第292話 ひょんな事から同窓会

       ひょんな事から同窓会

 -MkⅣ-

 小中学校時代の友達だったベアトちゃんと、凡そ720年位ぶりに再会した私は、懐かしさのあまり感情が爆発したように、涙が止まらなかった。

 でも、彼女からしたら26年ぶり位になるのかな?

 この年代誤差のジレンマは如何ともし難いけれど、私は家を出た後の事を延々と語り始めた。

 本体じゃ無いなんてクレームっは受け付けません、だって同一存在である事には変わりないんだから良いじゃん。

「ねえ、エリちゃん、私の事ベアトってずっと呼んでるけど、折角付けてくれた徒名で呼んでよ、もう、私の方がおばちゃんに成っちゃったからって他人行儀話にしてぇ~。」

 そうだ、彼女には私が付けた徒名があったのだ。

 ベアトリクス→ベアト→ベア、熊って言うと可愛らしい物に成れば限られてくる、プーさんかテディーだろう。

 と言う事で、テディーと呼んで居たのだ。

「ああ、そうだよね、忘れて無いわよ、テディー。」

「ああ、良いなぁ、エリちゃんはあの頃とあんまり変わんない容姿で、私はすっかりおばちゃんに成っちゃったわ。」

「そんな事無いって、私は貴女が転移してしまった後、全身義体を開発して自分で被験体に成って、機械の体で700年以上生き続けて宇宙時代を作ったんだよ、もうおばあちゃんです。」

「ちょ、ちょっと待って、いきなりトンデモナイ常識破りな情報ぶっこまないでくれないかな?・・・

 脳の処理が追い付かないんですけど。」

「ははは、まぁそうよね、判り易くなると思うからさ、電脳化して見ない?テディー。」

「電脳化? って、脳に何か埋め込むとかそう言う事?」

「まぁ、一応そう言う事に成るんだけど、手術とか要らないのよ。 こっちで魔素に関して色々調べて利用した結果、私の一番の得意分野のナノマシンの進化が出来たからね。」

「ナノマシンって、あのナノマシン?」

「うんそう、でも私のナノマシンは元々、人工生体ナノマシンってジャンルだから普通のナノマシンよりもずっと高性能だったのよ、それがこっちの世界に来て進化したのよ。」

「今の話も何言ってるのか半分以上判んないわ。

 それに、さっきの魔素って何?

 こっちの世界って、元の世界に無い変な要素があったの?」

「そこからかぁ、うん、こっちには、私がエーテルと名付けた素粒子が存在してるの、それが二つ合わさった物を魔素、4つ合わさった物がマナと名付けたのよ。

 で、通常そこいらに存在して居るのが魔素って状態になる。

 この魔素を取り込んだナノマシンが、新たなステージにクラスアップした、と言うか・・・」

「やらかしちゃった訳ね・・・」

「ま、まぁ、そうとも、言うかな?」

「変わって無いわね、あんた・・・」

「ひ、人は変わらないもんよ?」

「イヤ少しくらい成長しなさいよ。」

「うう、オカンみたいになった・・・テディーがオカンに成っちゃった。」

「そりゃ歳とったからねぇ。」

「人は変わるもんだわね~。」

「あんたさっきと言ってること逆よ、それ。」

 思わず二人で顔を見合わせてプッと噴き出して笑った。

「でもまぁ、エリちゃんが大丈夫と言うならきっと大丈夫なんだろうな、電脳化、して貰おうかな?」

「オッケー、じゃあ行くよ、大気中の電脳化ナノマシンをっと・・・」

「かっるぅ~っ。 そのノリも変わんないわよね~、アンタ。」

「だから言ったでしょう?人はそうそう変わらないんだって。」

「まぁ、本質は変わって無いんだろうな、私も。」

「だと思うよ、だからこうして、何だか見た目の年齢も実年齢もまるでかけ離れちゃった私達が再会してもこうやってボケ突込み出来るんだよ。」

「ボケ突込みってね・・・わたしゃお笑い芸人ちゃうで?」

「似たようなもんじゃない、私がボケであんたが突っ込み、テディーのツッコみ、これからもイッパイ欲しいわ。 っと、ほい完了。」

「え?もう終わったの?

