第316話 パメラ、冒険者登録する
パメラ、冒険者登録する
昼食を終えた私は、出発前に、裂傷とは言えあまり酷く成れば死にかねないので、アホの子団に回復魔法を使ってやる事にした。
「エリア・キュアウォーター。」
「エリア・ハイヒール。」
「な、魔法!?」
「煩い、喋るな。」
「魔法ですよね、魔法!」
「ああそうだよ! 発言許してねぇからもう喋るなって!」
「す!すっげぇ! 魔法だよ魔法!」
「おい、喋んな! 殺すぞ。」
「むしろあの拷問が続く位なら殺して下さい。」
「そうかそうか、気に入ってくれたのか、ならば二度と喋れん様にこうだ、そして本気で街まで続けてやる。」
「ぎゃっ!! んぐぅ!」
一人づつ、口に詰め物をしてその上からラバーの粘着テープを張って行く。
これで静かになったね。
さて、出発しよう。
「エリー師匠、マジで容赦ないっすね~・・・」
「私は敵認定した相手には容赦し無い事にしてんのよ、昔その見極めが甘くて痛い目に散々会って来たからね。」
「エリー師匠・・・聞きたくは無いけど一体過去に何が・・・」
「聴きたけりゃいつでも話してあげるわよ?」
「遠慮しときます・・・」
ボクスが興味ありそうだったんだけど今一つノリが悪いな、聞きたいって一言言ってくれたら、丸三日三晩かけて私の前世を語り尽くしてあげる所だったのに(※注※迷惑です)
暫く行くと、なんかヤバそうな反応が私の探知範囲に入って着た・・・
「おーい、お前ら、ちょっとヤバそうだからそこで止まって~。」
「エリー師匠、多分私達じゃアレは無理です。」
流石は探知能力が長けてるパメラだわ、素晴らしい。
「っかしいなぁ~、昨晩中にヤバそうな奴は潰しといたのになぁ~・・・
あれは明らかに災害級よねぇ、あ、そうそう、ソロソロアホの子団に回復魔法掛けとかないと死んじゃうわね。」
アホの子団に回復魔法を掛け直して、少しづつ近付いて来るその反応に向き合う、出たよ出たよ、カイエンやガンダルフを引退に追い込んだと言う一眼の大鬼、サイクロプスだ。
成程、これはドラゴンとまでは行かないにしても相当な威圧感がある、こりゃぁ魔法を持たない人間にはきついよね。
へぇ~、思ったよか見た目もヤバそうに見えるね。
まぁ、私にとっては大した敵では無いけれど。
周囲に気を回して見ると、アホの子団が揃いも揃って顔面蒼白でサイクロプスに釘付けになっている、逃げだそうとまでしているが、ゴーレムの蔦でがんじがらめになって居るので当然脱出不可能、ついに失神し始めた。
さて、ンじゃそろそろやりますか。
結界で弟子達とアホの子団を保護し、邑雅をストレージから取り出す。
「「「師匠頑張れ~!」」」
三人の応援がとっても尊い。
これで頑張らない奴が居る筈ねぇ。
鞘から抜いた邑雅の表面に、魔力の幕を張り、柄の部分に埋め込んだ魔石に魔力を込めつつ、鞘に戻す。
サイクロプスは必死に私を叩き潰そうと巨大な棍棒を振うが、全て私は紙一重で躱している。
魔力が束の魔石に満タンになったその時こそ、私がサイクロプスに対して居合い抜きを敢行する。
「抜刀奥義、竜黒炎・雷切。」
ちょっと格好つけた技名を付けて見たので、弟子達に見せ付けるように呟いた私は、瞬時にサイクロプスの懐へと踏み込んで、抜刀する。
その抜き身の邑雅の表面には、黒炎を纏っている。
そして一気にそんな凶悪な状況の邑雅を振り抜いた私は、返す刀でサイクロプスに兜割を更に斬り付ける。
弟子達に向き直る様に振り返って、邑雅の表面のサイクロプスの血を、黒炎共々振り払うと、すうっとゆっくり鞘にその刃を仕舞う。
すると、鯉口を合わせる音に呼応するように、サイクロプスは奇麗に4分割され、更には粉々に砕け散る。
私は、たった二撃の剣筋に、無数の魔力の刃を織り交ぜていたのだった。
「「すっげぇ!師匠最強!」」
大興奮のタイカンとボクス。
「私も、あれ倒せるようになる?」
ちゃんと見てたんだね、偉いぞパメラ。
「お前達も、私の弟子だからこれ位出来るようになって貰うからね~。」
「「「頑張ります。」」」
三人声を揃えて答えてくれる、本当に素直で良い子達だ。
これはあれよね、マカンヌの教育の居た魔物だわ、うん。
あの変態、性癖以外は至極まともなんだよね、料理も割と上手だしな。
私によって齎された調味料のおかげで最近はますます腕を上げているとか。
ハイ脱線脱線、悪い癖だわ。
そんなこんなしている内に、アホの子団が目を覚まし始めた。
さっき失神してるならもう良いかって口枷外してやったら、目覚めたとたんにウルセエ事・・・
「ひ、ひぃぃっ!! こここ、ころ、ころ、殺され・・・死にたぐにゃ・・・やめ!!」
もう何言ってんのか判んねーレベルだけど私の脳内変換ではこんな感じ。
こりゃ完全に心折れてんな。
仕方無いから蔦を解いてやったけど、逃げだそうともせず、ご自分を引き摺り回して居たゴーレムの背後に隠れると言う本末転倒な事をする始末。
可哀そうに完全に壊れたかもしれんと思って、私がサイクロプスを倒している動画を再生して見せてあげたら、今度は私にしがみ付いて来た、ウゼエな。
「め、女神様・・・」
え?
