、国内の仕事が忙しく学院には最後までいけそうにもなかった。3か月はこちらに帰れないなと歪な棘棘しいどんぐりをつまみボヤいた。

ジッとどんぐりを見て、3か月後には芽が出ているかも知れないと思った。

王族の荘園がある小高い丘に、どんぐりを埋め木の札を立てた。

これで楽しみがまた出来たなとストンズ嬢に感謝した。彼女はいつも楽しみをくれるな。


隣国に旅立ち、三カ国目の旅路の途中で鉱石の加工で人気の街に着きみんなと見ていた中で明るい赤茶色の髪に映えそうな髪留めを購入した。渡せるかどうかもわからないが、これはちゃんとしたお土産だな、と笑ってしまった。


国に戻ると春も半ば、どんぐりを見に行くとしっかりした芽が出て黄緑色に背を伸ばしていた。


「オーウェン、どんぐりの芽が出てしっかり根付いていた。嬉しいな」

「はいはい、殿下、溜まった書類を見てよく言えますね」

「すまない、嬉しくてつい」

「報告兼ねて土産を渡しに行かなくていいんです?」

「それはついでの時じゃないと迷惑だろうし」

「うちの王子は困り者だ」


サマーパーティーに行くことになり王妃をエスコートした後、少し手持ち無沙汰で、うろうろしていた。せっかくだから庭園にと足が向かい、明るい赤茶の髪がくるくる巻かれた後ろ姿におもわず、声を掛けた。振り返る彼女は去年より、ずっと美しく大人びていて、話したかったことが一瞬で飛んだ。


何を話せばいいかわからなくなって、土産を無理矢理押しつけた。土産を見て、彼女が嬉しそうに

「可愛い」

と言ったとき、俺自身を認めてくれた気がした。

音楽が聞こえてきた。咄嗟にチャンスだと思い、ダンスに誘った。彼女を見ると真っ赤になっていて、美しく大人びた彼女があまりにも可愛いくて、腕の中に閉じ込めたくなる衝動に駆られた。二人の時間が楽しくてこんな幸せな時間がずっと続けばと願った。


音楽が止み、身体が離れてゆくのも、手を離すのも惜しくて、送り届けると言い、少しでもゆっくり歩いて欲しくて、どんぐりの木の話をした。彼女が楽しそうに笑えば嬉しくて、彼女をセオドリアの所に帰したくなかった。彼女の手が俺から離れ、彼女はエイデルと踊り始めた。見たくない気持ちで自然と会場から出ていた。


気づいていた。この会場に土産を持っていったのも、渡せるかもと期待していたからだ。エイデルとのダンスも他の誰かに彼女を触らせたくないだけだ。彼女を欲している自分の気持ちと向き合った。


執務室に戻ると

「遅いお戻りで」

とオーウェンから嫌味を言われた。

「ストンズ嬢に土産を渡した。会いたかったんだ」

と今の正直な気持ちを告白した。

「揶揄うつもりだったのに頑張れって言うしかない。うちの王子だって欲しいものを手に入れていいはずだ。子供の頃から王太子として努力していたのを知っている」

「ありがとう、しかしこれは、我儘だ。どうなるかわからないが、取り敢えず国王と王妃と交渉だな」

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