第307話 ハイエルフ、ベアトリクス・山田

     ハイエルフ、ベアトリクス・山田

 -本体-

 かれこれ、テディーの進化促進に入って一週間目、今日、完全に進化が終わる。

 あと数時間で、新生ベアトリクスのハイエルフ人生が始まるのだ。

 彼女は転移でこっちに来たし、オバチャン年齢っつってたけど、見た感じ多分50歳位だったんじゃ無いかな?

 その年齢を反映したハイエルフの肉体になるって事は、ハイエルフの成長速度的に考えると、多分私が前世でテディーと逢った最後の頃の姿を反映した位に成るのでは無いかと予想している。

 つまり、中学二年生頃の姿。

 それはそれで妹キャラみたいでちょっと萌えるわ~w

 大人な肉体年齢になる前に絶対お姉ちゃんって呼んで貰おーっと。

 おっと脱線・・・

 一度成人年齢の肉体に成っちゃえばハイエルフの肉体年齢は固定されるっぽいんだ。

 私の肉体年齢が女子高生~二十歳くらいで停まって居る事も踏まえてね。

 多分、その位で肉体年齢は固定されるんだろうと思う。

 で、ハイエルフの寿命は、無い。

 つまりは、彼女もまた、成人年齢の肉体に達してしまえば、成長が止まり、老化もしない。

 まぁ私は既に、700年以上の歳月を生き永らえて居るので今更不死に成ったと聞かされようが驚きもしないし、どうとも思う所は無いけど、大概120歳を超えると周囲に同世代の知人が誰一人として生きて居る者が居なくなり、喪失感に襲われて自ら朽ち果てる事を望んでしまったりするものだが、テディーには私が居るので大丈夫と信じている。

 多分だけど、大丈夫。

 で、テディーの進化を促す為に一週間前からこの生体ポッドに張り付いて居るんだけど、定期的に問題が無いかをチェックするだけで良いので、正直言って暇である。

 私が寝ている時間だけは弟子であるトーラス君に点検をお願いして居るけど、それ以外の私が点検するのも3時間に一度で良いので、暇だったりしたのだ。

 で、その間私は何をして暇潰ししてたかと言うと、ナノマシンのバージョンアップだ。

 手始めに、ナノマシン以前にエルフ用の電脳、炭素繊維電極の、金属を使用しない電脳を完成させ、それをエルフの脳内に建設出来るナノマシンを作る。

 このナノマシンは大気中に流れて電脳化をして居ないエルフに取り付くと電脳化を強制的に促す。

 ハイエルフ、ヒューマン、亜人達は全て、電脳化のナノマシンはこれまで、液体状の物を飲み込む事で電脳化をさせていたが、大気中に撒けるように改良。

 どう言う事かって?そんなの決まってるっしょ。

 試験段階が終わったので電脳化を世界規模で推進させる為だよ。

 で、魔法回路を構築するナノマシンは、グリモワールの中で問題無いのでそのまま放置の方向だけれど、精霊の方のナノマシンは、もっと多様化させて統合する事にした。

 どう言う事かって、精霊魔法は精霊召喚だけでは無くなると言う事、通常の魔法も精霊の力を借りて居ると言うような方向に考え方を変える事で、魔法の発動に使って居たナノマシンと精霊の構成に使って居たナノマシンが同一の物に成る為にその数を半減させられると言う事に成るからだ。

 で、精霊ナノマシンは大気中の魔素をエーテルに分解する事でそのエネルギーを取り込み活動する。

 そのナノマシンが沢山集まる事で、精霊の姿を構築出来たりすると言う形だ。

 精霊は、大きく割り振って上級精霊と下級精霊に分けられ、下級の精霊しか召喚出来ない人も精霊を召喚使役して魔法を行使する事で精霊魔法がもっと敷居が低くなる。

 下級精霊は、集まれば下級の上位、妖精が召喚出来る、妖精は上位精霊の幼体と言う考え方で、沢山集まれば上位精霊並の強さをも発揮する事が出来うる。

 更にもっとナノマシンが集まって構成するのが名無しの精霊で、その上に上級精霊、その最高点が、最上位精霊と言う風に、階層を広くした事で、魔素量の低い精霊魔導士も目標を見据えて修行をしようと言う者が多く成るだろう。

 そして、体内のマナ量を増やすナノマシン、これは”修行でマナ量を増やせる”を普通に実践する為に、これも大気中に。

 レベルアップはナノマシンを進化させたり、術者が取り込んだナノマシンと術者の親和性を上げたりする事で、術者の最大マナ指数や、マナ最大放出量を増やして行く。

 そのマナを魔素に還元したエネルギーでナノマシンは魔法を行使し、マナを分解して発生した魔素をナノマシンはエネルギー源とする。

 ナノマシンがエネルギーを得る為に分解した魔素はエーテルと成って大気中や土に混ざり、時間を置けば自然と魔素へと戻るから、その魔素を食料等から摂取してマナに戻す事で私達人間は体内のマナ量を回復させると言う循環還元が構築されると言う訳。

