第349話 試乗飛行ってか何でマニュアル?
試乗飛行ってか何でマニュアル?
何だか呆れられた気がして不本意なんだけどね、まぁ良いか、って事で。
「じゃあそろそろ飛空艇を見たいんじゃない?
お掃除も終わったようだし、テディーも一緒に行くわよ~。」
「あ、ちょっと待って、エリちゃん。
あと一寸、ここにしつこい汚れがね、これ落したら行けるから。」
「そんなのこのお掃除ナノマシン溶剤使ったらすぐ落ちるでしょうに。」
「エリーさん、お掃除用のナノマシンまで作ってるんですね、ってか一体何種類のナノマシンを作ったんっすか?」
「ん~、数えて無い。」
「開発した本人なんだから数えときましょうよぉ。」
「それは、無理!
ナノマシンの性能を上げる為にはね、一個一個の能力を特化した方が良いのよ、つまり何かに特化したナノマシンを何種類も作るのが一番生活水準の向上に繋がるって訳。」
「な、成程、それは確かに数え切れなくなりそうですね・・・」
「でしょ?いくら私でも全てを記憶しておくなんて無理、しかも進化をするように設定してるからそう言う専用のナノマシンが新たに自然発生したりするからもはや私でも訳が分からんのが現状な訳よ。」
「な、成程・・・良く判りました。」
「なぁ、そこ、くっちゃべっとらんでそのナノマシン溶剤こっちに頂戴てば。」
あ、自分で振っといてタカシの話に乗っかっちゃって忘れてたわ。
「ア、ごめんごめん、ハイこれね。」
「あんなぁ、手伝ってもぉてもえぇとこなんやで?」
「もうごめんて~、はい早速使って見て?」
ナノマシン溶剤を雑巾に吸わせて汚れの酷い箇所に当てると、一瞬で汚れが雑巾に移る。
「・・・なぁ、えりちゃん??
こんなんもっとるならもっとはよ出せや!」
ヤベっ!ますます怒られたっ!
「さ~せ~ん。」
「ちなみにこれ貰っとくで?」
「あ、それならもっといっぱい入ってるのが有るわよ。
はい、これ。」
「ほなこっちももろとくわ。」
使い差しも未使用ボトルも持って行かれてしまった、まぁ良いけどな。
お掃除を手伝う事5分、私の提供したお掃除ナノマシン溶剤のおかげで急加速した掃除が一気に終息した。
「はい、お掃除終り~、ほな行こか~。」
すっかりテディーに仕切られてしまった。
「んじゃ私の庭園のドックへ転移するねー。」
空間転移で三人を転移させる。
ドックへと転移すると、霜月にだっこされて何故か不満そうなマリイが居た。
「ママ~、つまんなかったの、寂しかったの~。」
あ、成程。
私とテディーが思いの外時間掛かったお掃除を済ませている間、暇でつまんなかったのね、それで飛空艇で探しに行こうとして捕まったと、そう言う事みたいね。
マリイ可愛い!
「で、僕の飛空艇って何処に有るんですか?」
「ああ、今出してあげるね~。」
「どんなカッコイイのが出来たんだろう。」
すっげぇ嬉しそうだ、タカシはあの画力で自力で飛空艇デザインを考えてくれてたのでそれを可能な限り再現する形で建造したんだ。
「ラボデッキ、オープン。
出でよ、新造飛空艇クレイジーファルコン。」
タカシのリクエストに応えて、反重力エンジンで浮き上がって6機のジェットエンジンで推進する超音速飛空艇が完成してしまったのだった。
超音速でも飛空艇のサイズは私の大型の物よりもほんの少し小さいだけの大型扱いの代物だ。
何で大型にしたかったかって、タカシは生活圏をこっちに移す気らしく、寝室、リビング、遊戯室の他に、空間固定した温泉施設や3か所に完全に同一の機能を持たせたトリプルブリッジを実現していた、第三艦橋でも第一艦橋と同じ機能が全て使えるようになってるのだ。
そして何より最大の特徴が、艦首のデザインのドラゴンの頭がカッコイイ。
しかもその口が開くギミックが付いて居て、開いた口から空間破砕砲が撃てる。
何と戦う気なのかは、私は知らんw
極力希望にお応えして最強の主砲を搭載して欲しいと言うからやった迄だ。
ちなみに空間破砕砲ってのは、疑似ブラックホールを発射してしまう、魔法の確立を実現したこの世界で初めて完成したトンデモ技術の砲弾だったりする。
いわゆる、ぶち当たるとその周囲を爆発的に飲み込む、爆縮する砲弾と言う事に成るんだよね。
「す、すっげ~! これが俺の飛空艇! かっこいい!
俺のデザイン画がそのまま飛び出してきた感じで・・・
( ・∀・)イイ!!」
すっかりドはまりしたタカシは、速攻でブリッジへと乗り込んで行った。
ので、慌ててその後を追いかけて私もマリイを抱っこしたままでテディーと一緒にブリッジへと。
「うわっははははは、俺の飛空艇だ、これが操縦台だな!
