第5話 疑われる?

夕飯も終わり夜の静かさが歩く音さえも響かせる。ラドルフ・ストンズ伯爵は眉間に深い皺を寄せながら執事を呼ぶ。

「セオとノーラをこちらへ呼んでくれ」

なんとも言えない魚の骨が喉に刺さっているような不快感に更に眉間に深い皺を刻む。普通にしていたら気のいい貴族様といった感じで少しばかり背の高い明るい茶色の髪がどこにでもいそうな印象を裏づける。


ノックの音とともに執事が子供達が来たことを告げる。

「失礼します、お父様いかがいたしました?」

なんて事のない口調でセオドリアが言うとレオノーラが軽い礼をとり執務室のソファーに座る。

執事に下がるよう伝えると自分もソファーに座り、ゆっくり話し始める

「先程の事だが、気になる事がある」

と言うと二人は少し前のめりになりつつ続きを聞く。

「シャルの事だが、知らない言葉、口調というべきか何か言っていたな。二人ともわかるか?」

と聞くとレオノーラは

「どもっただけではなくて」

と言い、セオドリアは、少し考えながら、医務室から目覚めてから様子が変だったと伝えた。ラドルフは、少し唸りながら言葉を出す。

「実は先の子爵令嬢の件だが、取り調べの資料に意味がわからない言葉が多数出ていて、魔女の仕業ではないかなど言っている者達がいる」

「どのような言葉ですの?」

と聞くと

「ゲーム、ヒロイン、ハーレム 、ストーリーなど何回も言っている」

「サマーパーティーでも言っていました、ヒロインだのなんだのなんだのと」


しばらくの間の沈黙を破ってセオドリアは言う。

「父様は魔女が次にシャルに乗り移ったとお考えですか?」

と提示すると、渋面で

「嫌な感じがする、また何かが始まるような、まだ何も終わっていないような不快な感じがする。…悪いが二人ともシャルを見張ってはくれないか」

「父様が仰るとおりなら大変な事になりますでしょうが、シャルが殿方を誘惑なんてするとは思えません。第二王子に例え懸想したとしても話しかける事さえ出来ませんよ」

と言うと

「わかっている」

と眉間に深い皺を寄せながら父様は二人の子供達に言う。

「それでもなんだね。情報関係の文官の父様が言うんだ、きっと何かあるんだね。何もないに越したことはないけど万が一があったなら対応も出来るからね」

セオドリアは明るく言う。学院を今年卒業したレオノーラは一年の花嫁準備として家にいる事が多い為、家の中はレオノーラ、学院はセオドリアがシャルの言動を見張る事になった。


その頃のシャル

家族の方がストーリーに詳し過ぎると情報の多さと羊の数を数えていた、前世の発言で疑われているとも知らず。

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