まさかとは思うけど、狂信者でも生み出したかしら、私、今・・・
なんかウゼェけど、物は使いようだと言う事で、取り敢えず壊れ切って居なかったって事はこの位は出来るだろって事で。
「あなたの街の冒険者ギルド迄案内なさい。」
と言って見たら、突然キリッとして立ち上がった。
「お任せ下さい、女神様、御心のままに!」
あ、これガチなやっちゃ。
まぁいっか、任せてみよう。
「女神様御一行様!此方で御座います!」
ヘタレの癖に、なんかやる気だけは出してくれるしほっとこう。5人で私達の周囲を取り囲むようにして警戒しつつ先導してくれる。
ヘタレだけどな。
さっきこいつ等が追いかけられていたバイコーンタイガーが又出て来たので倒してやろうとしたら、逆にアイツらツッコんでってあっさり倒してた、拠り所を得て怖い物が無くなったとでも言わんばかりの強さの底上げが有る、おいおい、ここ迄影響するのかよ。
タイカン、ボクス、パメラの三人も呆れる始末だった。
そして、ようやく街に辿り着いた時にはすっかり日が落ちていた。
しかし、余所者がとか言ってデカい態度取ってたアホの子団がここまで改心するとは驚きだ。
なんかちゃんとチーム名名乗って自己紹介してたけど、私の中ではこいつらアホの子団で定着してるのでそのまま変わりは無い。
アホの子団の名に恥じない位お約束で、門番とも揉めやがったから頭小突いてやった。
私達をタダで入れろとか訳判んない事言ったらしいんだが、迷惑だっつーの。
「あんたがこいつ等の親玉なのか?」
「あのね、親玉とか言わないでくれる?
このおバカさん達がこの辺に来たばっかりの私達の所にバイコーンタイガー引き連れて逃げて来たから助けてやっただけよ、それよりこいつらマジウザいんだけどどうにか出来ないの?」
「成程、確かにこいつ等はこの街の者だけどお前たち4人は初見だな、ようこそ、トラバントの街へ。」
段ボールボディーの車みてーな名前だな・・・
「一応私達は冒険者なんだけど、身元の証明が出来れば入れるんでしょう?」
と言って、タグになって居る冒険者証のカードを見せる。
「はい、確認取れました、問題を起こさなければ普通に生活出来ます、どうぞ。」
「ん、ありがとう。」
「他の大陸から来てるんですね、珍しいですよ。
しかも、エルフさんですか?」
「おしい、ハイエルフよ。」
「ハイエルフ!? マジですか? それは珍しい訪問者さんですね、それでは並みの宿なんかに泊められません、是非領主様の屋敷へご案内いたします!」
「あ、それは良いわ、私はいつでも家で寝られるから。」
「は?」
「私は魔法が使えるのよ、で、こうやって、転移の扉をいつでも出せるの。」
そう言って転移扉を呼び出してみせる。
マナ効率が悪いから普段は転移魔法で一瞬で飛ぶんだけど、客を招き入れる時はこっちの方が理解されやすいのでそう言う時用に開発した転移魔法の一種だ。
「ま、魔法ですか・・・」
「ええ、私は魔法を広めて旅して居るハイエルフなの。
こっちの二人は私の近接戦闘の弟子でタイカンとボクス、この子が私の魔法の方の弟子で、パメラ。
全員、アスラ大陸の元勇者の子供よ。」
「魔法ですか、興味はありますが、私には使える気がしません。」
「そう?この本のどれか、タイトル読める?」
グリモワールを並べて見せた。
「あ、これ、読めました、土の章?ですか。」
「貴方には土魔法が向いて居るみたいね、この本上げるわよ、ちゃんと読んでね。」
「え、本なんて高価な物、宜しいので?」
「それは貴方の為の魔法の本だもの、適性を持ってる人に与えるのが良いのだから上げるわよ。 精々頑張って覚えなさい、魔法。」
「あ、有難う御座います!」
この門番、確かに土魔法の適性はあるけど、内包するマナ量が少ないから、戦闘魔法に関しては第一階層か、第二階層までが限界だろうけど、戦闘の助け位には成るでしょ、剣術はそこそこの強さ在るし。
で、アッサリ街に入れたのは良いけれど、アホの子団はギルドに連れてけっつっただけなのにどうでも良い物紹介してくれてウザいんですけど。
「女神様、此方の定食屋が安くてうまいんですよ!」
もう良いっつーの。
「そんなの私の手料理と比べたらジャンクフード以下にしか成んないんだからとっとと冒険者ギルドに連れて行けよ。」
