第30話 ストンズ領での過ごし方3
雨が降ったっていいじゃない。
私の心は昨日から土砂降りです、持ち金全部落とすという大失態。
お土産ぐらい、買いたい。特産品?特産がないのがストンズ領。
小麦、芋、野菜、蜂蜜、収穫量普通。林檎や葡萄も普通、美味しいけど。川魚が釣れる、市の屋台で売ってた鮎の串焼きは美味しかった。地産地消な領地だ。
兄様は特産品を出して、経済をぐるぐる回したいのだろう。今回の視察はそんな様子が垣間見えた。優秀な兄様だか、見いだせないストンズ領の普通って恐ろしい。
転生者として、知識があれば家族の役に立つのに、残念。私のウォーキングが何かしらの役に立つならいくらでも早歩きを伝授する。
「アンナ達の「技」に近いらしい忍者を量産出来るのに」
とアンナに言えば酷く嫌そうな顔で
「お嬢様はストンズ伯爵領を密偵育成領にしたいんですか?」
と返ってきたから
「密偵っているの?」
と聞いてみた。何故しまったという顔をするのかわからないが、我が家に密偵がいるならば、私のお金を見つけて欲しい、と願う。
王都までの帰り道、アイスクリーム買えないじゃない。
アンナは呆れる。
「アンナ今日の淑女教育母様に貴族の礼がいいわよって。芯がぶれてないって。体幹鍛えているから」
「お嬢様は何になりたいのですか?」
また呆れた顔をする。
「貴族の令嬢に選択肢があるのかしら?」
「失礼しました」
「行儀見習いとして王宮の侍女とか公爵家の侍女とか奉公するのかしら?」
私の未来は決まってない。レオノーラ姉様は春に結婚され、セオドリア兄様はこの伯爵家の次期当主。
「お嬢様はまだ1年生です」
アンナが勇気づけてくれる。
「そうね、1年生、まだまだやることがたくさんある。ありがとう、アンナ」
まずは宿題の課題をしよう、村にも行って、何の作物を作るかも決めなければ。
雨が上がる。庭の花は雨粒の反射でキラキラしている、こういう時に妖精が見えたりして。雨上がりは幻想的で花々がもそもそ動いている。もそもそ?目をそこに焦点を当てジッと見ているとニョロリと細長いものが動いている。
「ギャー!」
と叫べばアンナが近寄り、
「蛇よ」
といえば、またスッといなくなり庭師を連れて来た。
「アンナ、あなたも蛇、苦手なのね」
そう言うと
「侍女ですから」
と答えた。きっとそういうものなんだろう。あとストンズ領、蛇多いよ。
兄様に伝えると、うちは藪や林、水場が多いからと知ってるよとのごとく答えた。
生きとし生けるもの共存。
ストンズ領で過ごした夏季休暇、帰り道、ノーラ姉様がアイスクリームを2つ買ってくれた。大好き姉様。
王都の伯爵家につけば、ローラとシャーリスから手紙が届いていた。
お金がない私は、アンナに図面を引いてもらい、必死に刺繍を刺し、バザーやボランティアで出すだろう品だと言って、母様にハンカチを渡し、なんとかお小遣いをいただいた。
王都の流行りのカフェに心が躍る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます