第289話 パメラの願い

        パメラの願い

 -MkⅢ-

 ラーメンパーティーと化してしまった夕食だったが、何時の間にかやって来て居たカイエン夫婦には、パメラも同伴して居た。

 私は自分のラーメンを持ってカイエン一家の集まって居る卓へ向かった。

「カイエン、マカンヌ、相席させて貰うわね。」

「エリーちゃんどうぞぉ~。」

 マカンヌが隣を開けてくれた。

 マカンヌを挟んで反対側にパメラ。

 相席した理由は、勿論例の計画を話す為である。

 美味しい物を食べながらのお話はスムーズに進む事も多いからね、今が最大のチャンスです。

 ビールのアテに餃子を、MkⅣ由来で私が作った月名シリーズアンドロイドの皐月に作らせて、水無月に配膳させているので尚更だ。

 ちなみに、子供達にはオレンジジュース、クリスにはそれじゃ寂しいだろうからジンジャーエールを配膳させている。

 私が席に着くと、そこへ水無月が、私用に餃子とビールを運んで来た。

 なんかやっとこう言う宴会風の席でビール飲めるなぁ(しみじみ)、色々な人に阻まれて取り上げられてたからねぇ、まだ早いっつってw

 私は735歳だっつーのにな。

「MkⅢ様、どうぞ。」

「うん、ありがとね、水無月。」

「そう言えばエリー殿、何で今連れている従者のアンドロイド達はMkⅢと呼ぶんだ?」

 カイエンが今更な疑問をぶつけて来た、こいつそう言えば何気に天然なんだよな。

「何、今まで知らなかったの?

 私はエリーだけどオリジナルじゃ無くて、並列存在二体目だから、本体をオリジナルと呼んで、一体目の並列をMkⅡ、私は二体目だからMkⅢって訳なんだけど?

 知らなかったの?」

「へ・・・並列存在って・・・」

「え?マジで知らなかったの? 他に、ツインテにしてるMkⅣって居るんだけど?」

「何も問題無さそうにそう言う常識の壊れるような事をするな、お前は。」

 カイエンが頭を抱えている。

 マカンヌはそのカイエンの頭を撫で出るんだけど、マカンヌは解ってるの?寧ろ解っててくれてたらありがたいんだけど?

 そもそも何でそんなに不思議そうにしてるのかな?カイエンは。

「あのな、エリー、普通は並列存在なんてあり得ないだろ?」

 あ、カイエンがなんかちょっとお説教モードだ、私の名前の後ろの”殿”が外れた・・・何故?

「そんな事無いわよ? 私ハイエルフに成ったんだもん。

 ハイエルフはもっとも神に近しい人類だから並列御存在なんてスキルの一端でしか無いじゃ無いの。」

「そ、そうなのか? そんな話は初めて知ったんだが?」

 知らんかったんかい、今まで・・・

「あのねぇ、ちゃんと並列存在はハイエルフの知識を深める為のスキルとして種族スキルなんだけど。

 例の250年前に魔王認定されたっつーハイエルフの並列存在もそこいらに居るわよ?」

「え?居るのか?」

「むしろ知らない方が私は驚いたんだけど?

 例えば化粧品会社、モフレや、サンセイドウのCEOがそうだし。

 たまに出現する魔人だって、ホムンクルスで作った簡易観察用だから自分が並列って言う意識は無いとは思うけど、アレだって視界や思考をトレースされて居るからある意味並列存在なのよ?

 私のAIアンドロイドだって、電脳で行動監視とか出来るからそう言う意味では並列存在に近い物でも有るし。」

「じ、常識の壁が・・・」

「あんただって自分の並列存在にする気があったらAIアンドロイド作ったら電脳リンクするだけで出来るわよ?

 全身義体なんだから。」

「俺はハイエルフじゃ無いのにか?」

「まぁカイエンの場合、全身義体の電脳リンクアンドロイドって事に成るからむしろ従者みたいな面が強いわね、私の場合はハイエルフに成っちゃったからスキルのおかげで完全に同一人物の本当の意味での並列存在だけどな。」

「そうだったのか、すると、電脳にあるAIアンドロイドの製法を実践して作り上げたアンドロイドを電脳データリンクで繋いで好き勝手に行動させるだけで自分の体験した事以外の記憶を作れるって事で合ってるか?」

「まぁ、そんな感じね。

 そんな事よりも私からあんた達に提案が有るんだけど?」

「何だ?」

「なぁにぃ~?」

 間延びしたのはマカンヌ。

「実はな、パメラの様子を見ていて、やっぱり未だ親が欲しい年齢なんだなと実感してな、既にボクスとタイカンとは話が纏まってるんだが、私に、パメラを含めた三人を弟子入りって形で預けてみないか?」

