第14話 脱寸胴ようこそくびれ

この感じ何かしら、物語は進んでいるような、動いているのを実感させられているような。

まず、これがストーリーの上を走っているとしてヒロインってどこにいるの?

もしかしてヒーロー視点のストーリーなのか。それならシャーリスは悪役令嬢ではなく相手側からしたら攻略対象になる。あんな可愛い子悪役なわけない。攻略対象者の方がスッキリする。


考えたくない思いの一方で強制力なるものまで感じ始めて、私は関わりたくないと思いつつその現場にいる。これが少しでも前世を思い出したことによる何らかの『役』っていうことなのか?


モヤモヤする気持ちはどこにもぶつけられずくすぶる。こんな時はウォーキングに行こうかと自室を出るタイミングで待ったがかかる。

「本日はダンスの日です」

目の前のアンナから告げられる。出来る侍女。

「ありがとう、忘れていたわ」

「お嬢様少し体調が良くないのでは、顔色がすぐれませんよ」

私ってすぐ顔に出ることをアンナから言われる。母様に聞かれたらすぐに淑女のなんたるかを教示されそうである。

「マナーのレッスンと淑女の嗜みのレッスンが増えるのは嫌かな」

なんてアンナに言えば、仕方なさそうに笑ってくれる。


ダンスはいい、得意ではないけど、姿勢がちゃんとする。目の前にやるべきことがあるので余計なことを考えず、視線とステップに集中出来る。嬉しい事も。くびれが現れた、私の腹に、一か月の成果が少しでも現れるとやる気になる。まだポチャとした前腹部分が無くなった程度だか、かなり嬉しい。侍女が褒めてくれる。うちの侍女、本当に出来る。


運動した後の食事って美味しい、幸せを感じていると母様から声がかかる。

「今週のお休みにお茶会があるの。一緒に行くわよ。綺麗になっていくシャルを見せなきゃ」って。

私、綺麗、ってそこじゃなくて今週って明後日じゃない、など思いながら、仕方なさそうに返事をする。


ふふふと、ノーラ姉様が笑う。

「今週は私の婚約者のお家に招かれているのよ。宜しくね、シャル」

姉様にまで気を使われている事に申し訳なく、お茶会の大事さもわかっているのにね、また顔に出てしまった。母様の視線が痛い。

「楽しみにしております」

と告げ紅茶を飲む。姉様は一年後お嫁に行ってしまうのだと少し寂しくて姉様を見てしまう。婚約か、今の私にはまだないけど、シャーリスのこともあって現実的な話、いつ私にも舞い込むかわからない。思い人がいるわけでもないので父様にお任せするが、これが現実なのだなと思う。


前世を思い出したとて恋愛について知識が増えなかった私は、前世ではどんな人生だったんだろう。少しでも幸せだったならいいな。過去に思いを馳せる。悲しみも楽しみもない人生もあるし、激しく生きる人生もあるだろうなと眠りにつく。


お茶会当日は雲だらけの曇り空。

まるで先行き不安を表しているのではないか。少しスタイルが良くなった私のワンピースはウエストをリボンで絞るタイプ。レオノーラ姉様の上半身がピタッと腰から広がるスカートは上級者の着こなしで、より一層美しさを際立たせてた。まだまだお子様体型な私。より一層脱寸胴をしなければと思う。母様は姉様のお姉さんと言っても良いのではないかと思うぐらい可愛いらしい。淡い色合いのシンプルな装いでノーラ姉様の紺色を引き立たせていた。


ガタゴト走る馬車は、私を連れて遠くまで曇った空の下に連れて行く。

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