第315話 MkⅢの実践戦闘訓練

        MkⅢの実践戦闘訓練

 さて、山岳エリアを超えて、ついに、辺境の街とでも言いたげな、街と呼んで良いレベルの、大きめの里が見えて来た。

 空中庭園で直接アプローチなんかしたら、大騒動になること必至だよね。

 って事で、結構離れた所で空中庭園から地上へと、降下します。

 あ、但し、カイエンの子供達は未だフェンリルギア持って居ないし、当然ながら私も付き合って徒歩ね。

 純白のローブを頭からすっぽりかぶって、いつものお面を付けて仮面の聖女の出来上がりっと。

 パメラには、紺色のローブ(裏地はピンクね)に、鍔の広い紺の魔導士っぽい帽子、そして魔法少女のバトンw

 今回のバトンは変身アイテムの玩具じゃ無くて、ちゃんと基本5属性と上級属性5属性の10属性の魔石を全てあしらって、魔力をサポートして威力を上げてくれる優れものだよ。

 で、問題は、タイカンとボクスの二人。

 訓練では、ボクスに魔導剣士の技を教えて、タイカンに二刀流を教えたんだけど、実の所あれはオールマイティーに何でもこなせる冒険者になって欲しくて敢えて課した制限。

 本当はタイカンは、バフ系の無属性魔法に特化した魔法は使えるから、魔剣を持たせると無茶苦茶相性が良いのだ。

 って事で私特製のフォトンソードをプレゼント、その上で本来の戦い方を伝授して見た。

「あの、師匠? 特訓で教えて貰った戦い方は?」

「うん、あれはさ、もっとオールマイティーに戦えるようにと思って教えた戦い方、元々あんた似たような戦い方してたしね、で、本来こっちで戦った方が強いと思うのよ、でも、急に戦い方を変えられたら敵は知能の高い相手であればある程その急激な変化を受け入れられない、初見殺しの必殺の戦い方になるのよ。 だからあんな戦い方を強要した訳。

 あ、むしろ普段を二刀流でも良いとは思うのよ?

 でも今回の実践戦闘訓練ではこっちでやって、見て?

 きっと戦い易いはず。

 何ならフォトンソードもう一本、ハイこれ。

 それとコレ、タイカン用に無属性魔法を全部網羅してあるから読んで覚えなさい。」

「わ、判りました。 やって見ます。」

「そしてボクスは、こっちだ。

 ナックルグローブ、こいつはミスリルをふんだんに使ってあって、魔法剣の技能が無いボクスでも、例えばファイアボールを発射する前に殴っちゃえばエンチャントに成っちゃう。

 足の方にもハイこれ、シュートブーツなこれも、足の甲の部分、爪先の部分、脛の部分にミスリルをあしらってる、こっちも魔法を撃つ寸前に発現した魔法現象を蹴ってしまえば、仮エンチャントになって、少しの間維持出来る。 そう言う風に作ったからね。

 ボクス、君は、格闘の才能が一番高い。」

「エリー師匠、幾らなんでも急にそんな事言われても今までと戦い方がまるで違います。」

「大丈夫だよ、ボクスもタイカンも、電脳に本来の戦い方の為の知識をしっかり詰め込んで置いた、だから後はそのまま自分の戦い方を見つけて行くだけだからね、さ、これから、街まで歩いて向かいつつ、実践戦闘の特訓だよ。」

「はい、頑張ります。」

 うん、素直なとってもいい子達。

 さて、次が初めての戦闘になるパメラだけど・・・

「さて、パメラ、貴女の得意属性は風、その上位の雷迄すでに到達している。

 だけど、他の属性もかなり優秀に使い熟す事が出来る。

 光と闇の属性も、そこそこの親和性を持って居ると私は見てるの。

 なので、貴女には、これをプレゼント。

 ネクロノミコン、全属性魔導書よ。

 今は未だ光や闇は使えないでしょう、この二つの属性はそれだけ、精霊が気難しい。

 でも、貴女はまだ若いから、魔導士として研鑽を積んで行けば必ず、使えるようになる日が来るわ。

 なので、今日は貴女に、制限を付けます。

 今日は得意属性を使わない事。

 風と雷を封印して戦闘に参加してね。」

「はい、エリー師匠!」

 うん、パメラもムッチャクチャ良い子!良いお返事がとっても尊い!

 思い出すだけでご飯三杯はイケる!

