第43話 7月30日 桃山①
目には目を、歯には歯をって言葉知ってる?
目を潰されたなら目を潰し返し、歯を折られたなら歯を折り返す。
でも実はこれ復讐を推奨する言葉ではなくて、過剰な復讐を防ぐための言葉らしいね。
それはさておき。
僕は今、桃山 遥香の自宅に侵入しています! はっはァァアアー!!
いつもは僕が過剰なストーキングされているので、今日は僕が過剰ないたずらしまァァアアす! ポロリもあるよ! ぶひィィィイイ!
普段の桃山の僕へのストーキングははっきり言って犯罪レベルである。盗撮、盗聴、ストーキング、ありとあらゆるストーカー行為が日常的に行われているのだ。
もはやストーキングされることに慣れ切っているプロのストーキング被害者たる僕は、何事もなく日常生活を送っているが、一般ピーポーならメンタルやられるレベルである。
そこでこれ!
『目には目を! 歯には歯を! ストーキングにはストーキングを!』である。
たまには僕がやり返したってバチは当たるまい!
頭のおかしい桃山の日頃の行いを鑑みれば、いくら今回僕がやらかしても過剰な復讐になることはあり得ないだろう。
でもまぁ僕は優しいからね。本当ならば全裸写真100枚くらい撮ってはじめて贖罪になるのだが、今回は桃山の今履いてるおパンティと寝顔写真くらいで許してあげよう。
ちなみに桃山宅には普通にインターホンを押して、桃山ママに挨拶して通してもらいました。セキュリティ激甘っ!
では、早速行ってみよう。
僕は桃山が眠る部屋に音が鳴らないよう、ゆっくりとドアを開き侵入する。
入った瞬間、採れたての果実にバニラエッセンスを一滴混ぜたような甘い女の子の香りにふんわりと迎え入れられた。
スーっ、スーっと規則正しい桃山の寝息が聞こえる。
壁にはそこらかしこに僕の写真が貼り付けてあった。病気である。
だが、一番頭がおかしいのは、勉強机の横に立てかけられた大きなモニター。
商店街のお店が店先に置いておくような大きさだ。
このモニターには、僕が微笑んでから駆け寄ってくる映像が延々とリピート再生されていた。
怖い怖い怖い怖い! てか、なんで常時再生?! 寝てる間くらい止めろや!
あと棚の上にある(おそらく)僕の手を模したフィギュアの指先から電マが突き出ている大人のオモチャ! 怖い! 狂気に満ちている!
だが、まぁ桃山の変態ストーカー気質は今に始まったことではないので想定内だ。
「さて、では早速」
桃山の下着がありそうな引き出しをゆっくりと引っ張る。
そこには『2022.6.9 慎ちゃんがゴミ箱に投げ入れようとして外したスティック飴のスティック』と書かれたメモとともにパッキングされた棒が置かれていた。
僕はそっと引き出しを閉めた。
これは見なかったことにしよう。そうしよう。
というか、洗濯されたパンティなど、無用!
パンティは履かれた経歴があってこそ、価値が生まれる!
地味な下着漁りはやめて、男なら派手に脱がし獲りである!
桃山のベッドにてくてくと歩み寄る。
桃山は穏やかな表情ですやすやと眠っていた。
クルクルと緩くウェーブした桃色の髪の毛からは、シャンプーの匂いなのか、とても良い香り。プルプルの唇は、僕が開け放したドアから差し込む光をほのかに照り返し、妖艶に光る。男を惑わす魔法と言っても過言ではない。
お馴染みの赤縁メガネは枕元に置かれてあり、裸眼の桃山は新鮮でなんだかドキドキする。
あぁー……。やばい。マジで可愛い。
きれいな顔してるだろ? ウソみたいだろ? ストーカーなんだぜ、それで。
――っと。見惚れてタッチごっこしている場合ではない!
とりあえず第一ミッションを片付けるか。
僕はスマホを取り出し、桃山の寝顔にレンズを向ける。
パシャっ!
「ぅぅうん……慎ちゃん……むにゃむにゃ……」
「……………………」
「……………………」
危ねェ〜! 寝言か。びっくりした。
まぁ、でも成功だ!
