第304話 捜索

         捜索

 ウラハッデ書記長は、嫌な予感に苛まれていた。

(あの、勇者の小僧と一緒に現れた奴は何者なのでしょう、何故か嫌な予感しかしません・・・

 2~3日引き籠って居れば良いかと思っては居たのですが、それではすぐに見つかってしまう、そんな予感がしてなりません。

 この際、多少のリスクはありますが、脱出した方が良さそうですね。)

 都合が良い事に、今日はウラハッデのお抱えの有能な側近が、この坑道内に作られた、既存の魔道具を解析する為の研究室の視察の為に先に訪れて居た筈だった。

 研究室の職員達はこの際どうでも良かったが、ウラハッデの側近4名は、この坑道の先に隠してある船を操船させるためには必要、むしろ必要最小限である。

 ウラハッデは無性に嫌な予感のする今の状況を打開する為には多少のリスクを負ってでも、今直ぐにでもこの場から脱出したい気持ちでいっぱいになって居た。

 坑道の一番手前の一室の研究室に居る側近達を取り纏め、急いで奥の隠しドックへ繋がる岩戸を開き、ドックへ。

 当然この施設が発見されない様に岩戸を裏から閉める事は忘れない。

 実はこの坑道自体、この脱出用の船を隠すドックに通じる通路であったのだ。

 坑道内部には、偽装を兼ねた研究室の他に、緊急避難用のシェルターとなる部屋と、ウラハッデがコツコツと溜め込んで来た、金塊や宝石、金貨等を隠して置く為の倉庫部屋があり、研究室以外の部屋には、岩に偽装した扉が作られており、戸の位置と開け方が判らなければ見つかる事は無い。

 その上、坑道自体にも、岩に偽装した戸を付けた事でますますここが発見される事は無い筈だった。

 だが、何故か嫌な予感がぬぐい切れないのだ、特にあの、城を掠めて飛んでいた船だ。

 あれはヤバい、あれに乗って居ると思われる何者かに特に常識では計り知れないものを感じざるを得ない。

 例えるならばそう、姿を現さず配下の魔物に蹂躙させて楽しんで居る魔王でも乗っているのでは無いかと思う程に。

 アレにはここもすぐに見つかってしまう、そんな予感でいっぱいだったのだ。

(仕方ありません、暫く隠れて居るつもりでしたが、こんな時の為に用意して居た脱出用の船です、これでうまく逃げ切りましょう。)

 予定を大幅に変更し、公道を脱出する方向に方針転換をしたのだった。

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 一方・・・

「カイエン師匠、国家元首、居ません・・・」

「う~ん・・・脱出通路は全て塞いでるんだけどな~・・・何処から逃げたんだ?」

「あの、まさかと思うんすねど、2階の窓、あそこから飛び降りたんじゃ無いっすかね?」

「いや、この高さならそれもアリか・・・」

 カイエンとアキヒロが、ガッカリして居た。

 飛空艇に帰ったカイエン達は、キースの義手の改造にもう暫く掛かるから皆で風呂にでも入って居ろと言われ、その通りに風呂で反省会なんぞをして過ごす事にしたのだ。

 あ、ちなみに倒した将軍達や兵士達は既に捕らえて居るらしい。

 その後にブリッジで、どうやって撮影したのか色々突っ込みたい角度から撮影されてたりする謎の映像で、反省会をした後・・・

「さ、皆、あいつ追い詰めたみたいだから、捕らえに行こう。」

 エリーさんが唐突に核心に迫る事を言い出した。

「まさか、逃げた先が判るんですか?」

「判るわよ、城の背後の山裾に人工的に開けた穴に逃げ込んでるわね、入り口は岩に偽装した扉で閉じて有るわ。」

「流石エリーだな、任せておけば大概何でもすんなり終わる。」

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 ‐MkⅢ‐

「よーっし、ンじゃあ、全員分のフェンリルギアを用意したから、乗った乗った。」

「何でこれ乗るんだ?」

「これな、小型のハウリングキャノン付いてたりするので、そのフィードバックで後付けしたエコーロケーションも使えるようになってるんだ、捜索には持って来いの機能だろ?」

「エコーロケーション、蝙蝠みたいな奴か。」

「そうそう、正解、要するに音を使った反射で何処に何が有るとかを読み取るソナーだね。」

「それは、きっと僕の知ってるソナー、魚群探知機なんかよりずっと進化した物なんですよね、きっと。」

「ん、まぁ多分そうだな、超音波ソナーで何処にどんなものが存在するかを全て分けて表示できるようにした。

 例えばだ、壁の奥に箱があって中に金のインゴットが何本入ってるとかそこまで判るよ。」

「メチャチートじゃ無いですかっ!」

 なんかアキヒロがハイテンションで突っ込み入れて来るんですけど。

「あ、でも流石に人種までは解んねーからな?」

「十分じゃ無いっすか。」

「そういう言われ方をすると納得いかないのよネ、人種まで判る様に、頑張ってアップデートしておくから楽しみにしとけ。」

「それもしかして俺のせいっすか?!」

「まぁ、みたいな物かな?

 さぁ、ンじゃ行こうか、ちなみに私は作業しながらだったし、坑道内に迄はナノマシンを放てなかったのよ、閉められてそれ以降は入れないしね。

 でもまぁ、独り言の様に二~三日は大人しく隠れていようとしきりに呟いてたから、中の何処に隠れている華までは解らないけれど何処かに居る筈だからね、それでこのフェンリルギアの出番って訳、皆でエコーロケーションでくまなく隠し部屋を探そうって魂胆です。

 検索精度を上げる為に、超音波を広範囲に発せられる仕様には成って無いから全員で隈なく探すからよろしく。」

 一緒に行きたいと強請るクリスに、まだ幼いパメラを預けて、留守番をお願いして出撃だ。

 クリスは最後までごねてたけど、結局キースに諭されたらすんなり納得して留守番してくれた、愛の力やねぇ~w

 もうすぐ妊娠6カ月に成ろうと言う所に来ているクリスには無理して欲しく無いので、気分転換に出たい気持ちも判らなくは無いけど今だけは堪えて欲しいよね。

 そして遂に突入に至る。坑道内は意外と広く、一番手前にあった部屋は、研究施設のようになって居た。

 全員で左右の壁に向かってエコーロケーションを放って探索して行く。すると、どうも金品を隠してある部屋なんてのも見つかったので、これはゴッソリ頂いておいて、この国をまともな国に出来るような真っ当な貴族を見つけて託そうと言う事に満場一致で決まった。

 それと、ワンルームマンション程度の部屋が10室程あって、各部屋に用を足す部屋が完備されて居たので、ここは居住スペースなのだろう。

 居住スペースの奥にもう一つ倉庫部屋っぽいのが有ったが、そこには干し肉や保存の利く物が入って居た、パントリーみたいな部屋のようだ。

 しかし、未だに人っ子一人見当たらない、何でだ・・・

 最後に、最奥の壁の奥に広い空間が有ったので、ここだろうと突撃をしてみると、広い部屋の少し階段を下がった所に海水が流れ込んで居て、護岸が丁寧に整備されていた。

 ここはまさか、船舶ドックだったのか・・・

 くそう、此処でも早逃げをされたらしい。

 余りにも悔しいので、そこから外に出て、リバイアサンを召喚して、大津波を発生させて置いた。

 よっぽど運が良い奴で無ければ生きて帰って来る事は出来ないだろ、ふん、私を出し抜いた罰だ、いっぺん死んで見ると良いよ。

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