第29話 ストンズ領での過ごし方2

こってり怒られ、がっつり叱られるストンズ領での私に、ノーラ姉様が町に行こうと誘ってくれた。毎週日曜に開かれる市だ。楽しみだ。


一つ気になる事がある。

今日着ていたドレスの衿に小さな松ぼっくりのようなギザギザがついているどんぐりがくっついていた。

何か嫌じゃない。

たぶんついたとしたら、滝壺ではないかと予想する。しかしどんぐりの木があったかどうか?思い出せない。林道を歩いたとき、落ちてきた?

小さいどんぐりを指で摘む。ジッと見る。

衿について気づかないってあるかな?

「うーむ」

あの人、隣国の宰相は転生者で、二人の王子が揃うサマーパーティーでの断罪イベントが最後みたいな言い回しだった、第一王子は今年卒業、二人揃うサマーパーティーはもうない。

あの人が言っていた事は本当?このどんぐり怪しすぎる。埋めて木が生えて妖精が生まれました、魔法が使えるようになります、的なストーリーはないよね?なんか全く別な物語だよね?

コレ、めちゃくちゃ怖いモノな気はする。私、転生者の意味がコレなのか?

今までモブで普通令嬢だった理由は、断罪のその後のストーリー、シーズン2か?

自問自答とどんぐりを机でコロンと転がす。


朝目覚めると、コロンと横向きで転がる小さいどんぐりを見ても変化がなかった。好奇心が土に埋めようと誘う。

いてもたってもいられず、小さいどんぐりを匂い袋に入れて、ウォーキングに行く。冷静になりたい。

はじめは、あれこれ考えたが、今の現状に満足しているため、アレはあのままにする。もしこのストーリーに続きがあっても内容を知らない私が、どうこう出来ないだろうと判断した。


気持ちいい朝の風は、寝不足気味の私を元気にしてくれる。ウォーキングのさっぱりとした疲れも心地良い。

朝食いっぱい食べれそう。

今日の予定を組み立てて、勉強しようと気合いを入れる。

母様の指導に耐え抜く事、数日、また領地の視察に同行させてもらえた。

勝手に動くなとの制限つきだが。

今回の場所にも先日の村と同様畑の向こうに林があった。農民の方に話を聞き、軽いこの土を触りながら、先日の村の土地もサラリとして軽かったなと思う。

「だいたい3年ぐらいで土が痩せてしまう」

と村人の説明に頷き、

「肥料は何を使用していますか?」

「灰や堆肥を」

調べた通り、大抵の領地と同じだった。もう少し土を調べてみよう。手触りの軽い土は生気がなく見える。土地が疲れているのだろう。


提起する問題も挙げられそうで、実験が出来そうな場所も父様や兄様が与えてくれる。宿題の課題も順調に進む。


実践で知る事が、机上の学習もある上で成り立つ事がよくわかる。勉強する意義ってこんな風に変化し、変化が楽しい。


本で調べたり、兄様にアドバイスをもらったりしながら、林の土を畑に混ぜて今日作物を育ててみようと思う。違う国では、森の土を腐葉土と呼び、栄養豊富で堆肥と同様に使用している。うちの領地も林の腐葉土を利用してみたいと思った。今の林を切り崩さずその場所も残り、栄養分も作ってくれる。

上手く行けばいいな。


ノーラ姉様とのお出かけは、賑やかな市で楽しかった思い出といい匂いの屋台としょんぼりな出来事の組み合わせだった。


途中、私の持ち金全部落としてしまった。肩をすっかり落とした私に姉様は、美味しい串焼きを追加で買ってくれた。けど私の持ち金の事を考えるとなかなか浮上は出来なかった。串焼きは美味しかった。

何かお土産買いたかったなと思いながら、また母様に叱られた。

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