第291話 MkⅣ、奇跡の再会?
MkⅣ、奇跡の再会?
MkⅣ、奇跡の再会?
-MkⅣ-
遂に私の監督していたエリアの北陸方面エリアが半分までリニア路線が引かれた所だったのだけれど、睦月の担当していた東海方面が静岡で止まって居ると言う報告が入って来たので、様子を見に行く事にした。
確か、江戸城下から相模野を通って西橋本か八王子辺りで一駅作って、その後都留に抜けた後、富士を迂回して静岡側へ回って、裾野方面へと景観を求めて高架を突き進めて一宮を抜けて焼津や掛川を更に突き抜け、浜松迄ノンストップでグルッと半周もの富士の景観を楽しめるロングランエリアにしたはず。
何処で止まってるのだろう。
フェンリルギアで路線に沿って移動をして居ると、裾野手前、御殿場付近で睦月と合流する事に成った。
「何があったのよ、睦月ちゃん。」
「お待ちしておりました、MkⅣ様、少し妨害を受けて居まして。」
「そんなもん蹴散らしちゃえば良いんじゃない?」
「それが、魔物では無いのです、相手が。」
「なんと、人って事? 何だってそんな事に。」
「犯人の声明文が手紙で届いたので、此方をお読み下さい。」
「声明文ねぇ、御大層に・・・」
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反抗声明
日増しに寒さも増し、もう後数日もすれば年の瀬と相成ります中、御壮健の事と存じ上げます。
付きましてはこの度のインフラ整備に対し、不満があり、要求を呑んで頂きたく妨害工作をさせて頂いて居る次第で御座います。
エリア担当者の方には大変不名誉な事と存じ上げますが、総責任者の方と会談の場を設けて頂きたくこの声明文を認めて居ります。
要求が通らない場合、容赦なくこれまでに引いた路線に対し爆破攻撃を行う覚悟に御座います。
どうかご考察の上、ご検討下さいますようお願い申し上げます。
付きましては、来たる12月24日迄に、御胎内温泉迄御越し頂きたく思います。
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何だかやたらと丁寧な割に物騒な内容の声明文、と言うかお手紙だった。
しかも丁寧な癖に急いで書いたらしくて差出人の名前も一切無かった。
まぁ、御胎内温泉って言うのは凄く狭いエリアの温泉だから、多分宿が有る訳でも無いだろうから、恐らく付近に住んで居て、毎日温泉には通って居ると言う所なのだろう。
きっと地域住民以外の人が温泉に入って居れば気付くと言う事なのだろうけど、どうにも乱暴な落し所で今一つ計画性を疑う文章だ。
大雑把っつーかなんつーか、ね。
字の書き方にしても割と雑多な感じなので大柄で字を書けるのが不思議な程の大男を連想するので、温泉に入って待つと言う選択肢はしない方が良さそうだ。
現地へと到着して見ると、予想を裏切って何だか立派な温泉施設には成って居た、旅館こそ併設されては居なかったが。
施設の前で佇んで居ると、そこへ、見目麗しいハーフっぽい女性が現れた。
その女性は、少々驚いたような表情で、こう切り出した。
「あの、もしかしてインフラ整備をされて居る主導者の方・・・ですか?」
「ええ、私がそうだけど、あのお手紙を書かれたのって、まさか貴女なの?」
お互い、相手が厳つい男性だろうと誤解をして居たが、私は女性であるし、あちらもそうだったようだ。
思わずお互いの勘違いにプッと噴き出してしまい、互いの顔を見合わせて一頻り笑ってしまった。
「ああ、もうヤダ、貴女あんな無茶苦茶なお手紙書かれたもんだからテッキリゴツイおっさんが来るもんだと思ってたわよ。」
「私だって、あんな大掛かりなインフラを整備しよう何て無茶苦茶な人数で取り掛かる方だし、てっきり厳ついオッサンかと。」
「しかも、貴女転生者? いや、転移者かしら?」
「ええ、私は、気が付いたらこちらに居たタイプです、転移者?と言うか、感覚的には時空の迷子かしら。
そちらこそ、エルフ? いえ、この存在感は、ハイエルフかしら?」
「ええ、ハイエルフです、そして転生者です。」
「ですよねぇ~、只のハイエルフがインフラ整備しようなんて考えないわよね~。」
「そうよね、インフラ整備なんて言葉、この世界の文化水準で知ってるなんて転移者か転生者だし、あの文体だと、貴女日本人で合ってる?