 どうしたら良いの?これ。」

「そうね、記憶を掘り起こすイメージで、例えば私の作った完全自律型AIの情報を掘り出して見て?」

「え?あ?・・・うっそ、何これ。」

「でしょう?」

「ああ、さっきの会話思い出して見たら今度は言ってる事の意味が全部理解出来ちゃってる、私の知識に無い筈なのに持ってる知識って、変な感覚だけど、判るわ。」

「でしょう、これでテディーにも私が今やってる事の理由も判る筈なんだ。」

「うん、わかっちゃった。

 でも、この付近にもせめて駅作って欲しいわ。 やるんならね。」

「良いよー、但し、少しルートがずれるからさ、浜松迄の各駅停車のリニアでも良いかな?」

「各駅停車でもリニアなんだ? 電車とかって考えは無かった訳?」

「無いわよ、だって私達が中学校に上がる頃にはもう半数以上がリニアだったじゃん。

 私の技術力からの見解だと、線路引いて走らせる電車の方がコスト高いんだから。」

「そうなんだ、本当にそんな未来の人になってたんだね、エリちゃんって。」

「まぁね、で、電脳化した今なら判って貰えると思うんだけど、私は並列存在で本体では無いんだ、同じ私だけれど。」

「うん、わかる、で、わかった上でお願いしても良い?」

「どうぞ?」

「本体のエリちゃんに会わせて貰っても良いかな?」

「良いわよ、今から行こうか。」

 そう言って私は上空を指差した。

 そこには、私がこう成る展開を読んで呼び寄せた飛空艇が浮いて居た。

 -------------

「ねえ、エリちゃん、何この出鱈目な乗り物は・・・」

「何って飛空艇だけど、昔一緒に遊んでたVRMMOにも出て来たでしょう?」

「ええ、出て来たわよ、私も一隻持ってたわよ、内部もそっくりだわよ! でもぉ~~~!」

「実在してるのが信じられない?」

 こくこくと縦に首を振りまくるテディー。

 何時からパンクロッカーに転身したんだと思う程全力である。

 そして、直ぐにこう答えた。

「ほ、欲しい。」

「ですよね~。 取り合えず、私の家に行きましょう、ブリッジに案内するね。」

「ブリッジ! 見たい!行ってみたい! 触りたい~!」

 すっかり中二心が刺激された様子ですね・・・

「兎に角ブリッジに行こう、家に向かわなきゃね。」

 ブリッジへと移動すると、思わぬシンプルさにテディーは驚いている。

「はわわ~、もっとこう、色んな機器が並んでてガチャガチャしてるんだと思ってた~・・・

 スッキリしすぎじゃない?」

「まぁね~、電脳リンクで大概の事はノータッチで指示できるからさぁ。」

「そう言う事なんだね~、電脳化って便利だわね~。」

「でしょう? でも、マニュアル操作も出来るわよ。」

「へぇ~、どうやって動かすのか皆目わかんないけど、それにしても流石の景観ね、ブリッジ正面は全面ガラス張りになってるの?これ。」

「ああ、これ?実はこれ、全部ホログラムなのよ? あまりにも鮮明で判んなかったでしょ? 何なら後ろも全部、こんな風に。」

「え?え?ええ?? これがホログラムなの?嘘でしょう? って、本当に後ろも全部外になった、マジかっ!」

「ふっふっふ、凄いだろ。」

「益々欲しい。 私にも作って~。」

「まぁ兎に角、移動開始するわよ?」

「あ、うん、お願いします。」

「でぇ、お腹空いてるでしょう?ご飯食べながら行こうか。」

「え?今食事が出来るの?」

「うん、食堂に行きましょ。」

 船内移動の転移装置に乗って、食堂へと移動した私達は、手頃な席に着いた。

「ねぇ、このメニューってもしかして全部いつでも食べられるの?」

 注文端末を見たテディーがいちいち驚きの声を上げている。

「そうよ、好きなの注文して良いわよ~。」

「じゃあさ、私コレが良い。」

 やっぱそれに行ったか。

 彼女の大好きだった物、この世界にはまだ存在して居なかった物。

 それは、そうめんだった。

「あ、やっぱそこ行くんだ、寒いのに。

 好きだよねー、テディー、そうめん。」

「そうなのよ、こっちに来て食べられなくなってるからさぁ、もう、むっちゃ感激!」

「じゃあ私は、こっちにしようかな~?」

 私が選んだのは、そうめんをあったかいお出汁で食べる、そう、にゅうめんだ。

「え~、見て無かった、私そっちも食べていい?」

「良いわよ~、好きに食べてね。」

「やりぃ! うわぁ、懐かしいなぁ~。」

 もうすっかり子供に戻ったかのような口調になって居る。

 昔からそうだけど、美味しそうに食べるよね、テディーって。

 でもそうよね、そうめんて、あの細さにするのが大変なんだ。

 幾らこっちの世界にも小麦粉が有ったって、作り方を知らなければ再現のしようが無い、知ってた所でそれに必要な技術力が無ければ再現不可能、その為の膨大な時間も必要と来たもんだ。

 こっちで食べる事が出来なかった訳よね~。

 序でに天ぷら迄注文してるし、テディーったら私の再現したお料理を楽しんでるねぇ~。

 だけどあんまり色々注文してももうすぐ到着するんだけど、家に。

 なんかジャンジャン追加注文してるし、おかげでハコンダーZが4機ともフル稼働してるw

 もはやこの量はフードファイター並かも。

 もはや常軌を逸している。

「ん~! ひょうほひしひ! ひゃいほー! いひへへひょはっひゃー!」

 せめて食べるか喋るかどっちかにして欲しい、多分、いまのは、こうだろう。

 ん~! 超美味しい! 最高! 生きてて良かった~!

 そこ迄喜んで貰えれば再現した甲斐があったと言うものよね。

 すげえ勢いでテディーのお腹に凄まじい量のそうめんと天ぷらが消えていく、凄い、マジでフードファイターやらせたら最強なんじゃね?

 一度わんこ蕎麦何杯食うかやらせて見たくなってきた。

 そんな事している内に家に到着しちゃったんですが。

『MkⅣ、ご苦労様、良くテディー連れて来てくれた、でかした。』

 本体が電脳通信して来た。

「お、本体、今トラクタービーム出すわよ。」

『はいよ、ンじゃ頼むわ。』

 家の庭に出て来た本体とマリイを確認、トラクタービーム照射を開始。

 さて、本体とテディーのご対面と行きますか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る