第31話 カフェは休暇の報告会
王都の商店街は賑わいも華やか。ワクワクする。
「シャルお腹を押さえてどうなさったの?」
シャーリス…聞いちゃうか、それを。
「私、領地でお財布落としたの、みんながお腹に抱えていなさいって言うの」
「盗られてしまったの?」
ローラ心配してくれるのか、とローラを見れば
「シャル、気配を感じるのよ、悪いことする人は悪い気が出ているものよ」
「えっえ〜どうしたの?ローラ」
「これ覚えると非常に便利なのよ」
当然のように言うローラを私は見てはいけないような気がした。
王都の人気カフェは、大繁盛。
行列に並びながらも夏季休暇の話をお互い報告し、話していると時間は早くに過ぎ、席に案内される。カフェの室内もお洒落で可愛い。周りをみても女の子ばかり。
「働いてる人達も可愛いですね」
何もかも可愛いで包まれているよう。
「何にしましょうか?」
あまり来る機会がないので色々食べてみたかった、それは二人も同じらしく
「日替りデザートの三種盛り」
みんな同じになってしまった。沢山食べれるって幸せ。
領地の行きに、ツァーリ領でエイデル様とマッケンナ様に会って、アイスクリームが逸品だったことを伝えた。
母様に借りたお金で購入したお土産の羽根ペンも渡し、楽しい3人の茶会が始まった。
「マッケンナ様にお会いしたのね、お元気でした?」
「えぇとても。アイスクリームの新作など宣伝していました。休暇明けから学院に来るそうです」
すると、シャーリスは少し難しそうな顔で言い始める。
「休暇明けから学院と王宮での教育が半々になりそうです…正式に第二王子アルファード殿下と婚約するわ」
「そう、おめでとう、シャーリス」
「おめでとう」
ローラも私もうれしい。そんな時ちょうどケーキが来た、オレンジが輪切りに重なるタルト、クリームたっぷりな木苺のケーキ、黄色い粒々が入っているアイス、どれも可愛くて美味しそう。
アイスから食べるとレモンの酸っぱさがアイスクリームをさっぱりさせ、何個でも食べれそう。
「美味しい」
「マッケンナ様と王宮で王妃教育を受けるわ」
とさらりというシャーリス。
「大丈夫?大変そうね」
ローラも心配している。
「第一王子ローレンス様の学院卒業とともに決まるそう、私も覚悟をしないといけないですわ」
そんなことを言うシャーリスはとっくに覚悟なんて決まっている顔をしていた。同じ歳の女の子、強い眼差しの美しさに惹きつけられるようだ。
「領地でお会いしたマッケンナ様は、噂で聞くより、良い人でしっかりしていた美人さんだったわ。3歳違うだけで私とは全然違う」
というと二人は、ころころと笑いあう。
「シャルは、気になる人は?婚約の申し込みなどは?」
「無いなぁ」
と言いながら、木苺のケーキをパクっと口に入れる。クリームの甘さが幸せすぎて、残念な顔になっていた。
「ローラは?」
と聞くと、少し恥ずかしそうに
「婚約申し込みは何件か来ているわ、今、父と母で精査中よ」
とモジモジ話すローラの可愛いこと。
「あら、お目当ての方がいるのかしら、ローラ?」
とシャーリスも詰め寄る。
「お目当てと言うよりもそうなったらいいなって感じよ。出来れば、とかそんな感じ」
チラッと私を見ながら言い、顔を赤らめたローラの可愛いさったら、天井知らず。それからもシャーリスは追及の手を緩めず、恋話は続く。
私は残念な子だよ、キャッキャッの話題提供は出来ないけど、二人の話を聞くのは楽しい。
ケーキの幸せに舌鼓を打ちながらも二人とはしゃいで、わいわい言っていられる時間は学生だけなのだと思う。
「シャーリスこそどうなのよ」
ローラの反撃に、こちらはモジモジ答える。
「アルファード様は優しい方よ。思慮深いし、今回の騒動も全部早めに対策してくれて、助けてくださっていたし、頑張った時はきちんと誉めてもくれる」
シャーリスも頬を赤らめて話す。なんて甘酸っぱい時間だろう。
「来年はデビュタントね」
「夜会やお茶会、学生だけどある程度の社交が始まるわ」
二人の言葉は、大人になる準備が出来ている。こんなふうに流行りのカフェで楽しく話が出来るのも数回だろう。
淋しくもあるが二人の顔は前を向いていて綺麗だった。母様が、淑女教育に力を入れていた理由もわかって感謝した。
たっぷり遊んで、夕暮れ前に
「また来ようね」
と言い合いそれぞれの家の馬車に乗る。横を見ると串焼きの屋台があったので、姉様にお土産をと思い近づくと、前方にある孤児院が目に入る。
「ここまで来たら挨拶しなきゃ」
と孤児院の門を開けて
「こんにちは」
と声をかけると帰ろうとしていたローレンス殿下と目があった。
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