第301話 進撃の二勇者

        進撃の二勇者

 -MkⅢ-

 電脳化を施した事で、タイカンやボクスの戦い方、カレイラの戦い方までを全て網羅して電脳で解析させ、自分のスタイルを組み込んだ戦い方をはじき出させる事に成功したため、全員との模擬戦を終えたアキヒロは、二周目には見違える程に強くなった。

 ただ、もう一周全員と戦って見ろと言って見たら体力が持たんと言う事で勘弁してやった。

 マダマダだな、鍛えてやらなきゃね。

 運動は基本苦手な私が言うのもなんだと思うけどねw

 まぁ今は身体強化とか駆使して居合い抜き位出来ちゃっては居るけどさw

 そう、基本的に私の身体能力は私自身の身体能力とはほぼ無関係で、身体強化のスキルや、電脳による制御で成り立ってたりしちゃうのだw

 あのなぁって思った人多いでしょう、そりゃそうだw

 でも元々の運動神経が皆無に等しくて日常生活でもどんくさい方だった私がこれだけ動き回れるようになったのは元はと言えば電脳と全身義体が始まりだったので、今の生体の体で同じ事しようと思ったらこの方法しか無かったのよね。

 ま、私の事は置いといて、模擬戦終えたらキースやカイエンと何だか意気投合したっぽくてアキヒロは大浴場に連行されて行った。

 ボクスとタイカンも兄貴が出来たみたいな嬉しそうな顔して着いてったから男子同士仲良くやって欲しい。

 私はお風呂の女子会ね。

 パメラの髪を洗ってあげて、クリスの大分大きくなったお腹を撫でて、湯につかるのを嫌がるオーブを温まるまで頭を押さえて湯に入れて過ごした。

「し、師匠、未だ出ちゃダメにゃ??」

「だぁめ、後100数えなさい。」

「100って幾つにゃ?」

 この脳筋ネコめ、まさか100を数えられないってか?

 今後の修行はお勉強にしてやろう・・・

 っつーか電脳化してあるんだから使い熟せやこの阿保猫。

 スマホの扱いばっかり上手く成りやがってコイツは、ったく!

 サッパリしてフルーツ牛乳飲んで、皆で髪の乾かしっこしながら他愛も無い話をして盛り上がった後、全員ブリッジに集合。

「さすが男子はお風呂早いなぁ、もっとゆっくり浸かって来れば良いのに。」

「イヤぁ、むしろ良くこんなに長く入ってられると思うんだけど?」

 キースに反論をされたが、私は男子が烏の行水なのが意味が判んない。

 こんなに気持ち良いのにねぇ、お風呂。

 どうしてブリッジに来たかって、勿論、現役勇者を騙して酷い仕事やらせようとしたその報いを受けさせるためにどんな風に行動するかって事を纏める作戦会議です。

 って言うかどんな方法でどの程度まで追い込むかって程度で作戦なんて高尚なもんでも無いんだけどねw

 だって私達の戦力だったら、例えばヨル君を嗾けるだけでも王城位潰せるわよねw

 今のヨル君の大きさだと、本気で空中庭園に住まわせて必要時に転移ゲートで呼び出すしか無い位に成って来てるからね、いい加減スパイダーではキャパオーバーになってる。

「よし、そう言う事だから、エリー、剣の刃を潰してくれ、自分で潰そうとしてもナノマシンが勝手に研いでくれるもんだから切れ味が落ちないんだ。」

 つまりは切らずに戦闘力を削いで行って正面から王城に乗り込んで王の自室にまで追い込むと言う事らしい。

「その作戦だと、大概城って隠し通路があって逃げ出せるようになってるから先に潰しとかなきゃいけないじゃん、それは私がするんだろ?どうせ。」

「ああ、まぁそう言う事だ、スマンがお願いできるか?」

「それなら私がサーチして何処に続いてるのかだけ突き止めてやるからマカンヌやカレイラ達にやらせても良いか?こう言うのも経験させといた方が良いと思うぞ?」

「うん、そうだな、エリーが手伝ってくれるならそうした方が良いか、電脳通信とナノマシンナビゲーションで指示してやってくれると嬉しい。」

「その位なら任せておけ、飛空艇用に新しく新調した量子コンピューターのAIの性能の見せ所だ。」

 すると、イーグルAIが反応。

『お任せ下さい、私はこの船のAI、イーグルと申します。 ナノマシンナビゲーションシステムによる敵味方の判別やナノマシンデータリンクの統合管理等は最も得意とする所です。』

「スパイダーのAIと比べて相当流暢な喋り方する様になってるんだな。」

『カイエン様、有難う御座います。

 私の上位には空中庭園で使用されている、植物生体量子コンピューター、”ゆぐどらしる”だけです、流暢な会話が楽しめるのは私とユグドラシルだけです。』

「へぇ、面白いな、エリー、やり過ぎだと思うけど。」

「そう? まぁ、私もやり過ぎとは自覚してるから気にするなカイエン。」

「気にするなと言う方が無理がありそうな発言だったが、エリーだから仕方ないな。

 それじゃさっき決めた段取りで行こう、マカンヌ、カレイラ、ボクス、タイカン、エリーの指示に従ってくれ。」

 4人の電脳へ、位置情報ナノマシンを送って登録する、これをする事でどんなに深い地下に居ても情報を共有出来る。

 登録しなくても普段から何処に居るか位は大概判るけどね、今回は地下道を攻略する流れに成るから念の為の措置って訳。

「さぁ、じゃ、4人は先に、ここが一番近い逃走経路の出口になるみたいだから、ここから突入して脱出口を内側から封鎖してね、ミッションスタート。」

 気合いを入れた4人が無言で降下して行く。

「んじゃ、カイエン、アキヒロの二人は、一旦飛空艇で城の上空すれすれを飛んだ後に門の前に降ろすからそこから突入な、キースは私が今からお前がスマホを使えるように魔力回路構築するから今日はお休み、クリスも大分お腹大きく成って来てるから行かないでくれ、キースの魔力回路が出来たらまずは空間魔法を覚えて貰うからそのつもりでな。」

 先遣隊の4人は、予想を超える速度で地下道を進んでいる。

 大分電脳とナノマシンデータリンクを使いこなせる様になってきた証拠だ。

 飛空艇を超低空飛行で王城の屋根擦れ擦れを掠める様に飛ばし、正門前にカイエンとアキヒロの二勇者を・・・降ろそうと思ったらアイツら甲板から飛び降りやがった、おいおい、いくら身体強化教えたっつっても未だ素人レベルだろうに、大丈夫か?アキヒロ・・・

 まぁ、勇者の称号の適応力は優秀だから大丈夫なんだろうけどな。

 飛空艇を擦れ擦れで飛ばしたお陰で、アリの巣をつついたように兵士達がワラワラと飛び出して来る、それをカイエンとアキヒロはバタバタと倒しつつ突き進む。

 それを尻目に、ホバリングさせつつ、キースの手術に取り掛かるのだった。

 それにしても流石勇者だな、あいつら、アキヒロも私達の誰にも敵わなかろうとも一般兵が何人束で掛かって来ても余裕が有りそうだ。

 この戦闘はナノマシンで録画して後でじっくり見るとしよう。

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