第333話 単話・ただいま。;草原のダンジョン

         短話:ただいま。

 -パメラ-

 オリジナル師匠に付けて貰った修行の居おかげで、私も槍杖を振って戦う近接戦闘をかなり出来るようになって来たんだけど、MkⅢ師匠が私達兄弟をオリジナル師匠に預けてからもう、5日目なの。

 流石にこんなに帰って来ないって、師匠が心配で仕方が無いの。

 オリジナル師匠に聞いても、大丈夫としか言ってくれないの。

 出も並列存在だから繋がってるって言われても、私が繋がって居る訳じゃ無いから、無理やり信じるしかない、でも本人なんだから信じようと思いながら、今日に成ったの。

 お昼ご飯頃から、心配で居ても立っても居られなくなって、美味しい大好きな唐揚げも喉を通らないの。

 オリジナル師匠の家の地下格納庫に眠って居たドラグライダー・ギガンテスって言うのに、二人のおにいと一緒に乗って、MkⅢ師匠の所へ行こうとして、走り出してすぐに、MkⅢ師匠の空中庭園が帰って来るのが見えたの。

 するとドラグライダーのコックピットのモニターにMkⅢ師匠が映し出されて、師匠からの通信が入った。

「パメラ、ただいま~! 御免ねぇ、心配させたわね~。」

「し、師匠~!師匠師匠師匠~!」

 思わず涙が出ちゃったのです。

 --------

 -MkⅢ-

 あ~、しまったわ~、忙しかったのもあるけど、パメラに電脳通信で近況報告してあげるの忘れてたわ~、てっきり本体が伝えてくれてるもんだと思い込んでたわ・・・

 私自身の性格をすっかり計算から除外してたわね。

 家から、私が作ってやり過ぎだって本体に怒られて死蔵予定だったドラグライダー・ギガンテスが飛び出して来るのが見えちゃったから何事かと思ったわ・・・

 通信繋いだら、パメラに泣かれてしまって、猛反省。

 直ぐにドラギガを庭園に回収して、飛びつかれたのを抱きとめ返して、私も貰い泣きしちゃった。

 今度こんな長期作戦になるような事があってもこの子達には定期連絡するの忘れない様にしようと心から誓ったわよ。

「パメラも、ボクスもタイカンも、御免ね~、忙しくて連絡するの忘れてたわ、ホント御免ね~。」

「師匠、お疲れさまでした。 明日からまたご指導お願いします。」とは、真面目なタイカンだ。

「師匠お疲れっす、今日はゆっくり休んで下さい。」

 軽~い感じのボクス、この二人って双子なのにここまで性格が分かれるのはある意味凄いと思う。

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      草原のダンジョン

 -MkⅢ-

 久々に家の自室でのんびりして、アインの料理に舌鼓を打っての翌朝、朝食の鮭と目玉焼きに後ろ髪を引かれながら、パメラ、タイカン、ボクスの三人に急かされながら私の区画の空中庭園に上がり、ゆっくりと移動をさせつつ、庭園の家の庭でオープンカフェさながらのテーブルセットでコーヒーの香りに包まれながら、フレンチトーストをつつく。

 タイカン達もご機嫌でベーコンエッグに舌鼓を打って居る。

 前回、行けた所まではこうしてのんびりと移動する。

 その後は、また4人で歩きで旅をするのだ。

 この子達の為の修行の旅だからね、乗り物で旅してしまっては修行に成らないからね、私も一人乗り物を使う訳には行かないのよ。

 ゆっくりと移動させても、空中を移動する訳で障害物などを避ける事は無い、なので、ゆっくりでも真っすぐ直線で進める分、早く感じるのだ。

 気が付いた時には目的地に到着してしまって居たりするものだ。

 と、言う事で、庭園を楽しみながら軽く腹ごしらえをして居ると、もう前回の最終地点上空に近付いたらしい。

「さぁ、そろそろ支度しましょう、もう到着みたいよ。」

「「「はい、師匠。」」」

 3人共が、自分の食べた食器を自分で片付ける、マカンヌの教育の賜物だろうと思うけれど、やっぱこの子達ってとっても良い子。

 支度を済ませてブリッジへと全員が集合した所で、磁光エレベーターを起動して、地上へ。

「さあ、出発しよう。」

 暫く行くと、山岳の麓の草原に、大きな街がある。

「丁度良いわ、ギルドで素材を売って、ついでにパメラのランクの調整お願いしましょ。

 もうCランクまで上げても良い頃よね。」

「むしろ師匠は何でランクアップしないんですか?

