第351話 お届け物

       お届け物

 -MkⅢ-

 私は、今地球で言う所のドイツみたいな位置取りの国に滞在中だ。

 実際そんな感じの国で、ソーセージとか、ハンバーグとかのミンチにしたお肉や、腸詰とかを良く食べる国だよ。

 そして、私はその美味しいウインナーソーセージや、ハンブルグステーキ、所謂ハンバーグを堪能する為に滞在中なんだ。

 ちなみに今滞在している街の名前は、スケベニンゲン。

 素敵な良い名前だろ?

 って相変わらず私は誰に向かって説明して居るのだろう。

「あ、エリーちゃんいらっしゃい、また来てくれたのね~、今日は何にする?」

 ここのお店の女将さんだ。

 すっかり顔なじみになってしまった。

 だって、ここの腸詰美味しいんだもの。

 特に、血を混ぜたお肉を腸に詰める奴、ブルートヴルストって奴、何だかここのはとっても美味しい。

 私はこれまで血のソーセージは好きじゃ無かったのだけれど、この女将さんに騙されたと思って食べて見ろってお勧めされて食べて見て、ハマってしまった。

 このレシピーを何としても解明したくてもう既に二週間ほど通い詰めてるのだ。

 ちなみに、今パメラとタイカンとボクスは、冒険者ギルドで討伐依頼を受けて、二日程留守にしている。

 私? 私はちゃんとナノマシンでパメラの安全はしっかりチェックしながらこうして新たなお料理を確立する為に研鑽を積んでるのだ。

 あたしが一緒に行くとどうしてもあの子達甘えが出ちゃうでしょう?

 どうやって遠く離れたパメラを護るんだとか思うだろうけど、タリスマン魔法の技術の応用でいつでも遠隔で防護結界を張ったり出来るようにしてあるから大丈夫なのさ。

 さて、パメラ達の近況は判っただろうから本題に戻るよ。

「ねえ、女将さん、このブルートヴルスト美味し過ぎる、レシピ教えて~。

 絶対ただの腸詰じゃ無いわよね、どんなハーブ使って匂い消ししてるの?」

「あっはははは、それはねぇ、秘密なんだよ、私の家の秘伝なんだ。」

 こんな調子ではぐらかされちゃう。

 仕方無いからここでこうやって毎日少しづつ食べて味を覚えて帰って色んなレシピで再現しようとしてるんだ。

 確かに前世では血のソーセージって私あんまり好きじゃ無かったせいで自作した事無かったからさ、これだけは今でも私の料理リストに無かったのよ、でも、ここで頂いたこのブルートヴルストのあまりの美味しさに再現を試みてる訳。

 あともう一つ何かが足りないんだよね。

 臭み消しのハーブなのか、それともスモークするチップが何か特別なのか、そこが判んないんだ。

「ご馳走様、又来るわね~。」

 そのまま庭園に帰って、今日も再現する為の試作をする。

 そうしたら、この間邑雅を見せて欲しいから貸してくれっつってたMkⅣから電脳メールが届いた。

『邑雅有難うね~、返す序でと言ってはなんなんだけど、完成した聖剣を一緒に送っとくから、アキヒロにでも使わせてやってくれると嬉しい。

 オリハルコンの剣なのにマナが流せる優れモノよ。』

 何だって?

 聖剣が打てるってどう言う事?確かドワーフと出会ったっつってたわよね?

 どんなの打ったの?

