第312話 引き籠り魔王を更正させる
引き籠り魔王を更正させる
「で、話しくらい聞く気には成ったのかしら?」
満足げに、カナリヤを食った猫のように舌なめずりをしていたタカシは、はっと今気付いたとでも言わんばかりに身動ぎを始めた。
まるで、今の今まで操られて居たかの如く、カレーに懐柔され出て来てしまった事を後悔するかの如くに。
そしてその行動も程無くして、腹を括ったように収まった。
「し、仕方無いです、ですが、この奥に入れる訳にはいきません。」
「え~、駄目なのぉ~? お掃除お手伝いするわよ? ね、テディー?」
「そうやでぇ? それとも、エッチィ絵でもいっぱい置いて在るから見られとう無いとかそう言う、あれなん?」
「ち、違う!そ、そ、そんなんじゃ・・・」
「へぇ~、ふぅ~ん、エッチな絵がいっぱいあるのね。
あ、もしかして盗撮写真とかも有ったりして?
でも私達なら大丈夫よ?二人とも大人になってからこっちに飛ばされた口だし、男の子がそう言うのに興味あるのは正常な事だから変な目で見たりしないから。」
「せやで、何なら脱いで見せたろか?」
「テディーそれは流石にやり過ぎ。」
「冗談やで?」
「じ、冗談でも辞めて下さい。 それと、盗撮なんかしません!」
「あら、想像して一部元気になっちゃった?」
「慰めてやろか?」
「だからやり過ぎ、テディー。」
「ぼ、僕を、か、揶揄いに来たんですか?」
「半分正解、もう半分は、本当に君を助けてやろうと思って来たんだけど?
私達に協力させて欲しいんだけど、頑なに拒絶されてはどうしようもないでしょ?」
「助けるって?」
「文字通り助けに来たのよ、引き籠ってたって何の解決にも成らないから、引っ張り出す気でやって来たって事よ。」
「そうやで?エリちゃんは人を揶揄う事に関しては無差別で限度が無いけど、やる時はやるんや。
たまにはな。
私も助けられた口やしな。」
「ちょ!テディー!? たまにはって何よたまにはってぇ!」
「あははは、本当にお二人は仲が良いんですね、判りましたよ、信用します。」
「なら、手始めにエリちゃんに、電脳化を受けてな?」
「あ、ごめん、もう終わってる。」
「「は?」」
「もう電脳化終ってるんだってば、後は必要な情報インストールするだけ。 戸が開いた瞬間に電脳化のナノマシン嗾けておいたし。 てへっ♡」
「てへっ♡ちゃうわな・・・あんたなぁ。」
「だって~、懐柔する自信あったしぃ~。」
「だっても糞も有るかいっ! 個人の意思は尊重しぃや。」
「うん、実はそれなんだけどね、世界中に飛ばした電脳化ナノマシンがね、既に新生児に電脳化を始めててな、この世界のデフォルトになり始めてんのよ。
だから、生まれながらにステータスも見られるし、お勉強次第で魔法使いにも成れるし、ね。
マナ放出の為の魔法回路とでも言った方が良いかも知れないけど、それを構築するナノマシンとセットでこの世界を改変中なのですよ。」
「それは。何時から?」
「テディーのハイエルフ化の間に、空いた時間にナノマシンのアップデートしてたらそうなっちゃった。」
「そうなっちゃったってどう言う事?」
「魔素が影響して独自に進化を始めたからね、あの子(ナノマシン)達。」
そんでさ、立ち寄った事のある街の雑貨屋とかにこっそり売り物に混ぜて置いて来た魔導書が読める人も、チラホラ現れ始めた、らしい・・・」
私はつい目を逸らしながら答えた。
「あ、こら、胡麻化そうとしたやろ。」
「そ、そんな事は無いよ、ただ私は自己進化型のナノマシンの進化速度を遅く修正しただけだから。」
「ほぅ、つまりは、元の設定が速く進化するようになりすぎてたっちゅう事やろ?」
「ま、まぁ、そう言う事「って事はそれ設定しとったんは誰や?」」
「えへへへ。」
「誤魔化すなぁ! あんたなぁ!」
「てへっ♡」
「だからそれで誤魔化そうとすんな。」
「まさか作ってから一年も経たない内にそこまで進化するとはねぇ・・・」(しみじみ)
「何をしみじみしとんねん、そんなんで誤魔化せんで?」
「だってぇ~、魔素のおかげで妙に進化が加速しちゃってさぁ、進化速度裁定にしても予測の範囲を超えた進化するんだもん、私が困ってる程なのっ!」
「あぁ~・・・それほど・・・」
要するに初動段階でやらかしたって事ね、と言わんばかりの冷ややかな目線を二人から浴びせられて少し辛い。
私だって魔素がここまでの影響力があるなんて思って無かったんだからしょうがないじゃん。
「まぁ私の事は良いじゃない、今はタカシ君を助けるよって話しでしょ?」
「あ、誤魔化した。」「誤魔化した。」
そこ、息ぴったりでツッコミ入れんな。
手始めに、私はタカシ君の電脳へ、ネクロノミコンをインストールする事にした。
「今から、医療技術と全属性の魔法の導入の為の魔導書、ネクロノミコンをインストールするからね。」
「あ、はい、魔法かぁ、こっちに転生した時は、てっきりもう在るもんだと思ってたなぁ、無いんでショックだったよなぁ。」
「判るわ、だから私は自分で作ったんだけどな。」
「普通はそこで自分で作ろうとは思わんのやけどな。」
「けど、アスモデウスがアホなおかげで私じゃ無ければ魔法なんか作り出せなかったと思うわよ?」
「ほらな?この世界の神様をアホ呼ばわり出来るなんてこの子位しかおらんで?マジで。」
「仕方ないなぁ、この後行くわよ、アスモデウスに会いに。」
「「は??」」
「行くっつってんの、あの阿保の所に。」
「「「どうやって?」」
「飛空艇でよ?」
「あんなぁ、幾らエリちゃんでも神様にそんな簡単に会いに行けるはず・・・」
「そうですよ、幾ら魔法作れたってそんな簡単に・・・」
「会いに行けるんだってばw」
「噓でしょ?(嘘やろ?)」
「嘘付いてどうすんのよ、マジで会いに行くわよ、ほら、支度して、タカシ君なんかあの阿保のおかげで虐められたようなもんなんだから蹴とばしてやりなさい、私みたいに。」
二人揃って、えぇ~、蹴飛ばしたんだぁ…みたいなドン引きした顔すんな!
「兎に角、あの阿保神はこの世界の管理が全然出来ていなかった罪で他の神々から追放されてこの世界に落とされてるから会いに行くわよっつってんの。
判ったら準備しなさい、憂さ晴らしに蹴りまくって良いから早く。」
強引に連れ出すには良い切っ掛けだろう?
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