第311話 根競べ:魔王VS魔王

        根競べ:魔王VS魔王

 -本体-

 デカい扉がある。

 で、私は、別に倒しに来た訳じゃ無いので、開くんじゃ無くてノックする事にした。

 丁度ね、外開きでこっちに引いて開けるようになってたので取っ手が付いてるのよ、その取っ手を使ってノックして見た。

 ガンガンと大きめの音が響くので向う側にも聞こえるはず。

 すると、魔道具らしき液晶モニターとカメラが付いててさぁ、そこに映ったのよ、ハイエルフの男の子が。

 でもビクビクしてる感じで、ああ、やっぱそうなんだ、一連の魔王と呼ばれて迫害された張本人なんだろうなぁって感じで、引きこもりがちな少年がそこには映っていた。

「あのぉ、どなたですか?何の御用でしょう。」

 魔王君がビクビクしつつも第一声を発した。

 さて、ここはどう言う悪戯をしようか・・・

 第一プラン:「わ♡た♡し♡来ちゃった。」

 第二プラン:「ターカーシー君! あーそぼ♡」

 選択肢はそう多くない、この辺だろう。

 ここは、まだほんの少し幼さが残る200歳越え程度のハイエルフだから、人間の肉体年齢に換算したら多分16位?

 って事で、第二プランでいって見よう!

「ターカーシー君! あーそぼ♡」

 どんな返答が返って来るかな?

 って、反応が返ってくる前にテディーから突っ込まれた。

「友達ちゃうやろ!」

「なっ!? だ、誰だお前ら! なんで俺の名前!」

 そうかそう言う反応ですか、詰まらんやっちゃな。

「まぁまぁ、そんな警戒せんと、貴方と同じハイエルフさんですわよ?」

「は、ハイエルフだろうと、僕は誰とも会う気は有りませんよ!」

「えぇ~、こんな美少女達に言い寄られて拒否るの?

 まさか男色家とか言わないでよね?」

「う、ち、違うけどっ! だけどっ!」

「けど、何?」

「そ、その・・・」

「ハッキリしぃやヴォゲェボケっ! 男の子やろがいっ!」

「まぁまぁ、テディー、そんなイキナリだしさぁ、そりゃ警戒もするってば・・・あ、そうか、御免ねぇ~、自己紹介忘れてたわ~www 私とした事が、御免ねぇ~。

 私は、エリー・ナカムラ、ハイエルフで、年齢は735歳、そして私の名前を聞いてピンと来たかも知れないけれど、転生者、多分貴方と同じ世界からの、それでこっちが私の大親友のベアトリクス・ヤマダ、ハイエルフで年齢は49歳、元の世界での同級生だったのだけど色々あって年齢に大きな開きが。」

「ほ、本当に、地球の日本の人?」

「そんな事ウソついてどうすんの?」

「僕を騙してここから引き釣り出そうとしてる?」

「あのな、あんたをそこから引き釣り出すだけだったら私の魔法で簡単なんだけど?」

「魔法!? マジで魔法!?」

「あんた、私の戦闘さっきの見て無いの?」

「み、見て、無い・・・」

「何で見て無い訳? もしかしたらあんたを殺しに来た奴かも知れなかった訳でしょう?」

「そ、その・・・実は・・・寝てたんだ。」

「あのな、こんな正午前に寝てって、本物の引き籠りかっ!」

「エリちゃん、マジこいつアカンで、こんなのに会いに来る必要あれへん、帰ろ帰ろう!」

「まぁそんな怒らないでやってよ、200年程前に王様に虐められて引き籠った本物の被害者なんだから。」

「王様に虐められた? 何他何処の王様や、わしがぶっ潰したるわ!」

「オッサンみたいになってるオッサンみたいに! テディーは虐められるってワードに過剰すぎる。」

「伊達に虐められて育ってへんし、そこはこんな風に育てたエリちゃんのせいやで?」

「育てて無いからw」

「ぷ・・・クックックック。 面白いですね、貴女がた。」

「「おもろくないわ!!」」

「貴女達が悪意を持って来て無いのは判りました、でもまだ信用は出来ないです。」

「あんたも警戒心半端ないわね、ったく。

 私もこの子もあんた同様虐められてた口だからね、何とかしてやりたいから来たの、此処まで言ってもここ開けてくれないのね?

 折角かなりの美少年だからお友達になりたいとか思ってたのに。」

「あ、いや、その・・・」

 ホント煮え切らねぇな、こいつ。

 お前は霜けた里芋かっ!

