第318話 強襲の炎龍

         強襲の炎龍

「お兄ちゃん達、ありがとう。 かえろ~。」

「もう採集終ったのか? パメラ。」

「うん、これだけ有れば良いでしょ。」

「お、いっぱい採れたな、俺達の成果もほら。」

 タイカンとボクスは、倒したトリプルホーンバッファローとバイコーンホースをそれぞれ引き摺って来ていた。

「お兄ちゃん達、それ、私のストレージに仕舞っちゃうね。」

「おう、ありがとな。」

「俺も欲しいなぁ、ストレージ。」

「何かねぇ、魔力が一定以上無いと維持出来ないって師匠が言ってた。」

「はぁ、俺じゃ無理って事か。

 仕方無いな、師匠の言う通りに武闘家になるしか無いか。

 カッコイイよな、魔導士とか。」

「タイカン兄さんは無属性魔法なら使えるんだし、身体強化してお父さんみたいにすごいスピードで魔獣倒してるのカッコイイと思うよ?

 師匠が作ってくれたその剣も光っててめっちゃくちゃかっこいいし。」

「そ、そうかな・・・」

 パメラに褒められてアッサリ陥落するタイカンだった。

 妹を嫁に欲しかったら俺を倒してからにしろとか言い出すんじゃなかろうかと言う位、この双子の兄弟はパメラが可愛くて仕方が無いらしい。

 あんまりしつこいとその内パメラに「お兄ちゃん達しつこい、ウザい!」とか言われて凹む位に迄なりそうだ・・・

 そんな折、街へと戻ろうとする三人の背後より高速で迫りくる強力な魔獣の反応が・・・

 気付いたパメラ。

「お兄ちゃん達、急いで走って! なんかヤバいの来てる! 私が魔法の壁で食い止めるから急いで!」

 パメラが、無詠唱でも使えるサンダーウォールを、丁寧に詠唱を始めた。

 最大火力で発現させるつもりなのだろう。

 その次の瞬間、パメラの電脳にエリーの声が飛び込む。

「こーら、雷使っちゃダメでしょ~。 あんたも下がってなさいな~。」

 パメラがはっと見上げると、宙を舞うエリーMkⅢの姿があった。

 -------

 -MkⅢ-

 少し遡る。

「ギルマス、お邪魔しますよ。」

「ああ、良く来てくれたね、エリー君だったね。

 待って居たんだ。 以前、僕が憧れて冒険者になった程の人を治療してもう一度戦えるようにしてくれた聖女殿、ようこそお越し下さった。

 私はこのギルドのマスターに就任したばかりの新参マスターで、ネイマールと言います。」

「どうもご丁寧に、私は冒険者で錬金術師で聖女とか言われて何時、魔王の称号も持ってるけど・・・兎に角、ハイエルフに成ったエリー・ナカムラです。」

「なんか今、とんでもない情報をぶっこまれた気がするのですが・・・ ハイエルフに、なった???」

「はい、私元々ヒューマンでしたからね。」

「全く意味が判んないんですけど?」

「私にも解んないし、何でこうなんのかなんか知らないわよ、こっちが聞きたい位だわ。」

「でも、ハイエルフに成られたんですよね、ヒューマンから。」

「成っちゃったものは仕方無いでしょう?

 私もなりたくてなった訳じゃ無いしね。」

「は、はぁ・・・」

 ん、こいつめんどくさい奴に決定。

「・・・っと、気を取り直して、改めて、エリーさんにお願いしたい案件が二つほど在りまして。」

「何よ。」

「一つ目は、調査をお願いしたいと言う簡単な案件なのですが、先日、やけに低空に降りて来た雲から一本の光の道のようなものが放たれ、そこから4人程の人の姿をした現れたと言う目撃情報が有りまして・・・「あ、それ私達だわ。」

