第300話 勇者の弟子

       勇者の弟子

 ‐MkⅢ‐

 アホの子の勇者君は、前世の記憶が中学生止まりだった事が原因であると判明して少し安心した。

 これからいくらでも教育出来るって事だしね。

 ただ問題は、中二病臭い所が多々見受けられるんだよね、中学生だっただけに? 文字通り中二病っぽいのよ。

 まぁでも、ちょっと改善の兆しが有るので、そこも良しとしよう。

 ソロソロ地上の方の討伐が終わって、討伐証明部位や素材の回収が終わったようなので、カイエンに電脳で今代勇者の事をお知らせしたら、この食堂へ来ると言うので少し待つ事にした。

 暫く、アキヒロが私の中で一番面白い作品が多かった頃の日本人だと判ったので、アニメ談議に花を咲かせて居ると、回収を終えた全員が戻って来たので、スパイダーを一旦回収する為に飛空艇を停泊させてカーゴベイを開けるように、飛空艇の量子コンピューターAIに指示を出した私は、食後のデザートに、こっちに来てからはやっと完成に至ったとっておきの新作、チョコレートパフェを注文した。

 出て来たパフェを見たアキヒロがテンション爆上がりで、「な!お前!何でこんなもんがこっちの世界に有るんだよ! 俺も食って良いか?!」

 ってむっちゃくちゃ感激してくれた。

 更に一口食って感激のあまり涙流してたな、男の子が人前ですぐに涙流しちゃダメでしょうにw

 シャワーを浴びてから食堂へと集まって来た皆に、アキヒロを紹介する。

「おかえりー、紹介しよう、この子が君らを陥れ損ねた、今代勇者のアキヒロ君だ。」

「ちょ!エリーさんその紹介は無いじゃ無いっすか、確かにそうだけど、騙されてたんスから勘弁して下さいよ~。」

「だ、そうだ。」

「ほう、今代の勇者は君なのか。 初めましてだな、先代勇者のカイエンだ。」

「先代さん、お若いじゃ無いっすか、何で勇者降りたんっすか?」

「ああ、カイエンはこう見えて既にアラフォーのオッサンだ、今は全身義体だからな、若く消える様にしといてやっただけだ。」

「全身義体!? エリーさん、本当に全身義体ってこんなに質感とか凄い事に成ってんすか?」

「驚いたか? こっちに来てから良い素材が見つかったもんでな、ここ迄生体と区別が付かない程の出来に成ったんだ。」

「余りじろじろ見られるのは好かないのだが?」

「ああ、御免なさい、つい。」

「ちなみに、彼女がカイエンの奥さんでマカンヌだ。」

「に、忍者、ああいや、くノ一っすか。 この人も奥さんって割にお若いから、全身義体?」

「ああ、そうだ。」

「よろしくね、あっ君。」

「あ、あっくんて・・・じゃ、じゃあ、この人も全身義体っすか?」

 カレイラを指差して”あっ君(笑)”が話を逸らすように矛先を変えた。

「残念ながらそのお人形さんみたいな美少女はカイエンとマカンヌの長女でカレイラ、美人だろ?」

 あっ君(笑)が少し顔を俯かせたので良く観察してみると、少し頬が高揚して居た。

「ん?何だ?赤くなっちゃって、一目惚れ?w」

 ここはもはや私の中で弄られキャラと化したあっ君(笑)はこういう扱いだ。

 そしてあっ君笑的には私に揶揄われるのは嫌では無いっぽい反応なのでこのスタイルに決定だ。

「へぇ~、勇者なんだぁ、お父さんの次の人の強さ、興味あるなぁ、手合わせお願いしても良いかな?」

「へ? 手合わせ? あ、ああ、良いっすよ。」

「ほう、面白いな、カレイラ、アキヒロ、死なない低度だったら治してやるから思いっ切りやって見な、甲板で模擬戦やって良いぞ、真剣でな。」

 ---

 カレイラとアキヒロの模擬戦(っつーか"ほぼガチの斬り合い")が始まる。

「怪我しない内に辞めといた方が良いぜ、お嬢さん。」

「大丈夫ですよ、私そんなに弱くありませんから。」

 二人が剣を抜く。

 アキヒロの剣は、重さで強引に叩き割るタイプの、基本的な洋剣、グラディウスって言う奴?のような形状をしている。

 大して、カレイラの剣は、アニメ等でよく見る、エクスカリバーをモデルにした物なので、普通に片手で振れるように細身になって居るロングソードと言うタイプだ。

 その時点で、グラディウスを片手で振れるアキヒロは勝ったと高を括って居ただろう。

 だが次の瞬間、その優位性が消えうせたのだった。

 そう、カレイラは、本気で討ちあって良いと言われたので、魔法剣”フレイムブレード”

