第6話 始まる何かのストーリー

朝起きると、これまた素晴らしいタイミングでノックの音がする。やっぱり忍者かななんてアンナの顔を見ると、笑顔で

「おはようございます、お嬢様。さぁ顔を洗ってお支度しましょう」

さわやか過ぎて視線逸らしてしまった。支度の最中にある事に気づいたよ、私隠れ肥満だと。そんなでもと思っていたけどどう見てもウエストがない。くびれがない。ノーラ姉様や母様の可愛いらしさ女性らしさ、それは、くびれ。学院の制服はワンピースにボレロを羽織る長いスカート丈はくびれのない私には重く、まるでイッタンモメンみたい。なんで前世の記憶あまり意味がないものばかり覚えているんだろう。何か関係あるのかしら。


重い足取りでダイニングにつくと父様以外揃っていた。

「おはようございます、遅くなりました」

と伝えるとみんな笑って、今来たところだと言う。

温かいスープが香りからお腹を刺激して、お代わりをしてしまった。くびれは何処?


用意が終わると執事が来て、馬車の用意が出来ている旨を伝えてくれたので、アンナとともに玄関前まで行くとちょうど兄も来た。

「セオ兄様、髪が少し乱れてますよ」

と告げると手櫛で横髪を撫でている。ガタゴトと少々揺れる馬車が昨夜関わらないと決めたはずなのに、ドラマのようなゲームのような非日常がこれから始まるのではないかというワクワク感が押し寄せてくる。その様子をずっと見ている兄から

「何か楽しそうだね」

と何か問いただそうとする眼で私に言ってくる。顔に出てたかと思いながら

「昨日は教室までたどりつきませんでしたからね。今日から学院一年生です」

と言うと

「本当に楽しみにしてたんだ」

なんて少し驚きながら言われた。確かに思い出す前、面倒くさいななんて感じのこと言ってたと思い出す。よく前世思い出して性格変わるってキャラ変あるけど、やはり私も影響は受けているなと兄様の顔を見ながら思った。


ゆっくり馬車が止まると眼前には大きな門が開かれていた。ここから見る景色は確かにゲームやラノベの挿絵にありそうだなぁとしみじみ思う。これから4年この学院に通うのだと全く昨日とは違う自分に笑ってしまう。

「どうした」

と怪訝な顔で近づく兄に

「別に」

と言い歩きだす。横を見ると昨日の隣のピンクぽいふわふわしたうさぎ耳を作ったような髪型をしている子が門の近くでウロウロしながらこちらを見ている。


何かのイベントかと期待もあるが明らかに不審な動きをしている気がする。関わらないほうがいいと直感が働く。兄様は

「知り合い?」

と聞くから、食い気味に

「全く存じません」

と答えた。とりあえず教室に早く行こうっと。きっと何かあれば噂は回るだろう。それよりもここで留まるほうがヤバそう。門の側に近衛騎士が二人立っていて、怪訝な顔でじっとピンクぽい髪の子を見ていた。なんか疑われている?ストーリーは始まっているのかなぁなんて空を見ながら歩く。


ちなみに兄様は三年の文官クラス。三年になると騎士、淑女、研究生クラスと分かれる。でも一二年はみんな普通クラスが4クラス。私は一年Bクラス。知り合いがいるといいなと願いながら教室の扉を開ける。

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