第296話 レクサス帝国首都、プラド

       レクサス帝国首都、プラド

 ‐MkⅢ‐

 カイエン一家とキース、クリス、オーブを飛空艇に押し込んで、私は寄り道を決め込んで居た。

 たまには近くまで来たんだから様子見でもしてやろうと言う算段で、レクサスの首都を目指して居たのだ。

 本体が一撃で消し飛ばして作り直したお城を湛えた超近代都市だ。

 だってな、電力が有るんだぜ?ここには。

 当然ながら、電力使わねぇ訳は無いわな、そろそろ日が落ちて来たこの時刻を持ってして、煌々と明りが見える。

 うん、良い具合に電気文明が根付き始めて居るよね。

 飛空艇をお城の庭に降ろそうかと思って見たんだけど、飛空艇大きく作り過ぎた様で、入りきらん事に気が付いた私は、しゃーねぇからまたしても街門前に降ろして停泊させる。

 大騒ぎになってアリの巣をつついたように出て来る守衛たち。そこに、私が飛空艇から降り立ち、挨拶をして見る事にした。

「ようっ!」

「ようっ! じゃありませんよ!驚かさんで下さい、エリー様!」

 私の挨拶に答えたのは、プリウス君に紹介された事があった、彼の警護を賜って居た騎士団長で、シーポッドだ。

「あれ?何であんた警備してんの?」

「いえ、たまたまこっちに出向してたんですよ、衛兵達の武力がね、今はまだ民間人だった者達から腕っぷしの強い者を登用して出来た新部隊ではありますから、こいつら鍛えるのに駆り出されてるっつー訳です。」

「成程、左遷された訳じゃ無かったのね?」

「ヒドっ! 以前から毒舌な方だとは思っては居ましたがそれは酷いっすよ!」

「あははは、冗談だから怒んないでね~。

 所で何か、軍事力増強してるっぽい噂を耳にしたんだけど、又どっかに攻め込む気じゃ無いわよね?」

「そんな事しませんよ、エリー様のあの途轍もない魔法を見せつけられて貴女の嫌う戦争なんかする訳無いじゃ無いですか、ただ、この所北の大帝国、アルファードが何やらきな臭い動きが有ると言うので警戒して居るんです。」

「成程、もしもあの大国が攻めて来るとしたら疲弊しているこの国と言う訳ね。」

「まぁ、そう言う事です、ですから決してエリー様に反旗を翻そうなんて考えたりしてるなんて断じてありませんのでご安心を。」

「しかしこの国はやたらと大変よね、プリウス君が戻って来たら元皇帝が攻め込んで来てたらしいじゃないのさ。」

「もうご存じでしたか、現皇帝プリウス様のお陰で事無きは得ましたが、未だに、元皇妃と第一皇女殿下は捕まって居りませんので、恐らくはかの国に身を寄せているのでは無いかと。」

「そうか、何なら力を貸すわよ。 困ったら呼んでね。」

 そう言って、緊急信号電波発生魔道具を、取説付けて渡して置く事にした。

 門の前で、カイエン達とは別行動、パメラちゃんもマカンヌに預け、私は一人プリウス君に会いに行く事に。

「で、所でプリウス君は居るの?」

「はい、現在食事中では無いかと思われますが、エリー様であればいつでも通して良いと言われて居りますので、お連れ致します。」

 シーポッドに連れられてダイニングルームへと案内された。

 すると何やら戸の前に立って居る衛兵と二三やり取りをして、内一人が中へ。

 暫くして出て来ると、戸が大きく開けられた。

「エリー様、どうぞお通り下さい。」

 ダイニングへと入って行くと、プリウス君は席を立ち上がって出迎えてくれた。

「エリー、ようこそ来てくれた。

 ささ、遠慮は要らぬ、此方へ来て座ってくれたまえ。」

 プリウス君ったら皇帝と言う立場を忘れたかと思うほどの勢いで出て来て自ら椅子を引いてくれてるんですが・・・それってどうなの?

