第2話 思い出す作業

溜息をつくと幸せが逃げると前世で言ってたななんて考えてると自室の扉からノックの音がする。

「お嬢様、お加減いかがですか?」

ゆっくり開く扉に視線をやると侍女のアンナがこちらを気にしながら話す。


「お嬢様、起きていて大丈夫なのですか?セオドリア様がお嬢様の様子がおかしいとおっしゃってましたよ。何があったんですか?」


ふぅ〜と息を吐くと何から話せば良いのかわからない、まだ全然頭の中が整理されてない事だけはわかるので

「今日は疲れたわ」

とだけ伝えると、アンナはお茶を用意すると宣言して扉から出て行く。


私が読んでたラノベ何かは悪役令嬢が転んで前世思い出して破滅フラグ折るというのが多かったなと思い出す。その場合、姉とか兄とか攻略対象で仲が悪いのを良くしたり、自身の性格改善とかなんだかんだ反省からの改善だったよな、でもこの状況下で180度性格変わったらもう別人じゃんなど考える。


温かい紅茶が運ばれてきた。私の意識は前世の言葉や考え方が入り込みはじめて何て言えばいいのか分からず、アンナに

「ありがとう、もう下がってていいわ、休ませてもらうわね」

となかば追い払うかのように伝える。


バタンっと扉が閉まれば、前世の事に思いを募らせる。なんで私死んだのかしら?いくつまで生きた、家族は、仕事は、なんて考えてもわからない。ただデンシャ、スマホ、画面に映った第二王子を思い出す。これは乙女ゲームかラノベか?

「全く思い出せない」

独り言。

言葉遣いが前世に引っ張られる。とそう言えば隣の席の子『ヤバい』って言ってた、絶対転生者だよね。なんかバタバタしてたし興奮してた、あの子に聞けば、これがゲームなのかラノベなのかは分かるよなと。でもこのパターンって嫌な予感しかしないとも思う。今わかっている事って第二王子何かの攻略対象者かメイン系そして隣の子、転生者。


やっぱり情報が少なすぎて何の対策も誰かしらに聞いて巻き込まれでもしたら大変と冷たくなった紅茶を飲み干す。もうすっかり日が暮れていた。前にも進まない考えだけで半日が過ぎていた。何やってるのでしょう私。


頭の痛みがずっと続く中何もせずに座っていただけの時間になった事を少し後悔した。さっさと寝てしまえばよかったな。


また扉をノックする音が私を浮上させる。

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