第37話 2年目の交流会
今年の交流会も王妃様が参加し、表彰の選出をする。学長の開会の挨拶とともに始まった。
交流会1日目、ローラ達のグループ発表があった。席に座っていると、ローラが後から来て、
「私、発表者ではありませんが、緊張します」
「そうよね、自分が関わっているんですもの」
ローラはぎゅっと握った手を膝の上に置き、壇上を見つめる。
「素晴らしいわ、ローラ」
「ありがとう、シャル。明日は、シャル達のグループね。エイデル様が発表者?」
「えぇ、リーダーとして、引っ張ってくれた。相変わらず、セオ兄様と話してばかりでしたけど」
「ふっふ、ヤキモチ?」
「そうね、私もセオ兄様には聞きたい事はあったのですが、領地と学院を行ったり来たりでお忙しそうで」
セオ兄様は、父様同様に、国の中央機関では文官として働く事を目指し、次期領主の経営も始めていた。
「忙しそうですわね」
「私も中央機関の文官目指そうと思っているの」
とローラに言えば、ローラは
「私は、王宮で侍女を目指すわ、シャーリスを少しでも安心させてあげられるように」
「凄いわ、ローラ、貴女ならきっと出来るわ」
私達は先にある未来を語っていた。
交流会2日目、研究発表は順調に続き、私達の番になった。壇上のエイデル様に何人かの令嬢から黄色い声援があがっていた。私は、手に汗が出てきて少し震える。その手をぎゅっと握り、壇上を見つめる。
「シャル、素晴らしかったわ、凄い数の検証報告ね」
「ありがとう、私も多くを勉強させてもらえて感謝だったわ」
惜しみない拍手を聞きながら、学ぶ素晴らしさを実感した。
帰りの馬車の揺れが拍手の揺れのように響き、いつまでも今日を思い出し繰り返していた。
朝からサマーパーティーの準備で忙しい。去年と同様大人っぽい形で身体のラインが出る。
「少し恥ずかしいわ」
「お嬢様は背が高くて引き締まっておりますから、美しく見えます」
とアンナも答える。
今年は薄い緑色のドレスだ。胸元にサファイアを飾り、高い位置に髪を結ってもらい巻き髪になって、全体的に大人な仕様だ。
「あらあら、凄く似合っているじゃない、シャル。すぐに大人になってしまったみたいよ」
と母様にも褒められ、セオ兄様のエスコートで会場に入る。煌びやかな世界が広がる。
今年のパーティーからシャーリスは第二王子と入場でとても綺麗だった。続いて王妃様が第一王子にエスコートされ会場に入られた。ローレンス殿下は髪が伸びて、更に色気が増して、まわりは見惚れるばかりだった。
交流会の表彰の発表にドキドキする。隣にいるセオ兄様も今年最後の年なので忙しい中、尽力していた。兄様も掌を固く握っていた。緊張の中、学長の総評から始まった。
王妃様から受賞グループの研究テーマが発表され、エイデル様が表彰状をいただいている時、目頭が熱くなりハンカチを当て、想いを込めて手を叩いた。エイデル様は私達に見えるように高い位置に掲げてくれ、それを見て、誇らしく充実感でいっぱいになった。エイデル様は何重にも取り囲まれ、当分輪から出られそうになく、話す事は出来ないだろう。ローラを見てみれば、セオ兄様と話していた。検証論議は止まる事なく、周りの方々も参加して話は熱を帯びる。
窓を見れば、去年より明るい花々が綺麗に咲いていて、少し席を外すとローラと兄様に伝え、庭園に出た。
花の美しさと匂いが去年の楽しかった思い出を呼び出し、私に幻を見せたのかと思わせた。
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