「んじゃ、とりあえず今日はもう休んでね、明日早朝から、この北にある街へと徒歩で向かいます。

 多分到着するのは日が落ちる頃になると思うわ。

 しっかり寝て置いてネ。」

「「「はい、師匠、おやすみなさい。」」」

 三人が就寝したのを確認して、私は一足先に降りて見る。

 とんでもねぇ魔物が居たらあの子らには厳しいしな。

 夜間は昼間より強い魔物が居るのも定番だけど、とは言っても完全に住み分けている筈も無いので、ざっとフェンリルギアで走りながらヤバそうな奴だけ処理して置いた。

 ----

 -翌朝-

 私が朝食の支度をして居ると、一番に起きて来たのは、食いしん坊のタイカンだ、美味しそうな匂いに誘われたかな?

 次に起きて来たのはパメラ。

 ボクスが起きて来たのは、二人が朝食を終えた後だった。

「ボクス、早くご飯食べちゃおう、私も今からだから。」

「あ、師匠おはようございます。」

「お前な、もう少し緊張感持てよ、今日は早朝から歩くって決めたろ?二人とももうご飯食べ終わってるんだぞ?」

「え、もう?」

 緊張感の無い子だ、でも大物になりそうだな、初めての土地を旅しようとしている時に余裕で爆睡してるんだもんな。

 格闘系の近接戦闘が得意なボクスは、一番接近して戦う職なのにこの余裕は驚きだよ。

 その上一番大食いなんだよな、この子ってばw

 魔法系の職でマナ保有量が多いパメラみたいな子は大食いなのは仕方ないんだけど、パメラはまだ幼いのでそこ迄は食べないしね、ボクスがこの三人で一番よく食う。

 私もマナ保有量が多いから結構大食いだと思うんだけどね、ボクスは本当によく食べる、マナ保有量はそんなに多く無い筈なんだけどな。

 食事を終えた私達は、急いで支度をして磁光エレベーターで降下。

 さあ、出発。

 そう言えば、私ってば歩いて旅するなんて初めての経験だわ、少し楽しみ。

 この辺りって、昨日一回りした感想は、割と魔物の数が多い印象。

 とは言ってもそうそうしょっちゅう戦闘になる訳も無く、景色を楽しみながら、のんびりと歩いて行く。

 そうやって油断してる時の方が良く出現する魔物、そりゃそうなんだけどねw

 現れたファングはこの地域独自の亜種だった。

 ボクスが突っ込んで行って一発殴ると怯んだファングは群もろとも一瞬怯んだ。

 そこにパメラの10発同時のストーンバレットが襲い掛かり、半数が瞬時に戦闘不能と化す。

 そして、身体加速で、神速の勇者の名を欲しいままにした父親のお株を奪うんじゃ無いかと言う程の速度で突っ込んで行くタイカン。

 ボクスの近接魔法とタイカンのファストスラッシュで、計40体程の群れが壊滅する。

 うん、心配無さそうね、私の出番が無いのは良い事だ。

 でもその時、私の警戒範囲には、すでにトレインして来るアホの子一団を捉えていた。

 言わないで黙っとこうと思ったんだけど、既にパメラも捕らえて居るようで詠唱を始めていた。

 この子本当に大魔導士になれるんじゃない?

 得意属性の風系は無詠唱で使ってたしな、既に。

 将来が楽しみだ。

 詠唱して居たのは、木の系統の魔法。

 麻痺毒を持つ棘が生えた豆を弾き出すマメ科の植物を召喚するプラーシャ、その複数形のマルチプラーシャを唱えている。

 もはや不得意な系統の魔法で、しかもこんな第五階層位の上位の魔法を、初めての実践で使えるなんて、本当にこの子は底が知れない。

 私とのお勉強の賜物では有るとは思うけれど、度胸も一流よね。

 マメの蔦の壁を作って迎え撃ってる、でもトレインして来るアホの子一団迄巻き添えでスタン状態にしていた。

 容赦ねぇな・・・

 私でもやらないぞ、幾らトレインして来るのは迷惑行為だからって・・・何て無慈悲なのw

 思わず笑っちゃうほどに無慈悲だよね。

 無慈悲な美幼女、尊いわ。

 トレイン御一行様の元へと向かうと、見事な程丁寧に一人一頭残らずスタンになってた。

 で、アホの子御一行を追いかけてたバイコーンタイガーって言う、只でさえ危険だと思うトラに二本の角が生えてるって言う凶悪な魔物が10体程、見事に動けなくなってたので取り合えずそのまま急所を一突きにして止めを刺して、その立派な毛皮を手に入れた後、痺れて動けないアホの子冒険者御一行様を回復してやる。

「さて、取り合えず、何でトレインなんて言う迷惑行為をしてたのかしら?