 食物連鎖さながらのシステムがここに構築された訳ね。

 今までは魔法を行使する為にマナからエーテルまで一気に分解してしまって居たので、ハッキリ言ってエネルギーを効率よく使えて居なかったけど、精霊ナノマシンを介入される事でその効率を上げてナノマシン自体のパワーアップにもなるので効率がとても良くなるって言う程度なんだけど、今までの膨大に使用して居た無駄なエネルギーをナノマシンのエネルギーとして使えるようになった事でナノマシンの増殖量も増えてもっと多くの魔法使いを生み出せる上に、ナノマシン自体の強化にも繋がって行くので、私たちエリーシリーズの管理下のナノマシンの管理自体が楽になるので私の電脳のリソースも爆発的に増える。

 結局私達に返ってくる話では有るけれど、正直私が代行して管理してやらねぇとこの世界の歪みが激し過ぎてさぁ。

 アスモデウスには返す気も無いしね、この世界の管理。

 余った私達のリソースを世界の歪みを修正する為の演算に使えるので良い事だ、この演算はテディーの電脳でもバックボーンでやって貰うのだ。

 ハイエルフは脳の活性率が高くて電脳化しなくてもヒューマンの電脳化した脳よりも処理が速い位なので電脳の大半を使わないで居られる事で思い付いた新たな試みだったりするんだけどね。

 しかも、今の電脳は私がこの世界に来る以前の電脳よりも、魔素のお陰でバージョンアップして居て処理速度だけでも三倍以上になってるんだよ。

 記憶容量に関しては実に40倍以上も増えて居る。

 これ自身がハッキリ言って途轍もない高性能化されてる訳だ。

 なので私は、もう自重しないと決めた以上、この世界を支える縁の下の力持ちと言うか、神と呼ばれようとも気にしない事にしたんだよ。

 今度、魔王の所にお邪魔して茶でも頂きながら協力させようと思ってたりしてw

 茶菓子ぐらいは期待して置けよ、魔王、名前知らんけど。

 おっと、そろそろテディーが目覚めるね。

 -ベアトリクス-

 カプセルの中で、眠る事にした私は、肉体改造が終わるまでの一週間、ずーっと夢を見ていた。

 子供の頃のエリちゃんとの思い出を懐かしく思い返して居たんだ、夢の中で。

 そして、そうしている内に、不思議と気持ちが少しづつ若い頃に戻って行くような気がしていた。

 そうか、これがそうなんだ、カプセルに入る前のエリちゃんの言葉を思い出す。

「精神はね、肉体年齢に引っ張られる傾向が強い、そしてそれは肉体年齢ごとのホルモンバランスによる物と思われる、だから若い肉体に戻ると、楽しいわよ、子供の頃に戻れる。

 知識は生きた時間を全て持ち合わせたままでね。」

 そう、生き抜いてきた知恵や知識がそのまま継承されて、気持ちは若い頃に戻れる。

 それってとても凄い事で、歳ゆえに失敗を恐れて試せなかったようなプランを、試す勇気が戻って来ると言う事だ。

 可能性って、こんな簡単に増えるんだなって、そう思っちゃう。

 おばちゃんだった私が、今既にこんなに楽しい気分で、若返った私の将来を楽しめる程の精神状態に既になって来て居るんだ、これからの人生は、もっと楽しまなくっちゃ。

 勿論エリちゃんと一緒にね。

 私にも並列存在って作れるのかしら?

 私にもメイドアンドロイド作れたりする?

 や、私はメイドよりもバトラーアンドロイドが作ってみたいなw

 楽しみで仕方が無い、今の肉体年齢ってヒューマンから既に外れてそうだし、ヒューマンで言う所の何歳くらいなんだろう、ワクワクする。

 エリちゃん的に言わせると、「おらワクワクして来たぞ!」です。

 なんかのアニメのパクリの台詞じゃ無いかと思うけどねw

 カプセルに入ってから、何日経ったんだろう、もうすぐ出られるのかな?

 思ったよりも短い時間だった気もするんだよね、逆に思ったより長い時間だったような気もする。

 遠くにエリちゃんの声が聞こえる。

 もうすぐ外に出られるのかな?

 ゆっくりと、エリちゃんが言うところの、LCLみたいな液体が、抜けていく感覚がある。

 とうとう、顔が完全に駅から出た、肺に入って居る分を、吐き出す。

 目を開けると、笑顔のエリちゃんが目の前に立って居た。

 エリちゃん!また一緒に遊ぼうねっ!

 あれ? 私の精神年齢、中学生レベルなんじゃ?

「お帰り、テディー。」

 エリちゃんにこう言われたら、私も嬉しくなった。

「ただいま、エリちゃん!」

 声を出して見たら、かなり驚いた。

 私の肉体年齢って、やっぱ中学生くらい?声がメチャ若い!

 そのままテーラーズルームに転送された私は、エリちゃんの成すがままにコーディネートされて、可愛い服着せられたんだけど・・・

「ほら、可愛いわよ、テディー!」

 姿見の前に立たされた私は、さらに驚いた。

 え? これ、私? 私って若い時こんな可愛かったっけ? 誰この美少女。

「うん! 昔のテディーに戻ったねっ!」

 私ってこんな美少女だったらしいです。

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