 カレイラの剣は只の剣では無い、ベースがアダマンタイトで表面がミスリルと言う、軽い、良く切れる、魔法の乗りが良いと三拍子揃ってるので、こんな芸当をしても平気だし、グラディウス如きでブッ叩かれた所で折れる事も無い。

 むしろ異様な軽さのお陰で普通の人が扱おうとすると逆に危険だったり?

 さて、アキヒロはこの後どうするのかな?っと。

「くそぉ~、そんな見た目に騙されないぞっ!」

 あ、行った・・・

 両手で上段から振り下ろされたグラディウスを、斜に構えたカレイラが炎の剣で受ける。

 次の瞬間、グラディウスはあっさりと、炎の剣によって真っ二つになってしまったのだ。

「参りました・・・」

 悲しそうな眼をして自分の剣を見つめたアキヒロが、ホロリと涙を一粒流して降参したのだった。

 うん、悪いことしたとは思ってねぇぞ、手合わせしたかったのはカレイラだし、乗ったのお前だもんな、アキヒロ。

「んじゃ勝負あったって事で良いかね? カレイラはちょっぴりやり過ぎた?かな?」

「エリーさ~ん、何でこの子こんなツエーの? 俺一応勇者なんだけど?」

「カレイラはさ、魔法剣士なんだわ。 私が作った魔法を行使して魔法剣に進化させちゃった第一人者って訳だ、そりゃつえぇわな。」

「つまり、魔法剣の始祖って事っすか?」

「ま、そう言うこったね、それに彼女の剣は普通の剣じゃ無いからな。」

「もしかしてミスリルっすか?」

「表面はな、中の芯の部分にアダマンタイト使ったしな。」

「剣打ったのエリーさんなんですね?早く言って下さいよ。」

「泣くな泣くな、後でお前に一振り作ってヤッからな、お前好みの重い奴で良いか?」

「はい、なら、良いです。」

 うん、まだまだコイツの精神年齢は中学生から進歩しとらんな、やっぱカイエンに弟子入りさせる計画で良いだろう。

 使う獲物もグラディウス同士だから丁度良い師弟になるだろ。

 しかし、今代前代両方ともグラディウスって何かの偶然?それともこれってまさかとは思うんだけど、任命された時に貰うもんだったり?

 後でカイエンに聞いたら、勇者に任命された時に頂いた物で合ってた・・・お二人とも物持ちが良いこって・・・

「さて、カイエンの娘の強さが判ったって事で、カイエンの強さも判って貰えたと思うんだ、そこで提案。」

「なんすか? エリーさん。」

「カイエンに弟子入りして見ろ、お前。」

「は?何言ってんの?」

「カイエンに弟子入りしちゃえっつってんの、カレイラの事ちょっと可愛いし良いかななんて思ったから模擬戦承諾したんだろ? なぁ。」

 アキヒロに耳打ちしてやったら、又少し顔が赤くなった、判り易いから弄り甲斐あるな、こいつ。

 そして、アキヒロはカイエンに弟子入りする事に成った、先代勇者が居る状況ってそうそう無いから良い師弟になったんじゃ無いかと思うんだがどうだろう。

 っつーか、アキヒロよ、カレイラの心を射止めるのは大変だからな、精々頑張りたまえw

 ・・・・・・おもろwww

 カイエンに弟子入りするに当たって、先ず剣を作り直してやって、更にせめて電脳化してやらないとカイエンの速度には付いていけないどころか見る事も敵わないだろうから、電脳化決定。

 そして全員会議の結果、勇者騙してこんなひでぇ仕事させようとした王国を弾劾してやろうって事に成ったので、王城直撃が決定した。

 王国の名前はリーディアと言うらしい。

 王の名はウラハッデと言うのだそうだ。

 変な名前だな・・・ネタ切れ?w

 で、今日はもう日が落ちそうだし寒くなって来たのでこのまま飛空艇で一泊。

 序でなので、飛空艇のデッキ上で、今度は木剣で取り敢えず模擬戦三昧したんだけど、なんやかんや言ってアキヒロは誰にも勝てなかった。

 これから頑張って強く成ってくれたまえ。

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