第295話 短話:ベアトリクス::進化への施術
短話:ベアトリクス
-山田・ベアトリクス-
先日、私の大親友にして大恩人の、エリーに再会出来た。
そうめんが食べられるようになったことも嬉しかったけど、大恩人の彼女に私は返し切れない恩が未だに沢山有る為、再会出来た事が何よりも嬉しかった。
これから彼女の為に、色々返していけると思った。だけど一つ、私と彼女の間には、とんでもない問題が存在してしまって居た。
私は既におばさんになってしまって居たのに、彼女は何処から見ても未だに少女のままだったのだ。
なので、少しでも彼女の近くに居たいと思って、こんな冗談を言って見た。
「結婚して!」
すると、流石の彼女は、私のこの冗談の裏の意味を悟ってくれた反応をしてくれた。
私をハイエルフへと昇華してくれる事に成りそうだ。
ちなみに私は、虐められて居たのを彼女に助けられてから、親友となっただけでは無く、彼女を教祖とした信者の様になっている、すっかり陶酔してしまって居ると言っても過言では無かった。
そんな彼女が、ある日突如私の前から姿を消した。
あの時の喪失感は途轍もなかったが、私への試練と思って、頑張る事にしたのだ。
いつか再会出来る事を願って。
私は、エリーの行方を探す為に、警察官になった。
彼女の失踪の足取りは割とすぐに掴む事が出来た。
彼女は、自ら家を出て、当ても無く東京を目指していた。
関西圏に住んで居たのだから、東京を目指したなんてとんでもない行動力だ。
そして彼女は、東京では無く、もっと居住者の多い神奈川県を選んだ。
神奈川県横浜市、程良く都会で、高級住宅街等を多く抱えたベッドタウンでもある。
そして、そこで彼女は、とある研究者のロリコンのおっさんによって、保護・・・されたのだ。
それこそ、彼女がその後、単身渡米に至るまでの凡そ1年半、想像を絶する覚悟と苦痛だったと思う。
メンサ会員にも成ろうかと言うレベルの頭脳の持ち主によって保護、軟禁生活を送った彼女は、慰み者にされ汚される代わりにそこで途轍もない知識を手に入れた。
そして私の大切な友人であり恩人の彼女、エリーは、中学生の年齢にして、大国の誇る某工科大学への入学試験を全教科首席で合格、秘かにデイトレードで稼いで居た資金で渡米したのだった。
渡米するまではそれは辛かった事だろうと思う、想像しただけで涙が出る。
私の調べだと、渡米した彼女は、即頭角を現した。
僅か2年で超難関の工科大学の卒業論文を首席でクリアし、そのまま大学院に入り、同時に研究員と、教員に採用された。
その後半年で研究所の副主任となる。
そしてそこから、彼女は、電脳、義体の研究を始める。
私の自慢の大親友、エリーの本領が発揮され始める。
そして私は、ついに見つけた彼女に会いに行く為に、休暇を取り空港へと向かおうと、アパートの扉を開けてトランクケースを外へ出そうとして振り返った瞬間、トランクケースを見失ったのだ。
気付くとそこは、草原だったのだ。
やっと会えると思った矢先の空間転移。
私は絶望した・・・もう会う事は叶わないと思って居た。
だけど、奇跡の再会を果たせたのだ、嬉しかった、これ以上幸せな事は無い。
もう二度と、彼女から離れない、私の大恩人、自慢の親友、彼女のやろうとする事は全面的に協力したいと思って居る。
そして私は、エリーの提案を受け入れた、ハイエルフへと、昇華する道を選んだ。
だけど今は、私の仲間達への説明が必要だ。
彼女のやろうとしているインフラの整備は意図を理解した、そして私達の為の腹案にも賛同出来る、ならば、その腹案は私達にとってメリットが有る事なのだ、そしてその上で、そのインフラ整備の一端を私達の団体でも協力出来れば良いと思った。
ん? 私が出張って来た意味が既に変わって来てるって? ンな事知らんがな。
私はエリーと再会出来たらそれ以上に何も要らんのやって!
こうなったらこの国のリニア事業に一枚どころか二枚も三枚も噛んだるわ!
