第310話 訪問
訪問
-エリー本体-
さて、っと。
久々にキュルレンシス君に会いに来たのは昨日、お見合いが一日掛かりになってしまった為に、一晩ここに留まって居た。
キュルレンシス君への連絡事項も済んだし、って言うか、まぁキュルレンシスも電脳化してるから電脳通信で話は済むんだけどな、本当は。
まぁ、たまには顔を合わせて・・・ってか定期的にたまには顔見せて話しないと、里に籠ってるキュルレンシス君みたいなハイエルフはどうしても内向的になる傾向が強いから、せめて私みたいな奇特なタイプが訪問して、顔合わせつつ集落の外の世界の話とかしてあげないと、どうしても陰に籠ってしまうと言うか、精神衛生的にあまり良い事には成らないだろう。
なので、私は内向的なハイエルフの気晴らしに来てやって居る訳。
こうしてマリイも連れてね。
序でにテディー連れて来てるし、エルフ族のお見合いも兼ねてたけどさ。
それにしても今日は冷えるわね、雪降るんじゃ無いかな。
もう2月だし、一番降りやすい時期だしね。
と、言うかこっちでは月齢の暦のようだから今はこっちでは1月って事に成るのかな?
この辺、樹海付近は既に何度か降って居るらしいけど、今年は幸いにも雪があまり激しくないらしく、ほぼ残って居ない。
だけど、次期的に突如大雪が降っても可笑しくない時期だし、そうなる前に行ける所に入ってしまっておきたい。
お見合いも何とか終わって、一応うちの事縁談が纏まりそうな子が一人居たし、後は若い者同士って事で、転移魔法陣を両方の里に設置して居聴き出来る様にして置いた。
もうここでやる事は何も残って無いと思う。
んじゃ、今回の最終目的地、行って見るか。
「キュルレンシス君、転移魔法陣設置したけど、使用は許可制にしといてね、魔力チャージするの結構大変だからさ。」
「判りましたエリーさん。」
実は昨日歓迎の宴会を開いてくれたんだけどね、その時に、「同じハイエルフ同士なんだから様で呼ぶの辞めない?」
っつって色々と話し合った結果、私の事は”さん付け”で呼ぶことにしてくれたらしい。
まぁ私も”君付け”で呼んでるし、それで良いよって事でそう呼んで貰う事にしたのだ。
「さ、それじゃ次の目的地に出発するよ。
テディー、いつまでも美味しいからってミカン貪ってないで行くよ~、うちの樹にも生るからほら。」
「はいは~い、お待たせ~、お土産一個もろた~。」
「あのねぇ、あんたは全く、好きな物食べ始めると見境ないんだから。」
そうめんも延々と食ってるしな、こいつ。
まぁ昔から変わって無いなって少し安心したけどねw
磁光エレベーターで庭園に戻ると、早速電脳で”ゆぐどらしる”に指示を飛ばし移動を開始した。
んで、最近良くお喋りする様になったマリィが可愛いので愛でながらノンビリと行くとしましょう。
「まぁま、あのね、あのね、まいぃ、まぁまのごあんたべてみちゃいにょ。」
「そっかぁ~。マリイはママの作ったご飯が美味しそうだから食べて見たいのね~。」
「あい~。」
「ママのオッパイじゃイヤ?」
「ん~、パイパイないない。」
要らないって言い出した、マリィってば成長してるね~、可愛い!
「なら、ママのスパゲッティー少し食べる?」
「あい、たべゆ~。」
最近スプーンとか使うんだよね~、そんなしぐさもすっごく可愛いと思う。
成長してるなぁ~って実感するのよ、体作って脳を移植した時の肉体年齢が2カ月って所だったからまだ一切には当分成らない程度なんだけど、ホントに何でこんなにハイエルフの赤ちゃんって成長早いんだろう。
あれかな、ハイエルフは成長するとその強さは肉体的な物も魔素量や魔力的にも圧倒的に強い種族だから、まだ幼いうちにその成長を阻害しようとする外敵が多いって事なのかも知れない。
マリィの場合は私のおかげで、家に居る時も高度結界に保護されて居るし、空中庭園側の家でも庭園の絶対領域に守られて居るからよっぽどじゃ無い限りは敵に襲われる事は無いから問題は無いけれど、そういう風に成長する様になって居るんだろうね。
おっと、検証始めると止まんないのよ、脱線しちゃった。
さてソロソロ到着するかしら?
「ゆぐ、到着まで後どれ位?」
『到着まで30分程です。』
じゃ、そろそろ支度しないとね。
「テディー、ちょっと来て、貴女用のフェンリルギアのフィッティングするから。」
「フェンリルギアって何?」
「バイク型個人用携帯兵器よ。」
「何それ、怖いんやけど。」
「大丈夫よ、コントロールは電脳とのリンクで出来るから頭の中だけで完結するから、使える攻撃方法もリンクで認識出来るようになってるし。」
「そう言う事やのうてな、いきなり戦闘に成ったりするん?」
「ああ、大丈夫よ、アインとツヴァイも出るから。」
「どう大丈夫やねん!」
「平気平気、私の戦闘データなんかもあんたの電脳に蓄積してあるから楽勝だし、ビビる事も無いわよ。」
「そういう問題・・・ハァ。」
「はいはい、判ったらフィッティング行くわよ。」
格納庫に移動して、予備のフェンリルギアをフィッティングさせる。
使用者権限をテディーに設定する為でもある。
一度使用者設定してしまえばここに戻してゆぐに解除させる以外の方法が無いからね、どっかに置いて来ても電脳で呼び出せば使用者の元に戻るようになってるしな。
誰かに悪戯されそうになってもセキュリティー発動するから弄られない。
当然それなりの技術者が乗っ取ろうとしてもゆぐ以外の権限では使用者権限の抹消が出来ないのはとても有用なんだ。
ん?乗って無い時の動力はどう確保してるのかって?