ちょっと知っている人物に少し似ている気がするけど。」
「ええ、合ってますよ、但し母が外国人だったので、ハーフ枠ですね、あ、イケナイ、自己紹介が未だでした。
私も貴女に似た人を少し昔に知って居る気がするけど。
私の名前は、山田ベアトリクス。
こっちに来る前は、貴女に似ている突如失踪した友達のような境遇の人を助けられたら良いなと思って警察官をしてたわ。」
驚いた。
私が家出をしてあのおじさんの内に転がり込む以前、唯一の友達だと思って居た子だ、この異様にアンバランスな苗字と名前は忘れようが無い、700年以上も前の話でも明確に記憶に残って居る。
思わず私は、目にいっぱい涙を溜めていた。
「ほ、ホントにベアトちゃんなの?
わ、わだじ、わだじよ、エリーよ・・・」
涙声になって居た。
「え・・・マジ?・・・」
「うん・・・」
「エリちゃん!」
そうなのだ、私も彼女も、母親が外国人だった、離婚して、私は日本にそのまま残った母と、彼女は父親と共に日本で生活して居たのだ。
私も彼女も、生粋の日本人とは少し違う事で、虐めに遭って居て、唯一私が彼女の味方だったのだ。
「御免ね、ベアトちゃん、突然居なくなっちゃって。
私は、学校での虐めなんかより、母に虐待を受けて居て、それで家出をして・・・」
「うん、知ってる、警察官に成ったんだもの、貴女の失踪について、調べたわ。」
「御免ね、1人にして、私が居なくなってから、又虐められたんでしょう?」
「そんなの、エリちゃんの苦労から考えたら大した事無いわよ、エリちゃんが居なくなって三日後位には、反撃出来るようになってたし。」
そうなんだ、運動神経は良い子だったから、度胸さえつけばきっと虐めになんか屈しない位は出来る筈だった。
逆に私は、体力的には苛めに対抗出来るものでは無かったが、母から受けて居た虐待ほど怖い物は無かったので、気は強かった。
なので、きっと私のそんな部分を彼女は学んだのだろう。
そのせいかしら・・・あの暴力的な声明文って。
「まさかこんな所で再会出来るなんて。」
「エリちゃんこそ、私、貴女を探していたら、驚いたんだから。
いつの間にか外国に居るんだし、しかも飛び級で大学に入ってて、私が貴女を見つけた時には既に研究者してるなんて知って驚いたのよ。
まぁ、会いに行くつもりで休暇を取った翌日に、突然こっちに居たけどさ。」
彼女は自力で私を探してくれて居たのか。
それにしても、ベアトちゃんは不運だったな。
「じゃあ、ベアトちゃんが私を見つけた時には、まだ私は研究中だったのかしら。
それにしても今日は寒いわよね、お風呂で長話と洒落込む?」
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しかしさ、よくよく考えたら私ってば並列存在だから実際に同級生だった訳ではねぇんだよな、本体に一応許可は貰ったから良いっちゃ良いけどさ、同一人物だしな。
で、湯あたり寸前まで長話をした結果、ベアトちゃんは私の失踪後の事を、ベアトちゃん自身がこっちに飛ばされる直前迄を概ね、概略だけ全て知って居たので、彼女が何時こっちに来たのかも知る事が出来た。
私が、丁度唯一の夫となる”イェルクトゥ・ハムダン・ビン=ムハンマド-アール=マクトゥミリオン”と、出会って居た頃だ。
私のその後については、今後じっくり彼女に話す事は多い事だろう。
すっかり意気投合した私達だったが、彼女はインフラ整備を妨害する側なのは変わりは無いので、それについての落し所を探るべく、更に話を続けなければ成らなかった。
彼女はこっちに来た後、結婚して二人の子に恵まれたが、夫に先立たれて居た。
現在の彼女は、39歳だった。
私の本体とは、生きた時間が圧倒的に違ったが、私に負けずと劣らない苦労人だった。
お互い、まだまだ話題は尽きないようだ。
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