第13話 攻略対象関係者
教室に入ると二人の友達が出迎えてくれた
「もう体調はよろしいの?」
ローラの可愛い声に癒される。
「とても元気よ」
と言うとシャーリスから、図書室の司書の中に怪しい人が侵入していて、昨日近衛騎士に捕まった事を聞いたから、一昨日の放課後図書室に一人で行った私に何かあったのではと心配してくれていたそう。
「勝手に心配していただけだから〜」
なんて言うから余計に可愛い過ぎると悶えてしまう。
ホームルームに交流会の研究テーマを出し、安心する。宿題は早めに提出したい派なのだ。学院に入って気づいたが学ぶ事が楽しい。前世を思い出したからか成績が良い訳でも物覚えが良い訳でもないが、単純に知る事が楽しい。
不思議な感覚なんだよなと思う。思い出す前から家庭教師に勉強を教えてもらっていたが、楽しいという感覚はなかった。どちらかといえばさっさと走り書きするようなあまり知識が身についてない感じ。
今の時間を大切にしよう。一人で何らかの結論を出す。隣の令息が横目でこちらを見ているのも気づかずに。
「お昼は何にしましょう」
この時間も大好きだ。
「天気も良いのでカフェもいいですね」
「新メニューがあるらしいわ」そんなの言われたら新しいもの食べてみたいよね。
楽しみは続くね。
「席空いてるわ」
「新メニューってこのクラブサンドかしら」
「3セットください」
少々声も大きくなって淑女らしくない。母様が聞いたら怒られるであろうが、ここは学院だ友達しかいない。二人は仕方なさそうに笑ってくれる。
「いただきます」
かなり厚さのある具材入りのパンに二人は悪戦苦闘しているが、私は口が大きいのか顎が強いのか厚さも構わず食事を堪能している。大きな口を開けていると声だけでかっこよさが伝わる第二王子御一行が側に来た。
慌てて食べるのをやめたがかなり見られていたと思う。側近の人の眼が見開いていたからすぐに俯いた。
「シャーリス嬢ご機嫌いかがかな?」
「まぁ殿下お声をかけていただき光栄ですわ。今友人と楽しく食事をとっているところですの」
「楽しそうだね、ご一緒してもよろしいかな、令嬢方」
いつもと同じ完璧な笑顔で言う。断れない言い方するな、と内心思っていると、シャーリスは
「こちらのクラブサンド食べるのに苦戦しておりますの、殿下達がいらっしゃったら益々口を開けられませんわ」
とコテっと首を傾げたシャーリスの華やかさと可愛さの二重奏よ。母様これが淑女ですね。見本が目の前にいた。
クスクス笑う第二王子は
「ごめんね、困らせてしまったね。お詫びの手紙を送るよ」
と言うと颯爽と来た道を帰っていく。美しさの風をここに撒き散らし女生徒の痛い視線を置き土産にしていった。
「ごめんなさいね、私、殿下の婚約者筆頭候補なの」
シャーリスが溜息がちに告げる。
生徒達の興味本位な視線と中には射殺すかの鋭い視線がまじっていて先程までの浮かれた幸せな時間はなくなり食事も途中でやめて教室に戻る事にした。
教室に入るとシャーリスは私達にまた謝った。
「やめてよ、気にしてないわけではないけどシャーリスが悪いわけではないし、謝る必要はない」
と伝えると消え入りそうな声で
「去年の件があるでしょ、あれで色々状況が変わってこの話もどうなるかわからないの」
と言う。
「辛い」息を吐くと同時に出た言葉は真実だろう。
第一王子が王太子廃嫡になれば第二王子が王太子。シャーリスは何年も前から婚約者候補だったそうだ。その頃第二王子は臣下になるのが前提だったはず。第二王子が王太子になれば背後に強い権力が必要になる。益々これはウフフな乙女ゲームではないんじゃないかと同時にもし乙女ゲームならシャーリスは…攻略対象の悪役令嬢なの?
絶対違う、と思考を捨てた。
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