 師匠ならAランクで余裕だと思います。」

 タイカンに良いツッコミを貰った。

「私はさぁ、あんまりランクが上がり過ぎると指名依頼や未解決依頼で何処にも行けなくされちゃいそうでしょう?

 それにそんなので忙し過ぎるのは嫌だしね、私はのんびり行きたいの。」

「成程、納得です。」

「私は師匠が忙しいと構って貰えなくなるからヤダ~。」

 なんてかわいい事言ってくれるのかしら、パメラってばこの人誑し! 恐ろしい子っ! いや可愛いけどっ!

 そんなやり取りをしつつ、街の門に到着する。

「身分証を提示して頂こう。」

 衛兵が少し高圧的に言う。

 まぁこの程度なら、普通のレベルだろうか。

「はい、これが私の冒険者証よ。」

 これ一つであっさり通行が認められる、流石に冒険者ギルドは融通が利いて便利だ。

 3兄弟も冒険者証で通行の許可があっさり下りる。

「ようこそ、メルセデス帝国帝都、ザウバーへ。」

 何処の街に入る時でも、初めての時にどんな応対をされるのかで大体その国や街の情勢って読めるんだけど、ここは割としっかりお堅い政治をしてまともなお国柄な気はする。

「ありがとう、貴方達とっても紳士的な衛兵さんね、けれで美味しいものでも食べて。」

 そう言ってチップとして、ルージアを潰した時に手に入れた金貨を二枚、そっと手渡した。

 金貨を握らせた手を開き、その衛兵は目を見開いて私に例の言葉を連呼した。

「今ここに詰めてる人達で好きな物食べてらっしゃいな。

 丁寧な応対ありがと。」

 衛兵を味方に付けて置くのも後々の役に立つでしょうからこう言う事には奮発してあげるのが良いのよw

 その後、衛兵から冒険者ギルドの位置を訪ねて見ると、やはりどこでも大型の魔物を運び込める地下施設を作る為か、街壁沿いにあるようだ。

 ちなみに、ルージアやリーディアには冒険者ギルドが無かった。

 国際機関のようなものだし、国益を追求する為に排除されたのだろう。

 あの国は何処までも犯罪国家だったと言う事のようだ。

 さて、ギルドに到着すると、何だか久々に見る顔が居る。

「あ!エリーさん!お待ちしてました!」

「はぁ、あんたはサリ―シリーズの誰ちゃんに成るの?」

 相変わらず同じ顔でうんざりする。

「私は、ミューです。」

「ああ、そう・・・で? いやよ、指名依頼とか・・・」

「う・・・そ、それは言いませんから、せめて・・・」

「はいはい、あんたも外出歩けるようになりたいのね・・・」

「はい!」

 満面の笑顔で即答しやがった、こいつ。

「もう出られるわよ、後は好きにしなさい。」

 もうある程度読めてる事だし先回りしてやっといたしな。

「ありがとう御座います! 後でゆっくり堪能します、今日の御用をお聞きします。」

 おお、何か糞真面目なタイプだったらしい。

「じゃあ、この子、パメラの冒険者登録のランク見直しと、素材の買取お願いしたいんだけど。」

「お任せ下さい、って言うかエリーさんの事ですからまたここで出せないほど大量なんでしょう?下へご案内します。」

 おお、気も利くタイプだったらしい、こいつが一番真面なホムンクルスかも知れん。

 案内された大型解体場には、買取査定官が居た、流石でかい街のギルドは違いますなぁ。

 三兄弟の倒した魔物の素材を先ずは一通り出した。

 いきなり私の倒したレッドドラゴン出したら卒倒されそうだしな。

 思いの外いい素材が多かったようで予想よりも良い値で買い取って貰えて、三兄弟も満足そうだ。

 他には無いのかと、ノって来た査定官に言われたので、それじゃあってんでレッドドラゴンの鱗1624枚を出すと、5分ほど固まってしまい、場が静まり返った。

 まぁそうなるわよねw

 担当官が動き出してすぐ、ギルマスに連絡がいってしまい、ギルマスが音速を超えてるんじゃ無いかって勢いで飛び込んで来た。

