第12話 耳に残る声
我が家の蔵書は領地関連の物ばかりだ。せっかく調べたり研究したりするなら領地の役に立ちたい。転生者でも前世の記憶がほとんどない私はお金や新しい技術には結びつかない。
ペラペラ本を捲ると昨日の光景を思い出す。第一王子と会ったあの場所、領地運営などの文官の仕事の本の分野だった。王子も領地運営するのかななんて。
今朝の夢見が後を引く。王太子廃嫡されるのかな、バッドエンドならあり得るだろう。去年の話だし、第一王子のストーリーは終わっているんだよね。と一人納得していく。
耳に残る「助けて」の声にまだ第一王子のストーリーは終わってないのではないかと不安が募る。
そもそも第一王子の話を物語1として第二王子が物語2とするにもおかしい。乙女ゲームにしてもラノベにしても二人王子が攻略対象なんて当たり前の話だろう。メインヒーローなんて考えを無しにして。あまりにも第二王子の物語が薄過ぎる。入学式のとなりのピンクな子名前さえみんなに覚えられてない。2日で退場するヒロインはないだろう。
どこかで見たことがあるのは本当にこの世界だったのかも怪しい。根本が怪しくなって、原点回帰をして見よう。まず、第二王子をスマホの画面で見たことがあるような気しているだけと考えるだけでそもそもが違くなる。そう考えると一番ゲームやラノベ、ストーリーって印象を導くきっかけは、隣の席のピンク髪の子の呟きだったのではないか。
ふぅ〜、もしあの子が2年という時間軸を第一王子がいた頃にイベントを起こしたら。乙女ゲームならヒロインだってそれぞれいるだろう。当時に転生者同士ぶつかりあったなら、想像すると恐ろしいね。今だって女の戦いは恐ろしいのに。今も幸薄そうな痩せた第一王子は骨と皮だけになりそうだ。まだまだ考えは纏まらないが、他人の不幸は蜜の味がした。
課題のテーマをやらねば、ペラペラ本を捲る。領地に不毛地帯があるらしく、そこでは作物が育たないと記載されていた。ここをどうにかしていこうというのはざっくりすぎるテーマかなぁ。
不毛地帯でも育つ作物
不毛地帯の土を変える
土壌の改良
不毛地帯のご利用方法
どうしようかなと悩んでいると扉から声がかかる。侍女から母様からお茶を誘われていますというので、現実逃避のように
「直ぐに行きます」
と伝える。
庭が一望できる場所に母様とノーラ姉様が楽しく話をしていて、平和だなぁと嬉しくなる。席を勧められ、甘いクッキーと温かい紅茶が幸せを連れてくる。一息も二息もついていると二人から何をしていたのと聞かれ、あまり進んでいない課題を話すのは少し気まずいが正直に
「交流会の課題でテーマを探してました。伯爵領の一部に不毛地帯がある事がわかったので、その場所でも育つ作物とか土壌の改良などをテーマとして扱うつもりで、ただありふれているだろうなとは思ってます」と伝えると母様は
「とてもいいじゃない」
と褒めてくれた。姉様からも交流会に相応しい学年関係なく意見交換出来るテーマよと言う。確かに学年関係ないだろうけどこのテーマは各領地あるだろう。だからこそ定番だろうな、土壌関連は私も良くわからないし作物の方でいこうかな、決めた。
早速自室に戻ったら、提出用の課題申請のテーマを書き今日はゆっくり寝れることに安心した。それでもまだ耳に残る声が忘れられずにいるのを気づきたくないので胸の奥に押し込める努力をする。
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