第8話 物語は終わっていた
お茶会大事の精神で母様の元へ行くとノーラ姉様もいた。
「母様、ノーラ姉様」
と声をかけるとスッと侍女の一人が椅子をひく。此奴もなかなかの忍者感。
挨拶を済ませると学院の様子を聞かれた。なので以前に連れて行ってもらったお茶会にいた令嬢とお友達になったと伝える。すると一を聞いてその倍は話しが膨らむ母様の話術に驚いた。凄いと首を縦や横にと振っていると
「淑女の動きではありませんね」
と注意を受ける。扇子を使って表情を隠す、わかっていてもなかなか上手く受ける事が出来ない。
「シャルあなた今日庭園でバタバタしていたのですって、どうしたの?」
と聞かれる。ここは正直にくびれ有無を言おうと声に力がこもる。
「母様みたいになりたくて、この私の腹辺りの肉をどうにかしたい」
と言うと二人は眼を大きくして驚き
「第二王子への懸想」
かなんて二人はキャキャっと話しているから違う旨を伝えたがちゃんと伝わったかなぁ。全く伝わって無い気がするけど。ついでに今日あった出来事、第二王子とピンクちゃんとの廊下での一幕を話すと、ノーラ姉様が嫌な顔をして去年の騒動の子爵令嬢のことを話す。
「何でも子爵令嬢と第一王子の出会いは入学式前に学院の門付近でぶつかって、そこから交流が始まったとか。私は見ていないのだけど、噂は瞬く間に広がったわ。今はそこから計略的何かを感じるけど、事あるごとにその令嬢は騒ぎの渦中にいたわ。交流会なんかでは新しい意見を積極的に出しクラスを導いていたとか成績も良く誰にでも笑顔だとか良い話はそんな感じで。悪い噂はほぼ毎日聞いたわよ。休み時間ごとにどこからか現れて王子周辺側近達に媚びていたとかいつも瞳を潤ませて可愛くそこら辺の男性を取り巻いていたとか。女生徒から注意を受けるとすぐ泣くとか。周りにいる男子生徒から注意をした女生徒がずっと嫌味を言われ、その子は療養中だとか。関わると損をするなんて囁かれてたわ」
と言う。二人して心配気に私を見る。
「ご安心を私はそのピンク髪の御令嬢と話しても知り合ってもおりません、もちろん第二王子にも近づきません」
と声に力がこもっていた。
件の子爵令嬢は何かの物語のヒロインだったんだろう。始まりのイベントに成功して次々に攻略とまで考えると入学式の日ピンク髪の子は遅れて講堂に入ってきた、今日も門の近くに朝ウロウロしていた。イベントを起こそうとして帰り際実行、そして失敗よね。始まりを失敗したストーリーってどうなるのかしら、などと考えていたらお茶会終了していた。
今日も色々あったなと考えればドツボにはまりそうなのでまた腹筋をした。お肉があっても動く身体、若さって最高。ちなみに母様から身体を動かすならダンスのレッスンを増やしたらとの助言で週一回から二回になった。庭園のウォーキングは明日からもつづける。15歳のデビュタントに向けてと言ったら
「そうね、美意識が高くなったのはいい事ね」
と褒められた。脱寸胴ボディー、目指せくびれ。夕飯はしっかり食べました。運動お腹空く。
夕飯後の執務室
ラドルフ、セオドリア、レオノーラの三人が集まる。セオドリアから今日見たことを時系列通りに話し、レオノーラも妹から聞いたと相槌を打つ。
「また似たような令嬢が現れたんだな」
「明日にはあの令嬢学院にいないと思いますよ。余りにも多くに目をつけられておりましたし。子爵令嬢の件を聞いて真似をしているのでしょうか。馬鹿な事です」
とセオドリアは淡々と話す。レオノーラはシャルについては色気付いてきただけだといい大丈夫よと話す。また何かあったら報告をと告げ解散する。
ふぅ〜と深い溜息と深い眉間の皺を寄せながら
「何故こうも最近王族周辺が騒がしいのだ」
と独り言。もしそれを私が聞いていたら、王族はメインヒーローって言うのはストーリーの王道ですと答える。夜が更ければ朝が来る。
今日以降学院の門付近にはふわふわしたピンク髪の子の姿も声もなかった。結局名前も知らないヒロインなんてあるのかとこれでこのストーリーは終わったのかなと少し残念に思っていた。
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