「何処ですかっ!? ドラゴンの鱗はぁっ!」

 ギルマスはエルフさんだった。

「やかましい、落ち着け駄エルフ。」

 つい、失礼な発言をw

「あ、すみません、ドラゴンと聞いてつい、ン?・・・・・ は、ハイエルフ様!?」

「ああ、私は冒険者をして居るハイエルフのエリー・ナカムラよ、よろしくね。」

「ユーフォルビアトゥリゴゥナと申します、先程は取り乱しまして失礼致しました、ハイエルフ様。」

 むぅ、どっかで聞いたような名前だな・・・

「あんたってもしかして富士樹海のエルフの親族?」

「あ、父をご存じで? 私はユーフォルビアキュルレンシスの長男です、ですが村長を継ぐ気が無いので冒険者となって居たのですが、功績が認められてこうしてギルドマスターに成りまして。」

 やっぱそれかよ・・・道理で、大雲閣に対して彩雲閣みたいな名前だと思ったよ、エルフってこんな無駄に長い名前多いよな・・・

「ちなみにあんたの親父はハイエルフに進化して、村の護って来た世界樹にも、ドライアドにも名前が付いたからな。」

「なんと! 左様でしたか! 父の跡を継がないとダメかなって最近思ってたのですよ、700歳を超えてソロソロ衰えて来たと言う話だったので、いつ呼び戻されるかと、ハイエルフ様へと昇華したのでしたら、寿命から開放されるのでその心配は無くなりそうですね、良かった。」

 なんか今とんでもない情報ぶっこんで来やがったぞ?ハイエルフは寿命が無い???マジかっ!?

 いや何となくそんな予感はしてたけどな、あのテロメアを見る限りね・・・

「ドラゴンの素材を納品されるのはもしかして、ハイエルフ様ですか?」

「私だけど?」

「そうですか、ドラゴンを倒せる貴女に依頼するしかなさそうですね・・・」

 突如真剣な表情になるトゥリゴゥナに、ただ事ではない何かがあったのだろうと察してしまった。

「はぁ、指名依頼とか面倒だから断る気で居たんだけど、只事では無いんでしょう? 何があったの?」

「ああ、有難うございます。

 実は、最近、これまでもずっと利用して居たダンジョンで、冒険者達が大怪我をして戻ったり、死亡する事例が急増して居りまして、何かあったのかと送り込んだ腕利きのパーティーがとうとう戻らなかったのです。

 さすがにこれはマズイと言う事に成りまして、これ以上腕利きパーティーを犠牲にする訳にも行かず、勇者クラスの強さの形が来てくれないかとホトホト困り果てて居た所でして・・・」

「成程・・・私がこのドラゴンの鱗を持ち込んだので、勇者かと思ったのね。」

「ええ、まさかハイエルフ様とは思いませんでした。

 ですが、ドラゴンを倒したと言う事は、ハイエルフ様は既に冒険者ランクとしては幻のS級、貴女様以外に頼る所は無いのかと・・・」

「はぁ・・・判ったわよ、そのダンジョンは、何処に有るの?」

「この街の裏口、北側に広がる山の裾野に、初めは、草原にぽっかり空いた穴でしたが、真下に降りて居たので梯子を掛けて、祠を立ててギルドの管理下にあります。」

「判ったわ、早速、明日にでもそこに向かいます。

 あ、そうそう、この子達は私の弟子なのだけど、まだランクはCクラス程度なの、私がダンジョンの調査に行っている間、ギルドで色々と面倒見てあげてくれないかしら。」

「判りました、割の良さそうな依頼も優先的に斡旋させて頂きます。」

「判ったわ、そこまでしてくれるなんてよっぽど切羽詰まってるようね、私が行くしかなさそうだわ。

 ああ、それはそうと、ウロコ以外のドラゴン素材も買い取って欲しいんだけど。」

 そう言ってドラゴンの牙を一本だけストレージから取り出した。

「まだ有るわよ?」

 最後にそう言ってウインクしてやった。

「ええ???えぇ~~??」

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