第309話 お披露目
お披露目
-ベアトリクス-
能力テストが終わって、まぁ概ね問題無しと言う事に成った。
何が問題かって? それはね、方向音痴だけが治ってへんかってん。
まぁ、これだけは女性の脳は何故か苦手とするって言われとるし、しゃぁ無いかも知れん。
ちなみに、苦手なのに電脳に完全に委託すると、変な感覚やけど何故か道間違わんねん。 おもろいわ。
出かける時は電脳でルート検索したらええちゅう事やね。
しっかし、ホンマに体若く成ったら楽しいわ~、ハズイ格好させられてもそれも楽しいってどんなこっちゃ?
ホルモンバランスって奴らしいねんけどなぁ。
何やエリちゃんよりも若い体なってしもたけど、初めはえ~っとか思ったけど、今は有り難い気ぃもする。
だって、こんなに楽しい筈の時に虐めに会うてくっらぁ~い青春、ってか病んだ状態だったんやもん、暫く楽しませて貰うわ。
自分こんなカワエエ子やったって初めて自己認識出来たしな。
今ならむっちゃモテるやろな~。
エリちゃんのMkⅢと一緒に旅に出てもええかな~とか思ったりして。
まぁ当面はMkⅣと一緒にインフラ整備のお手伝いかも知れんけどな。
あ、そうや、私も並列存在って作れるんとちごたっけ?
えっと、先ずホムンクルス作って、自分の並列存在の意識を移植するんやったね。
「・・・・・・・・あ、できた・・・・」
出来てしもたがな、マジでw
ホムンクルスって錬金術の極みかなんか言われとらんかったっけ?
こんな簡単に出来てええんやろうか?
種族スキルってとんでもないチートスキルやったのは確かやけど、ただの土くれでもホムンクルスに出来るて、なんなん?
どんなエエカゲンなスキルなん?
そこへエリちゃんが来た。
「テディーおはよー。 って、もう並列存在作ったん?」
「うん、試しにね。」
「で、ご感想は?」
「何であんなんが動き回れるん?」
「ですよね~・・・」
「んっと、今日はどっか行くって言って無かった?」
「ああ、そうそう、私ら以外の知ってるハイエルフに会いに行くよ~。 っと、その前にうちのエルフ達にも会いに行くか。」
「うちのエルフ達?」
「うん、うちのユグドラシルを拠り所に集まったエルフ達ね。」
「え、ユグドラシルなんかあるん?」
「持ってるわよ? テディーにも一つ贈るわね、そう言えば。」
「そんなそうそう何処にでもあるような物なん?」
「ん? ん~・・・無いわね。」
「それをいとも易々とあげるって・・・」
「まぁ、樹があれば増やせるのが相場ってもんでしょう?だから気にしないの。」
「そんなもんなん? いや、エリちゃんならきっとそう出来てしまうのやろね。」
「流石テディー、私の事判ってくれて有り難いわ。」
「いや、判ってると言うより、むしろ諦めとるんやけど。」
「え~、テディーまでそんな事言って私を責める?」
「いや、せめてへん、もう諦めとるしな。」
「まあいいわ、先ず庭園のエルフ達に会わせてあげるね。」
「なぁ、庭園って?」
「私の作った空中庭園、そこに私のユグドラシル植えたらね、エルフが集まって来たので住まわせてる。」
「空中庭園とか意味わからんねやけど・・・」
「見れば納得するわよ?」
「見て納得できるんやろか・・・」
「むしろ納得しろ。」
「へぇ~い、そう言う事にしとくわ。」
エリちゃんの後を追うようにして外へ出ると、そこには、空中で停止して居る島のような物があった。
余りの光景に圧倒されて居ると、その巨大物体から、光の道と言うか、磁光エレベーターが伸びて来た。
電脳では知識として持って居るけど生体脳側では理解の外の存在で、初見やった為に全く持って奇妙な感覚やけど、知らん物では無いのに理解が追い付かん言う変な違和感に苛まされながら、エリちゃんと一緒に磁光エレベーターに乗り込んだ。
庭園へと上陸すると、そこには、巨大な樹を背後にしたような、エリちゃんの家がぽつんと建っとった。
「なぁ、エリちゃん、これはどういう状況なん?」
「ちょっとマリイを連れて移動したかった事が以前にもあってさ、その時にあまりマリイに負担掛けたくなかったからこっちに家完コピして建てた。」
「かるぅ~・・・一軒家建てるのなんて結構な時間掛かるもんな筈やのに、知らんけど。」
「私とナノマシンに掛かったら30分だからね、気にしたら負けって事で。
とは言っても、その更に少し前に家が倒壊した事があってさ、その時に、新しく作ったナノマシンと、その一から建てた時のノウハウが有ったから30分なだけなんだけどね。」
「倒壊って、何したん? 実験の失敗でもして吹っ飛んだ?」
「まぁ、似たような物かな・・・」
エリちゃんの目が泳いでる、こう言う時はもっと言えないような情けない理由な気がした。
「まさかとは思うけど、ゴッキーが出たとかそんな理由やったら笑うで?」
カマをかけると、図星だったみたいでビシッて具合に完全にエリちゃんの動きが固まった・・・マジでゴッキーで破壊したんか?