「・・・は??・・・」

「だから、それ、私達。

 妙に低空の雲って言うのは、雲に偽装した空中庭園で、そこから磁光エレベーターで降りて来た、私と、タイカン、ボクス、パメラの合計4人って事よ。」

「く・・・空中庭園??????」

「そ、私の所有物だし、問題無いでしょう?」

「そ、そうですか・・・ では、もう一つの案件なのですが。」

「今度は真面そうな気がするわね。」

「実は、西の森を抜けた先に火山があるのですが、そこに最近、どうも炎龍が住み着いたらしく・・・」

「ふぅん、初めての、おっと、初めてでは無いか、炎龍は初めてだわ。」

「ど、ドラゴンと遭遇してるのですか?」

「ええ、元勇者のカイエンの居るパーティーには従魔として地龍が居るし、私もちょっと知り合いに海龍が・・・」

「し、知り合いって、会話とか出来ちゃってるって事ですか?」

「ああ、貴方でも会話位はしようと思ったら出来るわよ?会って見る?」

「そんなあっさり言いますけど、海龍で人と会話が出来る相手となると、まさかとは思いますが・・・」

「リバイアさんです。」

「そんな友達みたいに・・・」

「呼んでみるわね?「ちょ!よぶって!」こんな風に。」

 サラッと何事も無かったかのようにリバイアサンに転送ゲートを繋げた。

 顔だけにょきっと姿を現すリバイアサン。

「呼んだか?エリーよ。」

「いらっしゃい、リバイアちゃん。

 ちょっと情報でも持って無いかと思ってさ。

 私の居参るこの街から近くの西の森を西へと抜けた先の火山に炎龍が住み着いたらしいのよ、ドラゴン同士のネットワークみたいなので情報手に入らない?」

「成程、あ奴の息子の事らしいな、炎龍王ファフニールの所のドラ息子でな、強い者との戦いを好んで飛び出してしまったのだ。

 エリー、お主は真っ先に狙われそうだから精々気を付けよ。」

「判ったわ、ありがと、リバちゃん。」

「お主、日に日にフランクになるの、もう少しわしを敬え。」

「敬ってるわよ、でもあんまり敬語使うとリバちゃん嫌がるじゃ無いの、だからワザとこうしてフランクに話してるのに、もう、リバちゃんのイケず。」

「ああ、そんな事言った気もするな、スマン、ならば今のままでも文句を言わぬ事にしよう。」

「でさ、もしもその炎龍と対峙する事に成った場合なんだけど、リバちゃん呼んだら勝てるわよね?」

「ああ、勝てるぞ、勝てるが、アイツらの炎は強すぎてな、わしの大波で水をぶっ掛けると偉い事に成ると思うが。」

「成程、そこまでその炎龍って高い熱源になるんだ、水蒸気爆発なんかされたらこの大陸木っ端微塵になりそうよね~・・・

 じゃあリバちゃんの力は借りれないか、でもまぁ、何とか出来ない事も無いか。」

「他に用は無いか? 面倒ならこの部屋ごと流してやっても良いぞ。」

 何で毎回そう言う方向に思考が行くんだ、やはりドラゴンって好戦的なのかな。

「ん、話聞いて攻略の糸口は何とか掴めて来たし、ありがとね~。」

 リバイアサンは、渋い顔をしながら帰って行った。

「と、まぁこんな知り合いなんだけど?」

 ギルマスに向き直すと、既に彼は失神して居た・・・あ、しまった、やっちまったか。

 それにしても西の森って、ヤバいわね、パメラだと強者に認定されかねないわね、そうなる前に私が動くしかなさそうね。

 失神して居るギルマスはそのままに、急いで西の森へ向けて飛翔する。

 どうやら既にパメラは目を付けられたようだ。こっちに向って来る圧倒的な気配を感じる、少し急ごう。

 森を飛び越しつつ、パメラの反応を検知して下を見ると、タイカンとボクスに避難を促す姿を確認できた。

 電脳通信で一声かけてやるか。

『パメラ、あんたも非難しなさい、あの反応は炎龍らしいわよ、強者を求めて現れるらしいから、避難しときなさい、私が何とかする。』

『師匠、見学は良い?』

『ちゃんと距離取ってれば良いわよ。』

『はい、師匠。』

 -----

 火山の火口付近から飛びあがったソレは、私へと真っすぐに向って来る。

 リバイアサンに言わせると、若いドラゴン等は、時折自分の力を過信し、強者を求めてた種族に迷惑を掛ける物が時折現れる事があると言う。

 今まさに退治しようとしている相手が、それである。

 炎龍王ファフニールとか言うとんでも無いドラゴンは、「討伐出来る者が居るのであれば我は口を出さないで置いてやる、我々の鱗や牙は、特に良い武器や防具の素材となるのであろうから、人が討伐出来ると言うならあの小僧は自業自得じゃ、好きにするが良かろう。」

 と、リバイアサンに伝言を残して休眠期に入ったらしい。

 おっしゃ!言質はとった、後は倒すのみ!

