第356話 新製品?

         新製品?

 取り合えず、宴会になってしまったので、しゃぁねぇからお付き合い。

 銘酒ゆぐどらしるをピッチャーに入れて注いで周りつつ、私もその美酒を堪能。

 以前だと子供と思われて中々飲ませて貰えなかったからさ、ハイエルフに成った事で見た目通りの年齢では無いと言う認識も出来ているし、進化のおかげで少し体型も大人になったせいか、お咎めは最近無い。

 お陰で楽しいお酒を飲む期会もこんな風に最近では少しだけだが出来て来た。

 で、その序でに電脳化ナノマシンを使って全員電脳化絶賛実行中。

 誰が絶賛してるかって? 私よ私w

 で、彼らに木工の極みとして、樹脂プラスチックABSとか、樹脂を使った様々な技術と、油田が近くに存在してたのでポリエステル、エチレン、プロピレンなんかの石油製品系のゴム、ビニール、プラスチック系技術、アモルファス伝導体とかの知識も電脳にインストールさせて、これまで以上に樹を無駄無く使い切る方法の全てと、折角完成するプラスチックを有意義に使う為の電子工学や環境科学、その他関連しそうなジャンルの学問の知識を提供して行く。

 ちなみに石油が有るからと言っても、安易に燃やして燃料に使って発電したりする気はあまり無いのと、この世界特有って事で、敢えて発電なんかには使わない。

 純粋な発電では無くて、魔素を主とした技術に特化して居る事が重要だろう。

 電化製品も魔素を使って稼働する物として作って行ければ良いんじゃないかな?

 例えば、電気コンセントに繋いで使う代わりに、魔素をふんだんに吸収させた魔石を電池のような使い方をする、と言った具合かな。

 なんか色々又しても私の発明魂が沸々と湧き上がって来るわね。

 手始めに、この世界に絶対必要だと思う調理用家電とかを再現させるのが良さそうだよね。

 IHクッキングヒーターを魔石で稼働出来るように作ってやれば、そんなにデカく無いし、携帯性が期待出来る、つまりは冒険者の食事事象がガラッと一変するだろ?

 全員が収納とかのスキル持ってる訳じゃ無いからな。

 ってか普通はトレージみてぇなのそうそうあるわきゃねぇか。

 みんな背嚢とかに、着替えのインナーや予備の武器、戦闘補助の薬や投擲ナイフ等のおかわり、そして携帯食の干し肉や傷みにくい乾パンなどで概ねいっぱいにするのだ。

 でもほんの少しだけ、カバンを大きくすればIHクッキングヒーターの薄い板は入らなくは無い。

 その背嚢の外に鍋をかぶせる形で括りつけてしまえば背後を護る盾ともなり得るし、何気に荷物多少増えたって程度で背後の守りと美味しい食事が期待出来ちゃったりする訳。

 まぁ、ポーターに荷物持たせている場合でも背後からの攻撃に晒されるポーターの守りとして大鍋でも被せてあればある程度は防げるはずだ。

 そしてある程度の野菜等を採取して使えば美味しい鍋料理が食べられるようになる筈。

 よっしゃ、木工をメインにして来たここのドワーフ達ならばかなり指先は器用なのだろうから精密な作業が多くなる魔道具作りに向いて居そうだし、ここの奴らに作らせよーっと。

 基盤とか、白物家電とかの基礎のノウハウをインストールしてやれば他の家電もおのずと作ってくれるようになるだろう。

 後、端切れの木で作っていた子供用の玩具に関しても、プラスチック技術とかがあればもっと楽しいおもちゃが作れるはずだから、玩具に関する私の知り得るだけ全ての知識をインストールだ。

 って具合に飲みながら勢いで出鱈目やってると、ダイテツが声を掛けて来た。

「よう、ハイエルフの、宴は楽しめとるか?」

「ダイテツ殿、久々に騒げて楽しんでるよ。

 私の持って来た酒はどう?気に入ってくれた?」

「ああ、あんなウメェ酒ははじめてだぜ、最高の気分だ、がははははは。」

「で、さ、提案が有るんだけど、一つ聞いて貰っても良い?」

「ああ、あんたなら信用出来る、良いぜ、聞いてやる。」

「今、あなた達に、私の持つ知識の数々を脳内に送り込んでる。

 それは貴方も薄々気づいてるから私の所に来たのでしょう?」

「ああ、突如わしの頭が良くなった感覚に陥ったと思えば、知らんかった魔道具の技術がどこかから流れ込んで来たからのう。」

「それを使って、私の望む魔道具をこの世界に満たして欲しいのよ。

 つまり量産して販売してくれと言う事。」

「そんな事で良いのか? それに、それはお主に何の得も無いでは無いか、ワシらが儲かって生活が改善する可能性は有るけどな?」

「良いのよ、それで、私が望むのは、この世界の文明レベルを上げる事。

 快適に生活出来るようになればそれで良いの。

 あ、私は既にそんな生活水準よ、体験してみる?

 今直ぐに体験して見たければ私の庭園にご招待するけど?」

「今体験できるのか?

 そりゃ無茶ってもんだろ、こんな雪深い地からどうやって・・・」

「こうするのよ。」

 そう言って転移を実行する。

 次の瞬間、空中庭園の私の塔の前に。

「おわっ!? 何が起こった?」

「転移したのよ、驚いた?」

「一気に酔いが覚めちまったぜ、帰ったら吞み直しだな、がはははは。」

「まぁそれは好きにしたら良いよ、今は体験したいんでしょう? 入って入って。」

 そう言って塔へと誘う。

 塔に入るとそこは、既に別世界のようだからね、驚いてるね。

「はぁ~~・・・何じゃ此処は。」

 そりゃそうだろ、寒くも暑くも無く、徹底した空調管理の上に清潔感溢れるピッカピカの床、壁、天井。

 そして建物内だと言うのに昼間のような明るさ。

 あの里とは雲泥の差だからな。

 この技術の一端だけでも里に再現出来れば生活水準だって様変わりする事だろう。

 ドワーフの里の郷土料理もまぁ美味しかったけれど、ここでオートクッカーの料理だけでも食べて見たら尚更気に入るだろうね、って事で出してやる事にする。

 つまみ用に単品の唐揚げで良いかな?

 食堂へと移動して、端末で唐揚げと、仕込んで置いたイカの塩辛を提供。

「何じゃこのウメェ料理は、こっちのツマミみてぇなのは、イカか?? アテに最高じゃねぇか!」

 ダイテツが良い舌を持ってる事は酒で知ってるけど、ここ迄喜んでくれるとは。

 まぁ、お気に召したようなので、お次は客用の寝室へご招待。

 ベッドやソファーを堪能したダイテツは、これをワシらが作って売り出して良いって事なのか?と、一気にハイテンションになって居た。

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 その年末の出来事・・・

 毎年のように木の端切れで出来た玩具を待ち望む子供達の元に届いた玩具は、まるでそれ迄とは違う物だった。

 携帯型ゲーム端末だったのである。

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