「ただいま。」
「おお、姉さん、如何でしたか?」
「今回の事業へ、全面的に支援、バックアップする事に成ったわ、説明をするから全員集めて。」
近くに停車駅が出来ない事で集まった反対派、総勢340名、全員に、支線の構築のプランを発表、我々へのインフラ事業への参加要請についての全貌を、一晩かけて、全て説明し、ほぼ満場一致で賛成へと仕向ける事に成功したのだった。
エリー仕込みの話術が役に立ったわ、電脳さまさまやわ、うん。
短話:進化への施術
既に反対派抜は瓦解し、エリーからの支線のインフラ整備プランの計画書を待つばかりなのだが、私はその計画書を受け取りに行く序でにハイエルフへと昇華する為の施術を受ける事を、正直に息子たちと、元団員達に正直に告白をした。
ま、当然みんな心配するわよね。
幾度と無く止められたんだけど、エリーからのお迎えの飛空艇が来た時点で全員絶句。
まぁそうよね、あんなもん初めて見るわよねw
エリちゃんがお迎えに寄こしたアンドロイドの水無月ちゃんの美少女ぶりにうちの次男が一緒に行くと聞かず、連れて行く事に・・・
ちなみに私がコッチ来てから結婚した旦那の名字が石原だったので、私の知って居る限りの知識を使って付けた名前は長男が慎太郎で次男のこの子は裕次郎だったりする。
そして三番目の娘はさとみにしてみたんだけど、「それってどうなの?」ってエリーなら絶対に突っ込んでくれると思う。
多分なんか間違ってるし、そこが突っ込み処かな?
それにしても、裕次郎の可愛い子に惹かれる気持ちは解らんくは無いけど、それ、生きた人間とちゃうんやけどなぁ・・・
言わばあんたがそれと恋愛出来るとしたら、ダッチワイフ相手にすんのと変わらんのやけどなぁ。
マジ辞めてな?
まぁ、今の私がどうこう言っても反抗期のあの子には通用せんやろから、エリちゃんに相談するしか無いわな。
って悩んでいる間に、水無月ちゃんの操縦する飛空艇はえりちゃん家に到着した。
「お帰りテディー、それと、ようこそいらっしゃい、裕次郎君。」
「あのさ、エリちゃん、私未だ紹介して無いのに何で知ってるのよ、うちの息子の名前・・・」
「当然でしょう? 飛空艇内で水無月にこれでもかっつー位に求愛してたわよ?」
「はぁ、この子はもう、惚れっぽすぎて困るわぁ。」
「か・・・かわいい・・・」
ん? なんか嫌な予感・・・
「あの、俺裕次郎って言うんだ! 良かったら俺と付き合ってくれよ!」
エリちゃんに直線的に求愛すんなお前は!
「あははは~、可愛い子だねぇ、テディー? こんなにまっすぐ好きだって言われたのは久しぶりだよ~。 裕次郎君、そのまっすぐさは魅力的で良いんだけどね、私は君のお母さんの同級生で、735歳のおばあちゃんやで?」
「は?そんな訳無いだろ、どう見ても君は俺より1つか2つくらい年下だろ?」
エリちゃんの手を握って何言ってんだこのバカ息子は・・・
「あのな、君、そんな事言ってると、君のお母さんがハイエルフに成ったら大混乱するんじゃねぇか?
私はハイエルフだから、長く生きても歳取らないんだぞ?
君のお母さんが若くなった姿に惚れちゃっても知らんぞ?」
「エリちゃん、その位にしといて、この子より私の精神力が持たん・・・」
「そ? まぁ良いわ、テディーが調整層に入ってる間、この子には私の助手して貰う事にするわ、楽しそうな子だし。」
そうだった、エリちゃんの周囲には、アイン、ツヴァイ、ティア―、ネオトライ、水無月、文月、葉月とかの美女アンドロイドだらけだった、やっぱこのおバカ連れて来るんじゃ無かったぁ~~!
もう弄り倒されて揶揄われておバカさらけ出しまくる未来しか見えねぇYo!
我が息子ながら恥ずかしいからやめてぇぇぇぇ~~~!!!
そう言えば、何でトライちゃんだけネオなんだろう・・・
今度聞いて見よう。
「あ、それとね、私の弟子の男の子紹介するわね?
