第3話 情報は一度にやってくる
扉の向こうからアンナが
「夕飯はどうなさいますか」
と問う。実は昼ご飯も食べ損ねた私は腹ペコだった。頭痛いけど。だからすぐに
「いただきます」
の一声です。食い気味に言ってしまったのは恥ずかしいけど、頭痛もなんだで顔色は悪いらしく
「お部屋にお持ちしましょうか?」
なんて気遣われる、でもここはみんなと一緒の方がいいだろう。
母様も兄様も心配していたし。
「ダイニングに行きます」
というとアンナはスッといなくなった。特殊技能かしらなんて考えるほど忍者ぽい。この忍者って発想も前世の記憶なんだろうなと思いながら、言葉は気をつけようと心に刻む。
ゆっくりダイニングに向かうと母様も父様も姉、兄も着席していた。父様がにこやかに私の入学祝いの言葉をかけてくれて食事が始まった。
いつもより少し豪華な気がする食事は前世の記憶と比べると味が薄いような気がしてきたけどいつもの食事なのでウマウマで食べた。すると、兄様が今日のことを話し始める。
「驚いたよ、入学式終了して医務室に運ばれたなんて聞いたものだから、何があったんだい」
「緊張してしまって」
というと一瞬シンとなってみんなが笑いあう。
「そんな感じ昨日も見受けられなかったじゃないか」なんて軽口を言われたものだから、ついついこちらも軽口をたたきたくなり
「第二王子の美貌に酔ってしまって」
と言ったらまたもやシンとしてしまった。私としては嘘と前世の記憶の一部本音を混ぜたあまり心配しなくて大丈夫感を出したかっただけなのだが思わない方向の言葉だったようだ。
「シャルは第二王子に憧れているのかい?」
なんて真剣に父様は言う。
「そんな憧れなんて、違います、初めて拝見してその顔立ちの整い具合がエグいなって」
「えっエグいとはなんだい」
「凄いなとか素晴らしいなとか」
とモゴモゴ言いながら焦っていた。
すると姉のレオノーラから
「シャルは王宮のお茶会に行った事なかったわね。本来なら去年行けたでしょうに、あんな事があったばかりだったから色々予定していたお茶会やパーティーは中止になりましたもの、残念だったわね」
と言われ、
「何があったのですか?」
と何も気がねなしで聞く。父様がゆっくり口を開くと少し厳しい顔で私に告げる。
「シャルも学院に通うのだから知っといた方がいいね。去年の事を。去年のサマーパーティーで婚約破棄騒動が起こった、第一王子と公爵令嬢だ、詳しくはセオドリア頼む」
えっ〜婚約破棄騒動ってよくあるラノベのパターンじゃないと脳裏ぐるぐるし始める中、兄様の説明が入ってくる。
「去年の学院主催のサマーパーティー、第一王子は生徒会役員でその横に同じく役員の子爵令嬢のコレット嬢がいて第一王子の婚約者公爵令嬢のマッケンナ嬢が目の前に呼び出され、よくわからない断罪が始まった。虐められただの注意しただけだのの口論の中第一王子が真実の愛だとか言い出し婚約破棄だなんだまた言い争いが始まり、教師達や警護に当たっていた近衛騎士達が総出でパーティーは解散。事態は収束せず彼方此方で喧嘩が始まってしまった」
と兄様の苦々しい顔と共に一息かと思うように告げられる、すると隣の姉様も
「あれはコレット嬢が悪いのよ、婚約者のいる方々ばかりに近づいて媚びているようにしか見えなかったわ」
と言う。
マジか、よくあるパターンのハーレム 狙い主人公はコレット嬢って言うのかなんて繰り返しながら相槌を打っていると、そこからまた父様が
「関係者全員頭を冷やせと王宮で貴族牢に入れられると、今度は色々やらかしが発覚し始めたんだよ。何故かみんな目が覚めたかのように色々となんでも話し始めたらしくってね。自白剤でも使ったのかね。例の令嬢との肉体関係、賭け事、騙し合い、公爵令嬢も器物破損に虐めの教唆など子爵令嬢には魅了関係の薬物利用だのね」
と呆れながらさすが文官なだけはあるとなかなか深い情報を教えてくれた。
はぁ〜と深い溜息をつくと母様からはしたないですよと注意が入る。
「凄い話ですね、それで今皆さんはどうしてらっしゃるのですか」
と聞くと家族全員何とも言えない表情で見合いしている、聞いちゃいけない話だったのかななんて思ってると兄様から
「休学している」
との情報。今日はなんて一日だって言いたくなるのを我慢しつつ、食事のあとのお茶を飲んでダイニングを後にした。
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