「よっ! 元気だった?

 色々大変みたいね。」

「ええ、まぁ、ですが自分で選んだ道ですから。」

「そ? 何ならこの国には既に電力が有る事だし、軍需工場とか作ってあげても良いわよ?

 但し防衛の為の、ね。」

「ははは、又滅ぼされたくは無いですから、此方から何処かへ攻め入るなんて考えてはいませんよ、エリーさんのお陰でこの国の食糧事情もこの数カ月で日の目を見るように変化しましたし、此方から何処かに攻め込む程の事態には成りませんよ。」

 プラトを、精霊魔法無しで召喚出来る泉を設置したお陰で、この国の農産物は大きく収穫量を増やして居た。

 実際に以前来た時は一面の荒野だった街壁の外も、草原へと変貌している。

 この真冬でも常緑芝のようなものが茂って居る程だ。

 確かにこれ程ならば食糧事情も変わって来るだろう。

 でもね、食うに困ったから戦争って言うのも短絡的に過ぎるのよ、戦争ってのはそれだけ食料も必要になるのだから。

 まぁ、圧倒的な武力が有ればそれも解消できる可能性は有るけどね、私みたいに。

 まぁそれ以前で、プリウス君ならば武力の使い道を間違ったりはしないんじゃ無いかとそんな気がするけどね。

「まぁ良いわ、折角だからプリウス君にも電脳化をお勧めするわよ。 今日はその為に来たのだから。」

「電脳化、ですか、以前にも言われましたけど、大層な手術が必要と言う事だったのでは? 僕にはそんな悠長にしている時間が無いんですよ。」

「ふふ、それがねぇ、ナノマシンと魔素が起こした特別な変化のお陰で、手術も無しで電脳化が可能になったのよ、ナノマシンを貴方にちょっと侵入させるだけで出来るわ。」

「危険は無いんですか?」

「全くないわよ、貴方がエルフでは無い限りはね。」

「エルフだとどうしてだめなんです?」

「エルフ族は、金属に対する酷く重症なアレルギーを持って居るの、だから電脳化をして脳内に金属を仕込むなんて言う事をしようものなら一瞬であの世行になってしまうわ。

 例えばエルフである場合、鉄製の剣を触っただけでもアレルギー反応でアナフィラキシーショックを起こしかねない、電脳なんて脳に電極を取り付けるような事したら一発で死ぬわよね。」