エリちゃんらしいと言って良いんかいな?
「は、破壊したのは、私じゃないのよ。
アインの顔面にダイブされてね、アインが、そのお陰でデストロイモードに・・・・」
そう言うとエリちゃんが俯いた。
これガチな奴や。
で、家の裏庭、地上の方の家は裏庭は無くて崖で海って構図だけど、こっちは裏庭になっててそこに巨大な樹が聳えてはる。
その樹に向かって移動する。
って言うと歩いて行ったんかな、位に思うかもしれんけど、その移動方法も出鱈目やった。
なんかのアニメで見たような、反重力装置で浮いて移動する立ち乗りの奴、なんて言ったら良えんかね、あれ。
あんなのが既に作られとった。
エリちゃんって本当にずっと未来の世界から来たんやなぁって思う。
樹の麓・・・って表現するのが正しく思える程の樹やけど、その麓に到着すると、周囲にいくつかの小さな家が建って居る。
その家から、人が出て来た。
エルフや。
「これはエリー様、お久しゅう御座います。
お陰で平穏な暮らしが出来て有難く思って居ります。」
「うん、皆元気そうね、病気に成ったりしたら直ぐに連絡するのよ?
まぁ普通の病気程度なら貴方達に教えた浄化の魔法で何とかなると思うけど。」
「はい、して、そちらの方は?」
「この子は私のお友達、ハイエルフのベアトリクス・ヤマダよ、今日は紹介したくて連れて来たのよ。」
「左様で御座いましたか、私達はエリー様の庇護下のエルフ一族です、以後お見知りおきを。」
へぇ、エリちゃんも一応ハイエルフらしい事してるんやな。
って言うかすっかり信仰対象にされてそうやな、何や表情が陶酔してるように見えるんやけど。
「よろしゅう、私は未だ樹も持っとらんので、新参ハイエルフやけど。」
「いえいえ、確かにまだお若い様子ですが、ハイエルフはその存在自体が大変に希少で、高貴でありますから。
エリー様は流浪の民であった私達に住処としての樹と、魔法の技術を授けて下さいました。
有り難い事です。」
そうなんや、そうなんか、ハイエルフはエルフを庇護するのが普通なんやね。
私もそのうちお抱えエルフ作らなあかんのやろな。
所でエリちゃんが私にも樹をくれるって言うとったけど、何処に植えれば良えんやろう。
ってちゅうか、飛空艇も貰えるって話しやったけどな。
なんか私貰ってばっかしやわ。
「さ、ソロソロ到着ね。」
突然脈略も無い様な事を言い出したエリちゃん。
「到着??何が到着したの?」
「ああ、そっちじゃ無くてね、この空中庭園が
次の目的地に到着したのよ。」
失念しとったわぁ~、樹が聳えてたり家建ってたりするから、しかも揺れへんしな、これ空中にあったんやったわ、そら移動もするわな。
「ちなみにここはテディーのお家の近くよ、富士樹海のユグドラシルの集落。」
えー、御殿場の近くにあったんや、そんなもん。
磁光エレベーターで、気の根元付近に降りる事に成るんやけど、私のお披露目の序でに、エリちゃんの庇護して居るエルフはんの中で、220歳の適齢期の男の子にお見合いさせたい言うエリちゃんの意向で、一人連れて行く事に。
「エリー様、有難う御座います。 この機会を生かせるよう頑張ります。」
「あんまり気負い過ぎると駄目よ、普段通りで十分なんだからね。」
そんな事を磁光エレベーター内でやっても今更なんやけどな。
木の根元に降りると、真っ先に出迎えに来たのは、エルフでもハイエルフでも無かった。
緑色の光が収束して、人型を形成して行く、そして現れたのはドライアド?って奴、精霊やった。 知らんけどな。
「これはお久しぶりです、エリー様。」
ドライアドがエリちゃんに話しかけた。
「久しぶり、サクヤちゃん、みんな元気にしてた?」
「はい、一度流行り病が村に来ましたが、エリー様の万能薬のレシピのおかげで事無きを得ました、それ以外には特に何事も有りませんでした。」
「そう、良かったわ、キュルレンシス君は立派に村を治めているみたいね。」
「ええ、間も無くこちらに来ますよ。
所で其方のお嬢様は、新しいハイエルフ様ですか?」
「ええ、私のお友達の、最近ハイエルフに進化したてのテディー、じゃなかった、これは徒名よ、ベアトリクス・ヤマダ、よろしくね。」
「ベアトリクス様、コノハナサクヤと申します、よろしくお願いします。」
「ベアトリクス・ヤマダです、宜しゅう。
所でエリちゃん、あんたやろ、このドライアドちゃんに名前つけはったん。」
「あ、わかる?」
「この名前、アカンやろ?」
「そんな事無いわよ、この名前つけたお陰で、私のドライアドよりも強い子になったし。」
「せやろなぁ、しかし神様にしちゃダメやと思うけど?」
「まぁ、気にすんな?
