第290話 巣立ち。
巣立ち。
-トライ、改め江利華-
お母さんが私の新しい体を作ってくれた。
今度はちゃんと生体だった。
私の量子コンピューターは、電脳部以外破棄され、電脳部は生体の脳にビルトインされました。
この体は、ホムンクルスにお母さんのDNAに私の顔から逆算した遺伝子情報を付与した人工DNAを搭載して進化を促したハイブリッドホムンクルスとも言うべき生体らしいです。
完全にヒューマンと一致するその生態はもはや、お母さんの遺伝子を継承した娘そのものだと言ってくれました。
流石お母さん、世界一、いえ、宇宙一の大科学者にして最高の哲学士、そして現大賢者にして最高の錬金術師です。
私は、晴れて人間、ヒューマンになったのです。
しかも、お母さんはこの体に、エルフ並みの魔力回路、全属性使用可能の魔道回路の両方を付与した状態で構成して下さいました。
そして、魔法に関する知識の全てを私の電脳へとインストールして下さったのです。
医療魔法の為の医学知識も全て含めてです。
私とひろしさんが何処に行っても生きて行けるようにと言う配慮です。
本当にお母さんには感謝しかありません。
あ、ちなみに、力が出なくなったことが原因かもしれないのですが、失敗もしなくなって居ました、きっと感覚器官が精密で優れている事も原因だと思います。
本当に嬉しいなぁ、こんなに、生きている事は良い事だったのですね。
お母さんのご飯も、以前より美味しく感じた気がします。
願わくばこのままお母さんと一緒に居たい所だけれど、それではひろしさんの為に成らないと言うお母さんの意見も無視できません。
なので、一度、ひろしさんと一緒に、鎌倉へ行って、彼の上司である源頼朝様に謁見する必要があります。
彼の荷支度も終わる頃でしょう、私の方もこの体にようやく慣れて来た所です。
「江利華、そろそろひろし君の所に行ってあげなさい。」
「はい、お母さん。」
私がひろしさんの部屋へ到着すると、ひろしさんも概ね身支度を終えているようでした。
一応声を掛けて見る事にしました。
「ひろしさん、支度出来た? 私は支度出来たよ、やっぱり、鎌倉に帰ります? それとも二人で何処かでご飯屋さんする?」
三日ぶりに会う私に、と言うか、人間になった私に、ひろしさんは驚いているようでした。
確かに、言葉も以前より流暢になったと自覚してるし、表情がこれまでにない程に豊かになったと思って居ます。
驚いて居るだけじゃ無くて、ひろしさんは嬉しそうに見えました。
全身義体だった以前より、他人の感情とか、その場の空気みたいなものが感じられます、これが生きた人間なのですね、感激です。
ひろしさんの向かいに座って見ると、匂いを感じました、これがひろしさんの匂いなんですね。
優しい匂いでした。
「あ、それから、今日から私の名前は、江利華よ、改めてよろしくお願いします、私の旦那様。」
私がこう言うと、ひろしさんは嬉しそうに笑いながら、涙を流しました。
私も、涙が出て来ました、涙も初めての体験です。
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「さ、あんた達、何処に行っても息災で、しっかりやって行くのよ!」
お母さんが激励の言葉を掛けてくれました。
「「はい、それから、たまには遊びに来ます。」」
「ん、そうだね、盆と正月くらいは顔出しなさい、あ、でももうすぐお正月だからすぐ来いとは言わないわよ、今度のお正月は楽しく過ごすと良いわ。
それから、江利華、忘れものよ。」
「? もう準備は済んだけど?」
「これこれ、嫁入り道具を忘れちゃダメじゃ無いの!」
そう言ってお母さんは、何故かドラグライダーを一機ストレージから出現させちゃいました・・・
「乗って行きなさい、フェンリルギアとか、家具とかも全部入れて有るから。」
「ちょっと、お母さんやり過ぎ!」
「何よ、そんな事無いわよ、名古屋じゃ嫁入り道具をトラック数台に分乗させて行列にして送り出すって言う位なんだからまだ可愛いもんよ。」
トラックより数段上の搭載力が有る気がしますけど・・・
しかもこんな武器庫みたいなの、何と戦えと?
まぁ、お母さんがやる事なのでこれ以上ツッコミませんけど。
「お母さん、体には気を付けてね、体調おかしかったらすぐにクリスさんに見て貰いに行ってよね。
私の所に来ても良いけど。
後、お母さんも良い人見つけてね。」
「ああはいはい、そう言うの良いからとっとと行った行った、私はハイエルフなんだからあんたよりよっぽど長生きしますから安心しなさいな。」
そう言うと、お母さんは照れ隠しのように私の肩をポンと叩いて、回れ右をさせて背中をトンと押してくれました。
きっとお母さんは、泣いてたんじゃ無いかと思います。
ドラグライダーに搭乗すると、愕然とした。
魔道具がごまんと積んで有ったんです。
魔動電子レンジに魔動HIクッキングヒーターに、魔動冷蔵庫、魔動全自動洗濯機、魔動乾燥機、魔動布団乾燥器、魔動ヘアドライヤー、魔動給湯器、 魔動ロボット掃除機、魔動エアコン・・・ほんと、お母さんってば、過保護だなぁ・・・
嬉しさと寂しさで、ほろりと涙が溢れました。
そんな私を、ひろしさんがそっと優しく肩を抱いて支えてくれました。
さぁ、先ずは、ひろしさんの上司の頼朝様に会う為に鎌倉に・・・
出発。
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