第325話 マリイ・ザイデリュウス・ナカムラ

   マリイ・ザイデリュウス・ナカムラ

 -エリー本体-

 うちの庭の桜が、間も無く満開になる。

 もうかれこれ、転生して来てから一年とひと月位になると言う事だ。

 そして、4月4日生まれの私は、地球の太陽暦で換算して736歳の誕生日だ。

 今日は私の誕生日と言う事で、アイン、ツヴァイ、ネオトライ、フィアーと、追加で増やしたアンドロイドのフューン、ゼクサスの6体のAIアンドロイドと、トーラス、テディー、タカシ、空中庭園の住民エルフ達、更に良くして貰って居る漁師さんを筆頭の小湊住民の方々に、祝いの席を設けて貰ってちょぉっと歯痒い誕生日を迎えていた。

 余りにも大人数なので庭で立食パーティーだけどな。

 それにしても、とんでもない密度のハイエルフとエルフだよね、

 普通ハイエルフ3人にエルフ32人って言う密度は、この狭い庭では在り得ないんだけどな。

 マリイも居るからハイエルフは正確には4人に成っちゃうしな。

 盛大なパーティーだねぇ、これは。

 漁師達が持ち寄った高級海産物や、私のストレージから内の食品庫ストレージにストックしてあった魔物肉、庭で取れた上質なお野菜を、お料理上手のアインが、同じく料理上手になったフューンを助手に付けて腕によりをかけた料理がずらっと並び、なんだか私へのプレゼントと思しき箱が幾つか積んで有ったりする。

 物作りを生業としてる私に何をくれるのかは知らないけど、まぁどんな物が入って居ても有り難く頂くとしましょう。

 ---

 いよいよパーティーも佳境になった所で、私へのプレゼントを手渡し、的なイベントが始まったらしい、各自用意した箱を持って私の前に並ぶ。

 アインからゼクサス迄の6体のアンドロイドからは、各自のデザインしたと思しき衣装が入って居た。

 デザインは流石と言うか、私の前世の記憶にあるようなこの世界にはあまりなさそうな素敵なデザインが多かった。

 エルフ族の連中からは、自作したであろう魔石をあしらった木製の腕輪等のアクセサリー。

 質素では有るけれど凝った装飾が施されていた。

 テディーからは明らかに私の好みに合わせたと思われるお手製の髪飾り。

 シンプルでどんな服にも合いそうなカチューシャ系の髪飾りで、私の好みを良く判ったテディーらしい物だった。

 タカシからは、大ぶりの魔石をあしらった純金の土台のペンダントトップが下がったペンダント。

 なんか豪華な物だったけれど、別段私の気を引こうとか思って無いんだろうな、きっと、こいつの性格上限度を知らないだけだと思う。

 本気で私の気を引こうと思うなら指輪でも贈って来ると思うしな。

 漁師や住民の皆様からは、私が教えて養殖をした阿古屋貝から取った真珠のネックレスだった。

 皆、結構奮発してくれたんだなぁと思う。

 あんまり着飾る事を前世からして居なかった私だったが、ここ迄着飾る為の物がそれぞれから揃えば、これからはオシャレして見ても良いかなって思えたよ。

 今度、MkⅣお気に入りの宇都宮とか、江戸の繁華街とかにオシャレして出かけてみようかな。

 マリイにもお洒落させてね、きっと無茶苦茶可愛いわよ。

 んで、滞りなく私のお誕生パーティーは終わったみたいなんだけど、そのパーティーの後、少し遅れて、MkⅢがジ・アース引き連れて来たのよ、私の誕生日のお祝いにって。

 その直後から、マリイの様子が少し・・・

「マリイ、どうしたの? 疲れちゃったかな?」

「まぁま、マイイね、さっきのひとたちちって、にゃかまにゃの?

 マイイ、わしゅれてゆことがあゆかも?」

 薄っすらと記憶は残って居たのだろう、忘れているだけで。

 遂にこんな日が来たか、予定よりずっと早かったけれど、そろそろザイデリュウスアーガイブをマリイに返す日が来たようだ。

「マリイ、ママね、マリイの前の事を知って居るの、マリイは、思い出したい?」

「うん、まぁまはマイイのみかたでちょ?」

「勿論よ、ママは何があってもマリイだけは守るわよ。」

「じゃーあ、マイイのおねがい、マイイがわしゅれてゆこと、おちえて。」

 やっぱそう来たか・・・

「マリイ、ママの言う事をしっかり聞いてね、マリイにも、ママが持ってるのとおんなじ、電脳があるの、その電脳に、ママが持ってるマリイの昔の記憶を転送してあげる。

 でもその記憶は、すっごぉ~くたくさんたくさんの記憶なの。

 それこそ、90年分位の記憶がそこには詰まってるの。

 だから、そのアーガイブを解凍しても、電脳に仕舞っておいて、少しづつ展開してね。」

 子供には難しい単語が幾つかあった気はするけど、マリイ、ザインは賢い子だから何となく感覚で判ってくれるはずだ。

 私は、マリイを膝の上に座らせ、抱える様にして、アーガイブを渡す事にした。

 マリイの電脳に直接アクセスした私は、接触通信の機能を使って電脳から電脳へと直接アーガイブを受け渡した。

「はい、これで全部だよ、マリイ。」

「まぁま、あいがちょ。」

 電脳の記憶領域だけでも余裕で全て展開出来る筈なので、心配はして居ないが、念の為マリイをこのまま抱きかかえて置く事にした。

 これで、展開した記憶を大脳新皮質の記憶領域に少しづつ移して行ってくれれば、ザインとしての全てを思い出す事だろう。

 少し抱きかかえて居ると、ザインはウトウトし始めた。

 慎重に展開して行く為に心血を注ぐために活動を停止する事にしたのだろう、多分無意識であると思うけれど。

 そのまま、私はマリイを抱えたまま2時間程過ごした。

 そして、すうっとマリイが目を覚ました。

「ママ、おはよう。」

 突然語彙が安定し、活舌が良くなったマリイ。

「マリイ、おはよう。」

「ママ、これからは、マリイでもザインでもどっちで呼んでも良いからね。」

「ん、判ったわよ、でも、マリイはマリイになってるから、私はマリイって呼ぶと思う。

 こうしましょう、マリイのフルネームのお話、マリイ・ザイデリュウス・ナカムラ、これがこれからの貴女のフルネームって言う事でどう?」

「うん、それで良い、ママ、私を助けてくれてありがとう。」

「私こそ、あの時、ザインだったマリイが私を助けてくれたのだから、おあいこ、ね?」

「うん、ママ大好き。」

「ママもマリイの事、大好きよ。」

「あ、ママ、私のステッキは?」

「ここにずっと持ってるわよ、大事にね。」

「ママに貰ったストレージに、しまっておいても良い?」

「良いわよ、はい、どうぞ。」

「わーい、これで皆を召喚して一緒に遊べる。」

 遊び相手として精霊を召喚する気らしい。

 まぁ、ザインの頃とも比較に成らない位のマナを保有して居るから良いんだけどね。

「マリイ、マナを大量に消費するから程々にね。」

「はーい、ママ。」

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