「ふう、仕方無いわね、出て来るまでこの場でお食事タイムさせて貰うわ。」

「お、エリちゃんのお昼ご飯、美味しいんやわ、そうめん持って来とる?」

「テディー残念、この間あんたがみんな食っちゃった。

 今日持ってるのはハンマーヘッドオックスのハンバーグだね。」

「お~、エリちゃんのハンバーグ美味そうやなぁ~、エリちゃんの料理の腕前は三ツ星シェフもビックリの家庭的なお味やから好き。」

 どんな表現だよ。

 家庭料理なのに三ツ星シェフも驚きのお味って意味で合ってるか?

「他に持ってるのは~・・・ハンマーヘッドオックスのスジ肉を使ったカレーだな。」

「カレー一択です、すんません、負けた。」

「そんなにカレー好きだったっけ?テディー。」

「エリちゃんのカレーやで? あの料理作るエリちゃんのカレーなんやで? もう誰もそのお味には勝てんて!」

「はいはい、ンじゃカレーね。 ちょっと待ってね~。」

 ストレージからカレー皿とお櫃とカレーの入った圧力鍋を取り出した所で、タカシは陥落した。

「あ、あの、すみません、ぼ、僕も、その・・・食べたい。」

 目線だけは逸らしている。

「良いわよ、開けてくれる?」

「そ、それはダメ。」

「開けてくれなきゃ食べられないっしょ?」

「ささっき、僕を引き釣り出すなら魔法で楽勝だって、なら、カレーだけ入れてくれれば・・・」

「ああ、転移魔法か何かだと思った訳?そんな物行った事のある場所にしか行けないし行った事の無い場所に居る奴なんか召喚出来ないに決まってるでしょう?

 魔法で簡単っつったのはこの程度の扉壊すのなら魔法一発で楽勝って意味よ?

 壊して良いのかな?」

「わ、判った、僕がそこに行きます、入って欲しく、無い。」

 こりゃ汚部屋になってるんだろうねぇ・・・きっと。

 この子さぁ、折角の美少年なのに、色々残念そうなのと、もう一つ言うと200歳超えてるってのに未だ肉体年齢中学生位で止まってるのよね・・・

 きっと色んなトラウマとかがそうさせて居るのじゃ無いか?

 ピーターパン症候群が魔素で本当に肉体に干渉してそうさせて居るのじゃなかろうか。

 程無くして、重そうな戸が開いて、弱弱しい足取りの美少年ハイエルフが顔を出した。

 ので、早速電脳化ナノマシンをコッソリ嗾けて置く事にした。

 テーブルと椅子を用意して、そこに三人分のカレーを、用意して行く。

 この間カレーにはこれが無いとって思って自作で漬けて見た福神漬けを出して、冷たい炭酸水を三人前取り出して、さぁ召し上がれ。

「エリちゃん、何、この凶悪な香りのカレーは・・・」

「美味しそうでしょ?」

 思いっ切りヘッドバンキングを始めるテディー。

 ハッキリと聞こえる音量で唾を飲み込むタカシ。

「さ、どうぞ召し上がれ。」

 テディー、タカシ、ほぼ同時に、一口目を口に運んで食べた。

 その瞬間、二人の時間がほんの数秒、止まったらしいw

 お肉を貰ってご満悦の子犬の様に瞳をキラキラ輝かせて動きを止めるハイエルフ二人がそこに居た。

 うん、元々美少女に美少年のハイエルフだから、絵になるな、これw

「「ほひしひおいしい・・・」」

 さっきまでスゲー勢いで否定してた筈のテディーとタカシが見事なハモリをw

 もしかスッとこの二人何気にお似合いなんじゃねぇか?

 今これ言っちゃうと又テディー切れそうだから言わないけどな。

 そして、次の瞬間、凄まじい勢いで掻き込み始める二人だった、うん、やっぱ似た者同士かも知れん。

 結局、二人とも実に3杯ものカレー(大盛り)を平らげてしまった、食い過ぎだろお前ら。

 ってか、食べる量までほぼ同じってどこまで息が合ってるやら。

 しかし、こんなアッサリ、カレーで陥落する魔王ってどうなのだろう、まぁ私も魔王の称号有るから人のこたぁ言えないけど。

「美味かったぁ~・・・」

 満足したらしいですな。

「で、話しくらい聞く気には成ったのかしら?」

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