 取り合えず、まだ距離があるうちにロック・ガンの魔法で良く回転を掛けた40㎝のオリハルコン原石を20発ほど打ち出して先制した。

 器用に避けるな、こいつ・・・でも二発は当たった、結構効いてる筈だ。オリハルコンだしな。

 ストレージから邑雅を出して腰に差すと、私は更に飛翔の速度を上げ、翼を狙う事にした。

 どう見繕っても、やはりドラゴンはあのサイズであるにも拘らず飛ぶには翼が小さすぎる。

 絶対に翼に反重力の時空魔法が使われて居て開く事で魔法が発現、羽搏く事で風を起こして前進すると言うだけだろうと思われるのだ。

 自力で飛べる翼を持って居るとすれば今目の前のドラゴンの4倍以上のサイズの翼、若しくは左右で8枚以上の翼が必要だ。

 いっぺんドラゴン型ホムンクルスで実演して見ようかな、自力で飛ぶドラゴン。

 8枚の翼を器用に交互に動かして飛ぶその姿は想像すればするほど気色悪いだろうなw

 近付いてみて判った、やはりドラゴンは、魔法陣のようなものを纏って飛んでいた。

 ならばそれを壊してやれば落ちるね。

 邑雅に封印して居る機能の封印を解くとしよう。

 マジックドレインを封印してあったのだ。

 この封印を解いた状態の邑雅で魔法陣を攻撃すれば、魔法陣はその形を維持出来なくなるはずだ。

「壱の門、解放、邑雅-改。

 邑雅-改奥義、魔装解崩。」

 横一線に切り付けるだけで、魔法陣は崩壊し、龍は地に落ちた。

 もう一度魔法陣を展開出来ない様に、左の翼の付け根に邑雅を突き立てた、が、邑雅はそのまま、動かなくなる、抜く事も出来なくなった邑雅を手放し、素手で対峙する。

 それにしてもこいつ、近寄るとマジで熱いし!

 ブレスを放って来るこの若きドラゴンを翻弄しながら、考える。

 これは困ったわね、邑雅を手放す羽目に成ったのは失敗だわ、ブレスも魔法陣を発現して撃ち出してるんだから邑雅-改なら斬れたんだけどなぁ・・・

 ラム、テラ、ウィル・オ・シェードを召喚する事にした。

 テラに巨大なゴーレムを召喚させ、ラムにブラックドッグで牽制をさせつつ、ウィル・オ・シェードにダメージソースになって貰いつつ、使って居ない武器を取り出す。

 私は、あまり得意では無い武器だけれど、こう言うのの方が効くかなって思って、大きめの鉄球型の打撃部が印象的で、当たるとレーザーの刃が一瞬打撃部のあちこちから出て来て星のように見えるので、コメットハンマーと名付けた凶悪な武器。大きめの鉄球と言ったけど、正直デカいと思う、直径1mあるしな。

 身体強化で筋力路速度を上げて殴りに行く、だけど相手も流石にこんなクッソ重い物振り回す私程度の怪力娘程度には殴られてくれなかったので、この間暇潰しに作ってた新しい武器を出す事にした。

 巨大なバトルアックスだ。

 見た目は・・・ゲッ〇ートマホーク・・・

 私がこのデカい斧持つとさ、人が斧持ってるのか斧に人が振り回されてんのか判んなくなる程のサイズ感。

 でもこれ、何気に軽いんだ。

 つってもある程度重く無いと斧の特性のパワーで圧し斬るが出来る訳も無くなってしまって実も蓋も無いので普通の人に持てる重さでは無いけれどね。

 これでようやっとドラゴンの翼をぶった切る事に成功。

 しかし、それにブチキレたドラゴンに隙を付かれて、踏み潰されてしまった。

「師匠!!!」

 パメラが、叫んだ次の瞬間、イン・ドラと思われるすさまじい大電力の太い雷が降り注ぐ。

 わたしは、ドラゴンの脚を片手で持ち上げて押し退けると、振り返ってパメラに告げる。

「パメラ、無茶しないでね、大人しく待ってなさい、負ける気しないから!」

 サムズアップしながら笑顔で言ってみたけど、その額から流れる血が痛々しかったのだろう。

 パメラは、治療魔法が使えない事を悔やんで居たけど、パメラのそんな慟哭が、覚醒を促した。

「師匠、治します、ヒール!!」

 何と、驚いた事に、医療知識は電脳に入れてあったけれど、まさか成功させるとは思って無かった。

 この子本気で大魔導士だわ、器デケェw

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