第314話 MkⅢ、西へ

        MkⅢ、西へ

 ジ・アースと別行動をとる事にした私は、あのダンジョンを作っちゃった後、さらに西を目指す事にして居た。

 西へって言ったって、三蔵法師じゃ無いから経典取りに行ったりする訳じゃ無いからねw

 確かあの旅で受け取るのって般若心経じゃ無かったっけ?

 脱線しちゃいましたw

 空中庭園は、飛空艇よりも速度は出ないが、逆に時速20㎞程度のゆっくりした速度が出せる。

 なので、敢えてゆっくり移動させつつ、ボクス、タイカン、パメラに修行を付けてやる事にした。

 何か知らんけど、私の本体がきっと制限解除でもしたのだろうけれど、私は電脳化して居ないのにパメラが電脳化されている事に突然気が付いたので、私は元々存在して居るパメラの魔法回路をもっと効率の良い物に書き換える作業をしてやった。

 魔法回路が在るなら書き換え程度ならば傷みは無いんだよね、これは未だ原因が判んないんだけどね。

 あ、そう言えば、本体はこの間例の開けない日記のような本を開く事に成功したってコッソリ私にだけ教えてくれたけど、本当に中身は前世の日記だったらしい。

 その所有者は魔王と呼ばれた人で間違いは無さそうなのだそうだ。

 MkⅣが所在を掴んだようなのでそのうち行って見ると言ってたけど、どうせ本体の事だからMkⅣに内緒でコッソリ行くんだろうな。

 さて、そろそろボクスとタイカンの訓練に付き合う時間だわ。

 自室から、庭園の一部に設けた訓練用の闘技場区画に転移。

「「師匠、おはようございます。」」

 二人とも、私の訓練を受ける時は師匠と呼びなさいって教えたらとても良い挨拶をしてくれる。

 真面目な良い子達だ。

「二人とも、おはよう、基礎体力は大分付いて来たみたいだし、今日から模擬戦闘でもやって見ようかな?」

「「お願いしますっ!」」

「よし、えっと、ボクスは身体強化中心で近接戦闘のスペシャリスト、所謂君のお父さんと同じスタイル。

 但し君の器用さを生かす為に両手に武器の二刀流って奴だ。

 タイカンは、君のお姉ちゃんカレイラと近いスタイル、魔法を織り込んだ戦闘、但し君の場合は魔法剣と言う特殊な魔法には少し不向きだから、魔導剣士、つまり、剣による攻撃をしつつ頭の中では魔法を撃つ事を考えて剣撃の合間に魔法を放つスタイル。

 どっちも極めれば魔王をも殺せるだろう、二人とも勇者候補と言っても過言じゃ無い、聖騎士タイプと言っても良い。

 私のアドバイス通りに戦う事を心がけて、同時に掛かってらっしゃい。」

「「はい! 行きますっ!」」

 ハイ減点、行きますなんて言って攻撃してたら先制されちゃうわよ・・・っと。」

 と言いつつ急接近してデコピンを二人に当てる。

「「いて。」」

「さあどんどん行くわよ~。」

 二人が慌てるように散開する。

 そしてタイカンから魔法が放たれる。

 私が教えた最も効率が良く牽制出来る魔法、ストーンバレットだ。

 そのタイカンと息ぴったりで一気に私との距離を詰めに掛かるボクス。

 うん、この二人、暫く私達が離れていた間にも一緒に冒険者登録して頑張ってたせいか、良いコンビネーションだ。

 だけど・・・

 ストーンバレットを躱しつつボクスの剣撃を紙一重で躱してボクスの脚を掛けて転ばせ、ボクスによる死角から飛び込んで来たタイカンの剣をさらっとかわして背後に回って鉄斬功をぶっこんでみた。

 タイカンが吹っ飛んで行きボクスと衝突して二人共も連れて倒れる。

「「くっそぉ~! 流石にエリー師匠つえ~!!」」

「当たり前でしょ、私があんた達に負けてたら師匠に成らんじゃ無いの。」

 身も蓋も無い事を言って見る。

 良し、ンじゃ今日はこの後、皐月に習いなさい、わたしはパメラに魔法の講義が有るから後でね。」

「はい!師匠!」「ちぇ~、エリー師匠のが良かったな~。」

「後で様子見に来てあげるから腐るな、タイカン。

 じゃ後でな~。」

 転移してパメラの待つ図書室に向かう。

「パメラちゃんお待たせ、ちゃんと自習してたみたいね。」

「はい、エリー師匠、えっとこの部分が少し難しくて・・・」

「ん?どれどれ? ああこれはねぇ・・・」

 パメラが難しいと思って居たのは、化学反応に関する一文だった。

 これを理解してくれれば、只のファイアボールが、ほんの少し魔力をプラスするだけで、炎の色が青白くなって温度がうなぎ上りに上がる、つまり私がオリジナル魔法として撃った事がある、ファイアボール・ブルーローズが使用可能になる。酸素を送り込んで完全燃焼させるだけなので、一見魔法とは違うのだけど魔法に応用した化学って事で私だけ解って居れば良い物では有るけれど、良い所に目を付けたよね、パメラ。