 ちゃんと説明して貰いましょうか?」

「う、煩い!余所者の癖にえらそうに!」

「あ? 助けて貰って恩を仇で返すような物言いをするのがこの辺りの礼儀か? ならば私達はこんな事をしても良い訳だな?」

 ちょっとキレた私は、無詠唱でプラーシャを発現してもう一度このアホ共をスタン状態にした。

(※ピンポーン、麻痺毒や筋弛緩剤は強力な猛毒です、効かせ過ぎると心臓も止め兼ねませんので用量用法を護って正しくお使い下さい)

 そのままイーファゴーレムを召喚して、縛り上げそのまま引き回して行く事にした。

 5人パーティーで一体何バカな事してたんだろう、このアホの子団。

 まぁ、初対面でしかも助けてくれた相手に対しての口の訊き方が成って居ないって事で引き回しの刑は確定なので、街に着くまではもうこれ以降何を言い出しても聞く耳は持たない事にして、ゴーレムに任せて放置だ。

 そのまま旅を続けよう。

 酷い? 私はとっても傷付いたんだけど?

 って事で良いよね、この位しても。

 さあどんどん行くわよ。

 初めて遭遇する魔物が多いので新しい食材が期待できる。

 次に遭遇したのは、ちょっといつ遭遇するかと期待して居た系の魔物だった。

 ギガントシープ、羊なんだけどサイズ感が半端ねー・・・

 実に体高が10m近くある。

 そんな巨大な羊が、猛スピードで突っ込んで来た。

 私は思わずアイスウォールでも張ってやろうかと思ったんだけど、既にアースウォールの詠唱が終わりかけて居るパメラに花を持たせてやろう。

「アースウォール!」

 最後の魔法名を唱えてドヤ顔のパメラ、可愛い。

 壁は少し高さが足りなかったようだけれど、逆にそれが功を奏した。

 足を取られたギガントシープは前のめりに引っ繰り返ったのだ。

 そのまま、タイカンとボクスが襲い掛かる。

 巨大な羊があっと言う間に倒されてしまった。

 こいつ等のチームワークマジでスゲーわ、流石は兄弟。

 もはや私要らねーかも?

 でもまぁ、未だもっとヤバい魔物が居るしな、危険なようなら私が。

 昼近くなって、そろそろ昼休憩をしようと、一旦移動を中断して、お昼の準備を始めると、延々と引き摺られていたアホの子団の一人が口を開いた。

「先程のあの馬鹿の発言は、確かに非礼でした、お詫びいたします。」

「ん? 私は発言許して無いわよ、黙って私の傷付いた心を襤褸雑巾の様になって癒し続けなさい。」

「エリー師匠、容赦無いですね。」

 ボクスがそんな事を言い出す。

「そんなの知らないわよ、助けられといてあんな酷い口利きするような者は家畜以下でしか無いわ、言っとくけど解いてやったりしないでよ、こいつ等には食わせる物すら在りませんからね。」

「そ、そんな・・・」

「イーファゴーレム、こいつら引き摺ったまま周囲の警戒して着て頂戴。」

「クッ!殺せ!どうせなら殺してくれ!」

「男がその台詞を吐くな!

 そのセリフは巨乳美少女クルセイダーがだなぁ!

 あ、いや、止めておこう。」

 つい、言い掛けてしまった。

 でもあのフラグは立てないで欲しいよね。

「さて、皆何が食べたい?」

「俺、唐揚げが良いです!」(タイカン)

「俺、ステーキ!」(ボクス)

「カレーが良い。」(パメラ)

 見事に分かれたな・・・

 仕方が無いのでストレージに入って居る作り置きを出す事にしよう。

 有るんだったら初めからそうしろって突っ込みはしないで欲しい、私は料理を目の前で作って食べさせたいのだ、本当に目の前で完成した物を出来立てで食べて欲しいんだよ。

 確かにストレージは時間止まってるからこれだって出来立てのままなんだけど、味気ないだろ?それって。

 でもまぁしょうがない、そんじゃ私も私が食べたいと思ってるオムライスでも出して食べるとしよう。

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