元、フォード王国第二王子のトーラス君です。」
「ベアトリクスさんですね、初めまして、トーラス・フォードと申します。
この度は僕の研究成果を試して頂けるそうで、有難う御座います。」
「え?どう言う事?エリちゃん。」
「ああ、トーラス君がさ、京都にまで出張ってワザワザ、睡蓮を摘んで来てくれたのよ、その睡蓮ってのがね、アンブローシャっつーすっごく特殊な睡蓮でさぁ、それを私が教えた技術で錬成させて完成させたのよ、エリクサーって奴、別名アクアヴィータ、今回貴女の入る調整層のカプセル内に満たす、言わばLCLみたいな液ね。
効果は持続的な回復と蘇生、更に痛みの軽減等よ。」
何だか突拍子もない薬液が出来てたらしいですが何か?
ってか、LCLって・・・エヴァン〇リオンか何かかいっ!
もはやツッコミどころ以外何も見当たらんよ、マジで。
「ああ・・・そ、っそう・・・エリちゃん、後で小一時間位覚悟しといて?」
「イヤです、突っ込み入れるなら今にしてw」
コイツぜって―楽しんでるな、私のこの反応・・・
エリちゃんのこう言う楽しそうな姿見るのも久しぶりだから、まぁ良いか・・・ハァ。
「裕~! あんまりエリちゃんやアインちゃんツヴァイちゃん達に迷惑かけないでよ~?」
そこに偶々出て来たアインちゃんに速攻で求愛を始める裕次郎、此処まで来ると我が息子ながら呆れを通り越して違う意味で頼もしくなるわ、ほんとにもう、やっぱ連れて来るんじゃ無かった。
「さ、ンじゃそろそろテディーはこっちね。
トーラス、テディーを丁重にエスコートしてね。」
「はい、師匠。
では、此方へどうぞ、ベアトリクス様。」
押入れのような引き戸を開けると、エレベーターが出て来た。
エレベーターに乗り込むと、地下4階まで下がる。
扉が開くと、そこにはいかにもな感じの未来的なラボが有る、いつも以上にエリちゃんのとんでもない加減に呆れるわ驚くわ、まぁ電脳がこんなもんだとは知って居たのでそこまで驚きはしないのだけれど。
「では、ベアトリクス様、服を脱いで此方のスーツに着替えて下さい。 そちらにフィッティングルームを架設してありますので。」
渡されたのは、何だか全身タイツのような薄手の物だった、ある意味これってすっごくエロい気が・・・
「全裸で着ないと駄目なの?」
「はい、下着はご遠慮ください、全身の細胞を改造する訳なので、不必要な物は着用しないで下さい。」
まぁしゃぁねぇか、こんなオバチャンじゃ裸で入れと言われたとしても今更だわね。
着替えて見ると、思ってた以上に薄手で、透けて見えたりしないのだけがせめてもの救いと言う感じだ。
「ん、着替えたね、テディー。
んじゃ今度はこれを付けて貰うね。」
そう言ってエリちゃんは、私のこめかみや、顎の下なんかに電極を付けて行く。
「電脳でも観測出来ない事は無いんだけどね、一応誤差とか在っても困るから念の為のバイタルチェッカーを付けさせて貰うね~。」
「ねえ、エリちゃん、この全身タイツみたいの、逆にエロい気がするんだけど付けて無いとダメ?」
「ダメ、一応これもバイタルチェックの機器の一つだし、それに進化して出て来る時にガッツリ体型も若返るのに、その時全裸じゃアレでしょう?トーラス君の目の毒だわw」
成程、ある意味納得だった。
でも絶対半分位は楽しんでるね、エリちゃん・・・
そのまま5分程、一通りの段階的な説明を受けて、調整層に入る事に成った。
「ああそうそう、最後に、調整層の中には、アクアヴィータを満たすんだけど、ちゃんと呼吸は出来るから安心してね。
初めはビビるかも知れないけれど、肺の中を満たしちゃって問題無いから。」
「そんな簡単そうに言うな~!」
「まぁ、思い切ってやって見ればわかるわよ、羊水に浸かってる赤ん坊の気持ちだからさ。」
そう言うとエリちゃんは、私が入ったカプセルの蓋を閉めた。
そして、液体がカプセルに流れ込んできた・・・それはついに私の口元に迫り。
溺れる・・・くるし・・・止めて居た息が続かずに遂には居の中に液体が流れ込む、が・・・むしろ苦しくないどころか、とても心地が良かった。
カプセル越しにエリちゃんの声がかすかに聞こえる。
「どう?大丈夫でしょう? その中に居る限りお腹がすく事も無いし、時間掛かるから、寝てて頂戴ね。」
私は軽く頷いた後、そっと目を閉じる事にした。
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