 本当に大物魔導士に成りそうだな、この子。

 パメラに、15分の休憩を挟んで合計三時間の授業をして、今日の講義を終わりにすると、もう一度闘技場エリアへと転移する。

 闘技場の場壁の上から様子を窺って見る。

 うん、大分やり込められてるね。

 でもよくよく見ると、皐月が2発ほどボディーに擦り傷っぽい物を付けている事に気が付いた。

 へぇ、二人ともなかなかやるじゃない、あの沈着冷静な皐月に傷付けるなんて。

 しっかし二人とも生きてるのが不思議なくらいにボロボロだなw

 まぁ皐月だから殺しはしないけどさ。

 皐月に一報入れた後、二人の前に転移する。

 二人とも肩で息をしてる。

「二人ともお疲れ、皐月相手に3時間も良く戦ったな、体力も付いて来たようだね、さて、回復してやろう。」

 二人に、スタミナをメインに回復させる”ヒールウォーター”を掛ける。

「「す、すげぇ、もう3時間でも戦えるぜ?」」

「まぁそこまで無理しないで良い、徹底的に体を虐めた後は、栄養しっかり取ってゆっくり休む事も大事だ。

 この場でバーベキューでもしよう。」

 すると、私の指示を受けてすぐに動いた皐月が、既にバーベキューセットを用意し始めている。

 そこに水無月が、庭園のストレージに入れてあったジャイアントボアとハンマーヘッドオークの肉を抱えて持って来る。

 その後ろからパメラも一緒に歩いて来ている。

「おにーちゃんたちお疲れ様~。」

 うん、パメラも超良い子! 尊いっ!

 尊いと言えば、うちのマリィちゃんは元気にしてるかしら、近いうちに一度会いに帰ってみようかな。

 ンな事つい考えちゃうけど、今はそれどころじゃ無いわねっ!

 私が腕によりをかけて皆にバーベキュー焼肉を振舞わなきゃね~。

 タレは醤油ベース、甜菜糖をお醤油に混ぜ、白ワインで風味を付けた物を軽く煮てアルコールを飛ばす。

 それにほんの少しごま油を落とした物をタレにする。

 もう一種類タレを用意しておこうかな、こっちは味噌ベース。

 白味噌に甜菜糖、白ワインはさっきの醤油ベースよりも多めに。 やはりごま油を最後にほんのちょっと。

 こっちには黒擦りゴマを少し混ぜても良いかな?

 味噌に黒ゴマは大変相性が良いんだ、味噌の持つギャバと、黒ゴマに潤沢に含有するセサミンって言う成分は、互いに互いの効能を底上げしてくれる。

 夏バテとか、寒い冬の冷え性にも効果が有ると言う一年中優秀な効能が有ったりするのでお勧め。

 お肉はそれぞれ切り分けて有るので後は一口サイズやステーキサイズに切り分けたら塩胡椒で下味をつけて置きます。

 MkⅣが炭窯を見つけて作らせたと言う備長炭に火を入れ、それをバーベキューグリル(元ドラム缶)に放り込んで上に網を乗せ準備完了。

 何故ドラム缶があるのかって?決まってるじゃ無いの、私はこの世界で何を作って来たと思ってる?

 これでも一応機械を作って来たんだけど、要するに機械油を保管する為に自作して居た物を、真っ二つにぶった切ったのがコレです。

 ちなみに野菜もバーベキュー用に既に切った状態の物をストレージから出して使います。

 時間が止まってるストレージって最高、暇な時に野菜も切って保管して置けば切り立てのままだもんね。

 おろしニンニクと自作の甘辛みそ(要するにコチュジャン)も忘れずに用意。

 タン焼きの為の塩レモンは、お塩は塩田で仕立てた本格仕様、レモンはトリーシアにお願いして世界樹でこさえた物を本体がストレージに仕舞って居た物。

 デタラメにレア度が高いんじゃ無いかって?

 知らんがな。

 あ、そうそう、ちなみになんだけど、紀州備長炭って、本当に品質の良い物って白いのよ。

 一部だけ白くて全体的に黒い備長炭は実は品質は低いのだ。

 そして備長炭同士で叩くと、キンキンと甲高い音がする物程品質が高い。

 第二オガサワラに一人で住んで居た頃に自分で作って見た事もあったけど、本当に白い高級備長炭になるのって、100本中1本あれば良いって位に貴重だったよ。

 さぁジャンジャン焼くわよ!ステーキはミデアム位で上げるのが良いよね、一番おいしい。

 焼肉にスライスした奴は未だ多少赤いのが残った位が良い。

 豚肉に当たるボアの肉はそれ駄目だろうって?

 所がそうでも無いんだ、豚肉が牛みたいな状態で食べられないと言われる理由ってね、細菌などの毒素がどう言う訳か筋組織内に残留するからと言われて居るんだけど、私にかかったらそんな物は無いに等しいのです。

 ストレージに入れる時に毒抜き出来ちゃうからってだけだけどな。

 実際に前世でも無菌室で病気一つせずに育った豚の肉は生でも美味しかったよ。

 さてさて、そんな事やって居ると、ゆぐどらしるからのお知らせ。

『前方に街が見えて参りました、』

 お、ついに来たか。

 私が作っちゃったラストダンジョンみてぇになったアレから、エベレスト級の高山を幾つか超えた先にとうとう人の足跡を見つけた。

 さぁ、ここから新たな冒険の始まりだよ。

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