第28話 ストンズ領での過ごし方

朝の気持ちいい空気が、庭園へ誘う。領主邸の庭園も素晴らしい。ウォーキングもさくさく進む。

「お嬢様、急いでどちらに行かれるのですか?」

こちらの庭師とは初対面。ここはいつもの軽く手を上げるだけでは駄目だろう。

「おはよう、気持ちのいい朝ね。今私は、ウォーキング中なの。素敵な庭園で心が踊るわ」

「いやいやお嬢様、花を愛でている感じには見えませんよ、ハハハ」


「… …」

「続けるわ」

王都より涼しく、私の早歩きも軽快でアンナが呼びにくるまで続けて、朝食に遅刻してしまった。なんとここで母様との一対一の淑女教育が毎日行われる事が決まる。

私も父様や兄様と領地を回るつもりだったのに。と口惜しげに呟く。

「シャル、宿題の課題はどう?」

「行ってみたい場所があるのです」

と伝え、何日間かは淑女教育をお休みして良い決定に嬉しい。


初日から淑女教育は母様の熱が入っていた。私は貴女を心配しているのです。と反論などできようもない熱い思いをぶつけられた。

「淑女とは、常に冷静、表情に出さず、絶え間ない微笑み」

「はいぃ」

「駄目よ、ひきつっているわ」

「はいぃ」

「まだまだよ」

2時間ほどの令嬢の微笑みは頬の筋肉がヒクつき終了した。


翌日は父様、兄様の村の視察に連れて行ってもらった。この村、畑が元気がないらしく実りが少ない。

父様、兄様が村長と話している間、畑を見せてもらった。私の課題、不毛な土地で育てる作物、何かしらヒントはあるかしらと土を触る。触ってもわからない。

冷たい風が吹いてきて、そちらに目をやれば、林のような木々と刈ってない雑草。一部道のような場所を見つけたのであちらに行ってみます、と村人に伝え、林の中に行く。


奥には小さな滝壺の溜まり池があった。神秘的な光景で大きな蓮の葉が水の飛沫を浴びて光る。紫やピンクの花は緑の葉の上に華麗に咲いている。

妖精がいてもいい光景だ。

大きな岩が何箇所かあり木苺がつたをはり赤く美味しそう。

妖精はいないが大きな蜂がブンブン飛び回る。領地の蜂も王都に比べて倍の大きさはあるのに、領地の蜂の倍はある。これが妖精か、と後退りしながら蜂のいない場所へ慌てないよう移動する。

まさか兄様、この蜂を見ての蜂蜜?ここに蜂蜜があるのかしら?

辺りをキョロキョロしていれば、岩の間に大きな蛇もいました。木苺食べに行かないで良かった。蛇と目が合ったように見つめて動けない。蓮の葉の上に小さい青い鳥が止まってスッと消えた。

やはりここは妖精がいるのかな?サバイバルな現場は蛇の喉元がボコッと動いている。


こんな綺麗な場所があるなんて。最初に思ったままの気持ちで帰りたかった。

あっという間に心が萎んだよ。

また来ようとは思わなかった。

その後勝手な行動に父様兄様が怒り、しばらくの外出禁止が言い渡された。

夕食後には母様の淑女教育が増えることが決定した。


二人の友達に手紙を書いて返事を貰って癒されたい。

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