樹だけにな。」
「あ、これアカン子の言い訳や、しかも駄洒落にしおった。」
「お褒めに預かり「褒めてへん。」」
食い気味に突っ込んどくことにした。
「これはこれは、お久しぶりです、エリー殿。」
ハイエルフが走って来た。
「おー、オヒサ、キュルレンシス。」
「今日はどの様なご用向きで?」
「今日は新たなハイエルフの顔見世と、この子のお見合いで来ました。」
「おお、新たなハイエルフ、それはそれは、世界中に4名しか居なかったので増える事は良き事ですな。」
「私の親友で、ベアトリクス・ヤマダです、年齢は49歳。」
「なんとお若いハイエルフですな、ああ、マリイ殿ほどは若くは無いですが。」
「あの子の場合は事情があって0歳スタートになっただけだけどね、実際に中身は90年は生きてる子だから。」
この辺の事情は私も聞いて居るしな、流石エリちゃんとしか言いようが無いわ、良う助けたな、マジで。
こうして、全員の挨拶を済ませた後、キュルレンシスはんの集落の若いエルフ(180歳から193歳までの3人)の女性が一人づつ、エリちゃんの集落の子とお見合いをしとるのを横目に、又エリちゃんがやらかしはった。
「んっとね、私さぁ、色々考えたんだけど、樹にも名前付けたら良いんじゃ無いかって思ってるのよ、この世界に世界樹、ユグドラシルって何本かある訳でしょう? 気に名前付いたらどこの集落か判り易いんじゃ無いかって思って。」
名前付けるらしいけど、この世界って名前で色々能力変ったりするはずやけど、樹に名前付けるのってどうなるか判んないからやめた方が良えんちゃうかって思うんやけど?
「それは素晴らしい発想ですな、エリー殿。」
あ、あかんわ、キュルレンシスはんもノリノリや、何が起こるか判んないけどヤバい事には成らないとは・・・思う、多分・・・
「んでね、ここのドライアドにコノハナサクヤってつけたからさ、ここの樹には
あ、これやっちまった気いする、あかん奴や多分・・・
「良いかも知れませんな。」
マジか、こいつらアホやろ!
「ん、ンじゃ決まりね、世界樹、貴女の名は石長比売よ。」
すると、樹では無く、ドライアドの方が強く輝き出した・・・あ、アカンかもしれん。
「あぁ~、これは面白いわ~、研究対象としては優秀ね~。」
何を言い出すかな、この天才バカボンは。
頭良いのに歯止めが無いのはまさに天才なのにアホ・・・
しかもそれを楽しんでる節が有る、手が付けられん。
「ほほぉ、サクヤ様がドライアドからエンシェントドライアドに進化されたようですなぁ。
樹齢もかなりの樹でしたし、進化すべくして進化した感じですかな?」
そんな程度の軽いノリで良い問題なん?
「なぁ、エリちゃん、あかんくない?これ。」
「そんな事無いわよ? この里を守護する要だもん、この位になって置いて貰わないと。」
「あぁ、良いんだ、こんな化け物じみた強さの精霊で・・・」
「うん、大丈夫よ、精霊はナノマシンの集合体だから。」
え?この子ってばとんでもない事実イキナリぶっこんで来たし!
あ、電脳検索したら本当に精霊ってナノマシンだった・・・
エリちゃんってどこまでこの世界の成り立ちに干渉してんのかしら・・・
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