 ストレージに届いてるみたいだしちょっと見せて貰おう。

 へぇ、レーバテインか、とんでもなく良い名前付けたよね、面白そうじゃない、でもMkⅣに打ててこの銘まで受け継いだ鍛冶師の私に打てないのは少し癪だわ。

 じゃあ私もこの大陸に居るドワーフを見つけよう。

 まぁ、その前にこのレーバテインをアキヒロに届ける役位はしてあげないとね。

 私も聖剣打てるようになったら、私なりの聖剣、むしろ魔剣を打ってタイカンに使わせてやりたいと思う訳なのよ、あの子は二刀流の魔剣士になれる。

 だからあんなバッタもん魔剣のフォトンソードなんかじゃ無くちゃんとした魔剣を使わせてやりたいのさ。

 夢が広がるじゃ無いの、MkⅣ、良い物見せて貰ったわよ。

 私も負けないからね~。

 さて、パメラ達が帰って来たみたいだし、庭園に回収したら飛空艇でジ・アースの元に向かおう。

 こう言う物は早めに届けてやるに限る。

「師匠、ただいま。」タイカンだ。

「師匠~、お腹空いた~。」パメラが飛びついて来た。

「師匠、大分新しい戦い方に慣れて来た気がします。」ボクスだ。

「三人ともお帰り、ちょっとだけ、皆の所にこれから行くんだけど、一緒に行くでしょう?

「皆って、パパたちの所?」

「勿論、パメラも久々に会いたいわよね?

 強くなった所見せてあげなさい。」

「やったぁ、師匠大好き!」

 うん、この満面の笑顔で大好きって言われたらもう、辛抱たまらん!

「パメラ~、お膝においで~!」

 つい、私の膝に座らせて頭をなでなでしてしまう、私の悪い癖だね。

 飛空艇に移動して、飛空艇のキッチンでご飯作りながら移動。

 この際なのでジ・アースを含めて全員分作っている。

 あらかじめメールで行く事を伝えて飯は作ってやるから食うなとも言って在る。

 で、彼らのキャンプ地に到着と同時に今日の晩御飯は完成した。

 纏めて全員分作るには持って来いなメニューにしたので、お手軽な物にしちゃったけど良いよね、今日はナポリタン。

 多分アキヒロ辺りは泣いて喜ぶんじゃねぇかな、懐かしいだろうし。

「やあ、久しぶり、うちの子らは元気かい?」

 カイエンが真っ先に入って来た、やっぱこいつは父親としてなんだかんだ子供が心配では有るんだろう。

 すぐ後ろからマカンヌも来ている。

 待って居る様に言ってたのに、待ちきれなかったパメラが飛び込んで行く。

 まぁそうよね、まだまだ子供、パパママ恋しいよな。

 私はこの両親の次で良いのだ。

 実際その位に信頼してくれて居ると思うので羨ましくは思いませんよ?

 思わないんだからねっ!

 食堂へ入って来たアキヒロはやっぱり感激している。

「こ、この香りはっ!

 エリーさん!まさかナポリタンっすか!?」

 そりゃ懐かしかろうね、オートクッカーのメニューにあるのはトマトソースのパスタだからな、ケチャップ味のナポリタンは、ケチャップ自作した私しか作れないからな。

「どうよ、懐かしいかい?」

「懐かしいなんてもんじゃ無いっス! 俺の好物ですから!」

 好物の多い奴だ、唐揚げとかも好物っつってた気がするしな。

「そんなアキヒロに、勇者に相応しい物を、預かって来たんだ、お届け物だ、受け取れ。」

 そう言ってイキナリ聖剣レーバテインを手渡す。

「これは? なんか凄そうですけど。」

「聖剣だそうだぞ? 聖剣レーバテイン、神同士の戦争を治める剣に名付けられた名前だと思うんだけどあんまり気にしなくて良いぞ、カッコイイから付けちゃったっつってたからw」