こっちの世界に来てから完成した機体だよ?
魔素に決まってるでしょ。
だから常に供給しながら稼働できるって訳。
また脱線しちゃった。
フィッティングも滞りなく終わって、又テディーに突っ込み入れられた。
「なぁ、エリちゃん、一体何なん?」
「え?何の事?」
「何でこのサイズの機体にこんだけの武装が内蔵出来るんやって!」
「いやそこはそうじゃ無いんだってば、こんなコンパクトな機体に誘導ミサイル40発も搭載出来る訳無いでしょ、ストレージに機体番号毎の格納庫が収納されてるから時空間的に間接的に繋がってるのよ、そこから取り出して装填してるって訳。
唯一機体に付いた装備だけで発動出来るのはハウリングキャノンだけだってば。」
「それだけで十分な気ぃすんねんけど?」
「十分じゃ無いわよ、あれは魔素の消費量が多すぎるから精々撃てて一発、魔素濃度の低い所なんかだと一発撃つのに必要な量が確保出来ない事もあるし。」
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※ここで、フェンリルギアのハウリングキャノンについての解説をすると、ファンレイで使ったハウリングキャノンは封印って話しだったのに何故?って疑問持って居る人も居るかと思いますけど、出力があれほど大きく無い事と、MkⅣちゃんが必要に駆られて生み出した新技術で指向性を持たせたお陰で必要最小限の被害で抑えられるようになった為に、本体エリーさんもこれを許可して居る訳です。
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「はぁ、なんか随分やない?
ストレージ使うんやったら仕舞うんは格納庫やのうてミサイルその物でもええんちゃう?」
「えー、そんな事したら無尽蔵に撃てちゃうでしょう?
そんな戦略も糞も無いのは詰まんないわよ?」
「ああ、そうやったわ、エリちゃんはそう言うタイプやったねぇ。」
『目的地上空に到着致しました。』
「お、着いたね、ンじゃ行こう。」
フェンリルギアをバトルモードにして格納庫の射出口から飛び降り、スラスターを駆使して着陸する。
「なぁエリちゃん、ここは?」
「ん? ここは名駅の地下街入り口よ?」
「は?ってか駅なんかあれへんのやし何で地下街有るん?」
「そう言う所だからよ。」
そう、このダンジョンの奥に住むタカシ・タナカに会いに来たのだ。
アイン、ツヴァイ、私、テディーの4人なら楽勝で攻略できるしな、この程度のダンジョン。
実際あっと言う間に問題の個所に到着。
メルサの入り口、ってか隠し扉になってたそれを開いて侵入する。
やはりこっちが本命なのだろう、魔獣やゴブリンのような魔物が、MkⅣが騙されて最下層まで攻略した、メインと思われていたエリアよりも断然数が多い。
これはガトリングも全弾撃ち尽くして余りあるだろうね、最深部に到達するまでは持たないだろう。
まぁ、魔法で倒せば良い事だしその時は丁度良い機会だしテディーの魔法の訓練を兼ねちゃうとしよう。
案の定、全弾撃ち尽くしてアインとツヴァイは魔獣を殴り始めた。
「アイン、ツヴァイ、避けなさい、魔法が行くわよ!」
二体がサッと避けたタイミングで、テディーの魔法が吹き荒れる。
吹き荒れるとは言ったが、別に風魔法を使った訳じゃ無い、使ったのは大地魔法のスチールバレットだ。
テディーは土と大地の魔法がとても相性が良いようで、他の魔法と比べても威力が段違いだ。
このスチールバレットもテディーのオリジナル。
普通は只の石を飛ばすんだけど、飛んで行くのは鉄鉱石だ。
威力は当然圧倒的だ。
これ直撃したらフェンリルギアも破壊され兼ねないので避けさせたのだ。
こんな調子で、メルサを攻略、昇って行く。
残るは2フロア、そこで、ガチのフェンリルが出た。
げ、フェンリル対フェンリルギアって・・・
〇ジラ対メカゴ〇ラみたいじゃ無いのよっ!
フェンリルかぁ、召喚獣として欲しいなぁ。
とか思って見たけど思ってるだけじゃ駄目ね、やっぱw
そして、ついに到達したのだった、ラストのフロアに。
デカい扉がある。
で、私は、別に倒しに来た訳じゃ無いので、開くんじゃ無くてノックする事にした。
丁度ね、外開きでこっちに引いて開けるようになってたので取っ手が付いてるのよ、その取っ手を使ってノックして見た。
ガンガンと大きめの音が響くので向う側にも聞こえるはず。
すると、魔道具らしき液晶モニターとカメラが付いててさぁ、そこに映ったのよ、ハイエルフの男の子が。
でもビクビクしてる感じで、ああ、やっぱそうなんだ、一連の魔王と呼ばれて迫害された張本人なんだろうなぁって感じで、引きこもりがちな少年がそこには映っていた。
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