「はっ、し、失礼しました!只今お連れ致しますっ!」
「始めから余計な案内なんか要らないっつったわよね?」
「は、はい、すみませんでした。」
予想通り、こいつ等は冒険者ギルドと真逆、と言うか門の近くにあったギルドを通り過ぎて宿や飯屋を案内して居たらしい。
「おい、何で戻るんだよ。」
「すみません、通り過ぎてたんです。」
「ふん、そんなこったろうと思ったわよ、あんた等タダでさえカスなんだから余計な事すんなよ、コラ。」
「す・・・すみません。」
「「「何処までも容赦無いよね、師匠。」」」
「こう言う輩にはこの位の態度で接しないと舐められるわよ?皆覚えときなさい。」
「「「はい、師匠。」」」
ギルドへと到着したらしい。
「ここっス、お待たせしましたっス。」
「ありがとうね、帰って良いわよ。」
「えぇ~、帰って良いって言われても…僕らもギルドに在籍してるんすけど。」
「ん? なんか言った?」
「い、いえ、何でも無いっす。」
--------
早速、冒険者ギルドの受付カウンターらしきところへ向かう、と言うか、相変わらずこのギルドに迄サリ―シリーズが居るので判り易いかも知れない。
「お邪魔するわね~。」
「あ、エリーさんじゃ無いですか、いつ此方へ?」
「最近この大陸辺りで暴れ回ってるのよ、貴女はサリ―シリーズのどなたに当たるのかな?」
「私は、サリー・ゼータです、よろしくお願いします、あ、それと、エリーさんに相談したい事が有るんですけど・・・」
「ああ、あんた達繋がってるものね、外に出れるようにして欲しいんでしょう?」
「はい! お願いしても良いんですか?」
「良いわよ~、って言うか、もう終わってるわよ。」
「へ?????」
「相談が有るって聞いた瞬間から改造してたのよ、ナノマシンで。」
「で、出ても良いですかね。」
「出てらっしゃい。」
カウンターの隅から外へと一歩踏み出すゼータ。
先ず、一歩、そして二歩目・・・
「出られた、出られたぁ~!」
ゼータの満面の笑みに周囲の冒険者達が見とれつつ、外に出られない物だと思って居た彼女が出て来た事に驚きを隠す事が出来ないようだ。
「さぁ、嬉しいだろうけど、ちょっと先に用件を済ませて貰っても良い?」
「あ、はい、何でしょう。」
「今日はね、この子の登録に来たのよ。」
「この子は?」
「カイエンの娘で、パメラ。
魔導士よ。
その内大魔導士と呼ばれるようになる子だから覚えて置いてネ。」
「エリーさんが大賢者様ですから、大魔法使いのお弟子さんが居ても可笑しく無いですよね、パメラちゃん、よろしくお願いします、冒険者ギルドなら。何処に行っても私の共有思念体のホムンクルスが居ますから、何処に行ってもエリーさんのように一目で認識出来ますから。」
「よろしくお願いします。」
「では、この魔道具に手をかざしてね。
適性のジョブが表示される事に成ってるの。」
「はい。」
「・・・・・えーっと、・・・花・・・売り?」
「は?」
「ああ、そうかそう言う事か。」
「どうしました?エリーさん。」
「この魔道具作った乗って250年位前の筈よね。」
「そうですね。」
「魔導士だなんてジョブ出る訳無いじゃない、そうでしょ?」
「ああ、そうでした、無かったですもんね、そんなの。」
「ちょっと貸して、それ、改造して見るわ。」
「はい・・・」
構造を調べて見て、新しい回路を組み込んで行く。
「ははぁ~、成程ね~。250年も昔に良く此処迄作り上げたわ、大したものね、じゃあ私はこれをこうしてこうしてっと・・・」
私の作業を覗きに、周りに人だかりが出来ている。
「あ、出来た。」
多分これで魔導士の表示も可能になる筈。
もう一度パメラに手をかざすように促す。
「あ、表示できました! 魔導士です!」
よしよし、完璧だわ。
「取り合えず、間に合わせだからその内オリジナルで新型作って各ギルドに配布するわ。」
「お願いします。」
そんなやり取りをしながらも、パメラのギルドカードが発行されたのだった。
「わーい、冒険者だ~。」
パメラ、尊い。
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