「こんなスゲー物作ってくれたのって誰っすか?」

「私と同じ、エリーの並列存在、MkⅣだ。

 何でもドワーフと知り合って師弟関係になって教わって作ったらしいぞ。

 世界に一本しか無い剣だから無くすなよ?」

「これ、抜いて見ても良いっすか?」

「後にしな、先ずは晩御飯食ってからな。」

「あ!そうだった! ナポリタン!!」

 こいつ、楽しそうで良いな、人生。

 転移して来た事すらも楽しんじゃってるじゃん。

 ----------

 食事の後、飛空艇から降りて、外で剣を振うアキヒロに、私が鑑定して得られたこの剣の真の力の使い方を教えて見る事にした。

 巻き藁を斬ってるアキヒロに声を掛けた。

「どうだ、試し斬りした感触は。」

「あ、すげえシックリ来ます、俺の為に誂えてくれたみたいにシックリしてますよ。」

「ま、あそりゃそうだ、勇者なのに鈍らの鉄拳使ってるお前にって打ったらしいよ。

 それでな、真の性能を見てみたく無いか?」

「え、マジっすか、しかも真の性能って?」

「この剣は只のオリハルコンソードじゃねーんだ。

 マナを乗せられるオリハルコンだそうだ。」

「オリハルコンってマナ乗りませんよね?」

「これは乗るらしいぞ?

 試しに剣に向けてマナを放出してみ?勇者覇気で良いんじゃねぇかな?」

「判りました、こうっすかね? はぁっ!」

 ガツンと来る程に剣の存在感が跳ね上がる、そして剣は光を纏う。

「わ、わ、わ、わ! な、なんっすか、これ!」

 勇者覇気を剣に纏わせた張本人が驚くなよ・・・

「試しに、そのまま中段に構えて、纏わせた覇気を正面の巻藁に向かって放出して見ろ、きっと面白い。」

「は、はい!」

 放出した覇気は、そのまま巻藁を、巻藁の台ごと真っ二つにしたのだった。

 スゴ過ぎるな、これ。

 この様子をずっと見ていたカレイラが、何だか物欲しそうに見つめて居たので呼んでみた。

「カレイラ、ちょっとおいで?」

「はい、師匠。」

「アキヒロ、ちょっとだけカレイラに貸してあげて見てくれ。」

「あ、はい、良いっすよ?」

 頭の上にクエッションマーク並べるアキヒロに対して、対照的にワクワクが止まらない顔のカレイラ。

「ん~・・・流石に重い、けど。 身体強化。」

 ん、身体強化も上手く扱えるようになって来たみたいね、カレイラがますます強く成って来てるね。

「じゃあまず、火でも使ってみる?」

「そうですね、基本的に威力が一番強いですし。」

 じっと剣先を見つめるカレイラ。

「フレイムエンチャント。」

 一瞬、ゴウッと大きな音を立てて燃え上がった剣だったが、そのまま炎は一瞬で搔き消え、剣自身が真っ赤に輝いて居る。

「す、すごい、ミスリルソードよりもずっと、マナの流れに無駄が無いです。

 これ本当にオリハルコンなんですか?

 信じられない。」

「カレイラ、お前にも一振り打って貰えるように言っておいてやる、お前用の細身の剣をな。」

「師匠、ありがとう、私もこんな剣欲しいです!

 あ、アキヒロさん、ありがとうございました。」

「凄いっすね、カレイラさんの魔法剣って奴、僕も出来れば良いんだけど。」

「出来るぞ、お前の場合、光魔法だけだけどな?」

「え? そうなんですか?」

「ああ、だってお前、光と闇の魔法は使えるだろ?教えたし。」

「ええ、ごく一部ですけど、使えます。」

「やって? さっきの覇気纏わせた時と同じイメージで、エンチャントライトニングを唱えれば行けると思うけどな。」

「は、はい・・・こうだったかな?・・・ はぁっ! エンチャントライトニング!」

 レーバテインが、次の瞬間、凄まじい輝きを纏った。

「こ、これは使い勝手が難しいな・・・光量を抑える事は出来る?」

「えっと、こ、こうっすかね?」

 余りの眩しさに目を瞑ったままのアキヒロがその手より剣へと放出して居るマナを絞る。

 すると少し輝きが収まる、まぁこの位なら目を瞑って居ないと辛い程では無いかな?

 光魔法は破壊の魔法だ、きっとエンチャントでも最強の物に成るのでは無いだろうか。

 カレイラのは又納品しに来てやるかなっと。

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