飛ばしてぇ~!
操縦したーい!」
あの、操縦って、行き先と速度と経由ルートだけで自動で飛んで行くんですが、まさかマニュアル操縦する気満々??
「これがスロットルか、そんで、これが高度設定?
こっちが・・・」
ダメだこりゃ、今何を話しかけても確実に聞かねぇな・・・
そんな事を悟った瞬間。
こっちを振り返るタカシ。
「エリーさん! 出船しても良いっすか?」
え~・・・マジっすか、マジでマニュアルで飛ばしかねないんだが・・・
良いけどマニュアルで飛ばして墜落さすなよ?
「今何言っても聞かないよね、好きにしなさい、はぁ。」
つい溜息が混じってしまう。
こう言う風になると中学生男子なんか皆一緒、コイツ中学生の時に転生して来ていきなりハイエルフでほぼ肉体年齢固定されてるから、ホルモンバランス的にも中学生のままな筈だから、精神年齢も中学生のままと言っても過言では無いからね。
そう考えた瞬間、飛空艇あてがうのもどうかと思ってしまった。
だって自動車免許証だって18歳以上じゃ無いと取れなかった筈だし、精神年齢ってこう言う一歩間違えたら殺人の凶器になり得るものって宛がってはイケナイ気がするのよね・・・
まぁ今更だけどな。
好きにしろと言われたタカシは、早速マニュアル操作でこのドックから飛び出そうと画策している。
なので、そのまま飛び出そうとされても困るので、ハッチを開けてカタパルトの使用許可を出した。
つっても重量級の大型飛空艇ではカタパルトを使おうともいきなり戦闘機のような加速は見られる事は無いので、押し出される。程度の感覚ではある。
押し出されると同時にタカシが飛空艇のAIに指示を出す。
「高度そのまま、推進エンジン1~6番、全機起動。
マニュアル操作に切り替え。」
『了解、マニュアル操作に切り替えます、姿勢制御サポートは如何致しますか?マスター。』
「姿勢制御サポートは維持、クレイジーファルコン、発進!」
うん、そこはかとなく中二病臭がする台詞頂きました、ご馳走様。
まぁ、姿勢制御を解除しなかったのは正解だよな、あれが無いと、操縦者でも酔うと思うぞ?
マリイは前方の景色を私の腕の中から眺めつつ楽しそうにキャッキャと笑って居る。
テディーは自分の飛空艇が完成した時を思い出すようにしてタカシに寄り添って楽しさを分かち合って居るようだ。
「最大船速で飛ぶんじゃねぇぞ、まだ慣らし運転してねーんだからな?」
「判ってますよ、エリーさん。」
「ほんとに判ってるか?そうは見えないんだが?」
「ちなみにこの船はスーパークルーズで音速を超えられるように設計しましたよね?」
「ん?スーパークルーズ?」
「アフターバーナー無しで音速を超えられるって事です。」
「アフターバーナーって、どんな過去の遺物を想像したのか判らんけど、私の時代にそんな面倒な物は存在しないぞ?」
「あ、そうなんですね、アフターバーナーなんか要らないのか、そっかそっか。」
なんか知った風に頷いて勝手に納得して居るタカシがちょっとイラっとさせる。
だってさ、その位の知識は私の電脳経由で公開して居る常識レベルの情報なんだから電脳で検索すれば幾らでも引き出せる情報だからだ。
まぁ、確認したかっただけと言われれば其れ迄なので深く突っ込んだりはしないけどな。
最高に楽しそうな笑顔で一頻り操縦を堪能したタカシは、散々機体を振り回して世界一周すると、満足したらしい。
「エリーさん、お腹空きましたね、この船の食堂も他の船と同様なんですか?」
「そうだよ、私のレシピを限界まで再現しようとした料理専用AI、マームが搭載されてるしな。」
じゃあ何食べても美味しそうですよね。
「あ、でも食材が何にも入って無いぞ?」
「え~、そこは少しわけて下さいよ~、この船で色々狩りに行って食材増やしますけど、初回くらいはさぁ。」
なんか我儘な子供な事を言って居るけどまぁ、中学生相手と思っておけば諦めもつく。
「ったく仕方無いわね、ホントにお少しっつしか分けないからね?」
「流石エリーさん、大好きですよ。」
「お子様にそんな事言われても嬉しくねぇわ、テディーにどんな魔物が美味いか教わって狩りにでも行って来なさい、あの子と。」
「そうっスね、エリーさんのおかげで魔法とかも使えるようになってるし、行ってみますよ、今度。」
自分の飛空挺との違いをまじまじと確認してたテディーも慌てて食堂へと着いて来た。
ハコンダーZの代りも務める、周囲の世話用のAIアンドロイドの@Homeシリーズ(タカシ用オリジナル)も2体搭載して置いたのでゴミ屋敷みたいになる事ももう無いだろう。
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