「あんまり理解出来ては居ないが、言いたい事はだいたい分かった、要するに鉄を触って酷い拒絶反応が起こる様なら電脳化は無理って事だろう?」

「まぁそうではある、エルフ以外の拒絶反応ならば抑えようも有るからエルフ限定で電脳化が出来ないよ言う事でもあるけどね。」

「エルフだけなんですか? ハイエルフは?」

「そうね、貴方は未だ知らないでしょう、私はハイエルフに進化してるの、でも、拒絶反応は起きない。

 拒絶反応の起きる原因も既に突き止めて居るわ、エルフだけの特殊な遺伝子による物なの。」

「ハイエルフとエルフの違いは?」

「それも難しい話になるのだけれど、遺伝子構造の中に、テロメアと言う部位があるのだけれど、エルフにはそれが存在し無い事がわかったの。

 でもハイエルフの遺伝子にはそれが有るの。

 つまりエルフの金属に対する拒絶反応はテロメアに起因する事が判ったのよ。って事で、エルフ以外ならば大丈夫だから安心して電脳化を受け入れると良いわよ?」

「電脳化する利点は?」

「知識を提供出来る、ナノマシンに対する権限が提供出来る、私や他の電脳化した者との電脳通信でいつでも連絡が瞬時に取れる。

 ステータス表示も可能、クリムゾンスパイダーやドラグライダーなどの遠隔操作も可能よ。」

「逆に問題等が起こる可能性は?」

「ん~、そうねぇ、私としてはあまり問題は無いと思うけれど、相手によってはこちらの時間を考えずに電脳通信で連絡を入れてくる可能性が有るって程度かしらね。」

「例えばどのような?」

「会議中に、とか、睡眠中って感じかな?」

「エリーとしては問題無いと言う理由は?」

「電脳化すれば並列思考も可能だからね、会議中に違う事の無いよう話してても問題無く全部対応が利くって事、睡眠中は、私の場合は脳を眠らせても行動できる設定をしてあるから大丈夫なんだけど、睡眠をしっかりとると言うのならば夜間の通信の受信設定で保留にさせて置くと言う手もあるわよ。」

 そう言った設定も出来るからね、問題無いでしょ。

「判った、何の危険も無いのであれば、お願いしよう。」

「判ったわ、んじゃ始めました。」

「え?もう?」

「うん、もう終わるわよ?」

「え?何時の間に?」

「はい、終了、今からプリウス君用に色んな知識インストールしてあげるけど、どんなのが良いかなぁ?

 先ずは経済学でしょう、それと、医療知識でしょう、折角医療知識インストールするなら闇魔法と光魔法のセットでしょ?

 機械工学に人間工学、自分で直せるようにスパイダーの設計図。

 あ、そうだ、戦争が起きそうっつってたから戦術、兵法、こんな所かな?」

 すぐさまアクセスして情報をアップロード。

 アップロード中にプリウス君が訪ねて来る。

「エリー、しまない、我の我儘なのは承知して居るんだが、この電脳化を他者に施すには如何したら良い?」

「そうだね、プリウス君は一応王族だからその位の権限があっても良いわね。

 んじゃ、電脳化専用のナノマシンをプリウス君の体内に常駐させて、いつでも他人に電脳化が出来るようにして置くね。」

「ありがとう、それと・・・」

「何が言いたいのか判っちゃったわよ、料理人に電脳化して私のレシピ教えたり、農業技術を人に教えたりに使いたいって事ね。」

「流石だ、その通りだよ。

 それと、電気の活用方法をもっと知りたいのでその手の知識も頼みたいのだが。」

「良いわよ、少し膨大なデータ量になるけど頑張って受け取ってね。

 そろそろ戦術系がインストール終ってるんじゃ無いかな?」

「お、本当だ、凄いぞ、こんなに多くの戦術が有るのか、成程。」

「半分以上は使えないけどな、今は。

 その内色んな兵器が増えれば使えるような戦術も増えるだろ。」

「いやいや、驚く戦術が沢山有るでは無いか、それに戦術だけじゃない、今の技術でも新しく作れそうな兵科がこれ程有るとは。」

「まぁ、これか経済学が一番データ量少ないんだけどな。

 医療技術なんかすんごいよ、経済と戦術合わせても医療の半分以下だからな。」

 暫く、他愛もない世間話や、私の旅路の話を聞かれて話をして過ごした。

 つい、アップロード終ってるのに長話に成ったけどね、旅の話なんか聞かれるもんでつい、ね。

「今日は城に是非泊まって行かれよ、エリー。」

 3時間以上も喋ってしまって居たので、もう22時を回って居た。

「うん、有り難いんだが残念、実は飛空艇を外に停泊して居るんだ、それと、私の弟子やあの元勇者のパーティー達も一緒なんだ。」

「そうか、それは残念だ。

 では朝食を用意させておくので是非朝もう一度来城してくれぬか?」

「みんな揃ってても構わないなら。」

「ああ、判った、そうしよう、何人だ?」

「そうね、カイエン、マカンヌ、カレイラ、タイカン、ボクス、パメラ、キース、クリス、オーブ、私・・・10人も居たのか、気にして無かったから数えて無かったっ!

 あ、でもパメラは未だ幼児だからそんなにたくさん食べないわよ。」

「判った、10名分しっかり用意させよう。」

「ああ、それとね・・・あ、いやこれは言わんとこう。

 んじゃ明日、朝に。」

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