第359話 漫画家 タカシ・タナカ

         漫画家 タカシ・タナカ

 遂にタカシの庭園が地上にしばしの別れを告げる。

 実に、3㎞四方を超える規模の空中庭園が舞い上がった。

 複数存在した地下迷宮への入り口は、座標固定で地上に置いて来て居る。

 どう言う事に成るかと言うと、座標指定で空間固定した入り口に侵入者が有ると、そのまま庭園と一緒に飛び上がった地下迷宮の、侵入口に対応した位置に自動的に空間転移が行われる。

 座標が移送するだけなので本人は全く気が付かない内に別の場所へと飛ばされて居る訳である。

 まさか地下迷宮へと侵入した筈なのに空中に浮いた其れの内部へと侵入して居るとは誰も気づかないであろう。

 むしろ空中に大きな島のような物が浮いて居る事自体をその侵入者は知らない訳であるが。

 地下迷宮よりメルサ内部へ侵入できる箇所は、今回私が壁に偽装して塞いでおいた。

 そうしておかないと樹に住むエルフ達に危険が及ぶ可能性が否定できないからね。

 で、地下に行く分にはダンジョンももっと複雑化して、これまでの地下駐車場風なのは辞めて迷宮化。

 ンで、行き止まりや大小さまざまな部屋を作ったりして、魔素を吸収して疑似魔物を生み出すユニットなんていう私の研究成果で偶然出来た物を設置して見たりする。

 で、宝箱が設置された部屋もいくつか用意。

 中身はランダムでその時々で景品A~Fてランクで、Aが3%、Bが8%、Cで15%、Dで20%、Eで24%、Fが30%って確立で出現する設定。

 Fは小銀貨一枚とか、ローポーション一個。

 Eでノーマルのナイフとか木の盾とかな。

 端折るけどAになると魔剣クラスの剣やマナを流すとATフィールドみたいなのが展開する盾とかそんなのw

 中には魔道具のIHクッキングヒーターとかそんなモンが入ってる事も有ると言う愉快なダンジョンにして見た。

 某有名RPGのミミックほど強くは無いけどミミックなんて言う人工魔物も用意しておく。

 要するに完全にアミューズメント色の強いダンジョンが完成。

 このダンジョンの存在は現役の探索者協会所属探索者や近所の町や村に宣伝させよう。

 有名になればあっちの大陸とかからも冒険者やらトレジャーハンターやら集まって来るだろう。

 で、ダンジョン地下1Fから、一か所だけ庭園の端っこに出られる出口を用意。

 その近くに亜人の経営する宿を用意して見たり。

 しかも庭園の端っこの方だから、すっげぇ空中に浮いてる景色が丸見えになると言うサプライズ付きだ。

 こんなプランをタカシに明かすと、ノリノリでやろうと言い出したのでその通りに実行する事にした。

 まだ他にもいくつか考えてたプランがあったんだけど、ここ迄詰めた時にふっと気配を察知。

「来たわね、シャーリー。」

「やっと見つけましたよ、リエナ・ラーカム先生。

 毎回毎回締め切りの日に色んな所に行かないで貰えますか?」

「いやぁ、私も色々忙しいのよ、勘弁して、シャーリー。」

「それで? 原稿は今先生が脇に抱えてらっしゃるその封筒として、そちらの男性ですか?絵がお上手な方と言うのは。」

「そうよ、彼が漫画家志望。」

「チョ、エリーさん勝手に話進めないで下さい。」

 さらっとタカシの描いたエロ漫画の未だエロくなって居ない部分の原稿を一枚だけシャーリーに手渡す。

「あ、エリーさんそれ!どっから!」

「拝見します・・・・・・ふむ、良いんじゃ無いですか?絵の女の子も可愛らしいですし、背景やなんかもしっかり描けている気がします。

 後はシナリオの面白さが重要ですが、そこはリエナ・ラーカム先生がサポートしてくれるのでしょう?

 採用しましょう。

 当面、此方の、コミックですか?の方の専門誌は出せませんから、同じ雑誌内での連載と成りますので、毎月リエナ先生の原稿を受け取りに来る時期に一緒に原稿を頂きにまいりますので、きっちり仕上げて置いて下さい、ボツ原稿はその場で描き直して頂きますので覚悟をして置いて下さい。」

「あの、そこに僕の意思は要らないんですか?」

「何を仰って居ますか?このスットコドッコイ作家さんは。

 折角才能が有ると認められているのに何故そこに貴方の意思を反映して描かないとか言うすっ呆けた選択肢が存在するとでもお思いですか?

 勿体無い事をしないで下さい、才能が有るとこの私が認めたのですから、描きましょう。」

 相変わらずムッチャクチャな自論で圧し負かしやがった、とんでも無いよね、この子・・・

「・・・・・・はい・・・・・・」

 こうして、半ば、もとい無茶苦茶強引に、再来月号からタカシの漫画が紙面を飾る事と成るのだった。

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