よーし! 次のミッションだ!
僕はゆっくりと桃山を包むタオルケットを捲った。
少し内股の白く艶やかで程よく肉感のある太ももに目がいく。
桃山はモコモコ生地のショーパンを履いているが、ショーパンの隙間から薄ピンクのパンティが顔を覗かせていた。
僕のジョニ吉が『どれどれ』と顔をもたげる。
確かに素晴らしい。美しい太ももラインと可愛らしいパンティのコントラストが素晴らしい!
だが、問題は『どうやってパンティを脱がせるか』である。
パンティを脱がすにはまずショーパンを脱がさなくてはならない。高度なテクニックが必要になるミッションだ。
僕はそーっと、そーっとショーパンをずり下ろす。
そして、見事、桃山を起こさずにショーパンの除去に成功した。気分は爆発物処理班である。
よーし……! まずは第一段階クリアだ。
次にパンティの取得に取り掛かろうとして、問題が発生した。
桃山の薄ピンクのやたら透け透けのパンティを少しだけずり下げた時、突如、桃山の少しフサフサしたものが生えた部位が僕の右手を挟み込んだのだ。
ちょォオオオォオオオ!? ダイレクトはまずい! ダイレクトはまずいってェェエ!
ジョニ吉が全力で天空に照準を合わせているから! 天空どころか、興奮し過ぎてやや後方、というか僕の顔面に照準を合わせているからァァ! セルフ顔射とか嫌過ぎるゥゥウウウ!
「ぅ〜ん……むにゃむにゃ……慎ちゃんそこはァァアアっ――あっ❤︎ むにゃむにゃ。あぁああああっ……イイ…… ❤︎ むにゃむにゃ」
「おいこら桃山お前完全に起きてるだろ?! 何? とりあえず『むにゃむにゃ』言っておけばバレないとでも思ってるの?! 『イイ…… ❤︎ むにゃむにゃ』じゃねェェエエエ!」
「ちょっと何言ってるのか分かんないむにゃね」
「語尾みたく使ってんじゃねーよ!」
この後、めちゃくちゃ自慰された。
僕の手は一向に解放されず、おかずに使われまくった。僕の手のフィギュアをお一人様の時のお供にしているだけあって、手慣れたものである。
興奮した桃山の果汁で僕の手がふやけた頃にやっと解放されるのであった。
♦︎
「で、何しに来たの? 慎ちゃん。夜這いに来たわけでもないんでしょ?」
何故か桃山はため息をつきながら、そう言った。
「あ、そうだった。本来の目的を忘れてた」
僕は桃山が履き直したショーパンを再び脱がそうとしたところで、桃山が呟く。
「別にパンツ脱がせてもいいけど、その時は…………やるよ? 最後まで」
「……………………すみませんでした」
桃山の目が本気である。
怖すぎる。
怖すぎるから、本題に入るとしよう。
ここまでは本題のついでのイタズラである。小説で言えば3000文字弱使った脱線だ。ひどい作者である。
本題はここから。
「桃山! 明日僕とデートしてくんない?」
桃山は鳩が豆鉄砲を食ったような顔で黙っている。
そして、ハッと我に返る。
「あ、デュエット?」
「違う。デート」
「ダイエット?」
「違う。デート」
「ラブホデート?」
「違う。普通のデート」
何さりげなく自分の願望混ぜてんだコイツ。
「慎ちゃんと………………デートっ……?」
桃山のアーモンド型の大きな瞳から涙が一筋こぼれた。
「は?! ちょ! バカ! 何泣いてんだお前!」
「だっでぇぇ! うれじぐっで……! ひっく!」
桃山はポロポロと涙をこぼしながら泣いて喜んでいた。
デートするだけで泣くとか、まじで意味がわからん。
そんなこんなで僕は明日のデートに備えて帰宅した。
帰りがけに桃山がしつこいくらい、『慎ちゃんっ、一緒に寝よっ❤︎」と誘ってきたが、僕の手のフィギュアの指を桃山の鼻に差し込んで、その隙に逃げてきた。
何はともあれ、こうして今夜のメインミッションは無事完了したのだった。
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