「あらぁ~、私としてはパメラちゃんは確かに未だ親が近くに居ないと駄目だから連れて行こうと思ってたのよぉ~。

 エリーちゃんが弟子にしてくれるって事はこの子もなんかの才能あるのかしら~?」

「そうなのよ、この子ってば魔力が強いのよ。

 そうね、魔法の才能的には、カレイラよりも上ね。

 多分精霊魔導士でも行けるんじゃないかしらね。」

「精霊魔導士って、あの、あれか、ザインと同じ奴か。」

「そうよ、ニブイ割に良く咄嗟に出たわね、カイエン。」

「ザインのあの魔法はインパクト強かったからなぁ。」

 精霊を召喚して精霊に魔法を行使させようってんだからそりゃインパクト強いわな、確かに。

「ん~、じゃあお願いしようかしらぁ~?」

「あ、そう?マカンヌはこう言う時に判断早くて助かるわ。

 一見のんびりしてるのにこう言う判断素早くて男前なのよね、あんたって。」

「だってぇ~、エリーちゃんならパメラちゃんの寂しさを埋める物も用意してくれてるんでしょ?」

 良く判ってらっしゃるw 流石はおっとりしてても転生経験者だ。

「まぁね、パメラの為に用意する空中庭園の部屋には、本体から取り寄せたマカンヌの為に作ったプロトタイプの全身義体が有るからいつでも部屋に帰ると甘えられる。マカンヌ自身も電脳リンクで繋いであげるからパメラの様子を確認出来るし、それにこれから私が行くのもあんた達と同じ大陸だから、飛空艇に乗せたら何時でもあんた達の元まで連れて行ってあげる事も出来る、どうかな?」

「そうねぇ、それじゃお願いできるかしらぁ?パメラちゃん、エリーお姉ちゃんに弟子入りして魔導士になる?」

「あたち、まどうちになったらパパやママのおてちゅらいできゆようになゆ?」

 この疑問には私が答えるのが正解だろうな。

「勿論、むしろパパもママも、パメラ程の魔法の才能が無いから、とっても助かると思うわよ?」

「わかった、えりーおねーたんといっちょにいく。

 たまにぱぱやままにあわせてね、おねーたん。」

 ええ子やぁっ!この子、本っ当にええ子やぁっ!

 余りにもええ子過ぎてイイコイイコしたくなるわ!寧ろホッペプニプニしたいわっ!可愛すぎる!

「うん、これからよろしくね、パメラちゃん。

 先ずは字を覚えるお勉強からやろうね。」

「あい、えりーしぇんしぇい。」

 ズッキューンってなったわ、今、すげぇ攻撃力だ、私もこんなの一人欲しいわ!

 あ、いやまぁ、本体のとこ行ったらもう少しちっこいのが居るには居るけど、この位の女の子っておしゃまで超可愛いのよね!

 パメラちゃんはもうすぐ5歳、お化粧とかアクセサリーにも興味持ち始める頃だからこう言う時の女の子ってデタラメに可愛いんだ、私の娘はこの時期行方知れずだったし、様子の確認も出来なかったから娘が出来た気分。

 激萌えです。

「で、ボクスとタイカンなんだけど、こいつ等も良い才能が有るから伸ばしてあげたい。

 本人達は私の修行受けたいっつー事だし、あんた達も冒険者に登録させた程だからその辺は本人の判断を信じてるんでしょう?連れて行くけど良いわよね?」

「ああ、男の子だしな、信頼もしてるから良いぞ。」

「だってよ、良かったな、親父の許可が正式に出たぞ、ボクス、タイカン。」

「「はい、よろしくお願いします、師匠。」」

「エリーおねえたん、パメラ、ひとちゅおねがいがあゆの。」

 なんぞ考えてたパメラが私にお願いして来た、可愛い。

「なぁに? 言ってごらん?」

「まいにちおやつたべてもいい?」

 衝撃の可愛さだ! 小首をかしげて上目使いにお願い!

 あざとい気もするけどこの年齢ならそれもまた良し!

 勿論私はこのお願いを二つ返事で承諾するのだった!

「勿論よ! 毎日、ケーキやアイス食べて良いわよ、一日一個にしなさいね、食べ過ぎると虫歯に成るから。」

「はーい。 えりーおねーたんだいしゅき~。」

 ズッキューン!!!

 あ、イカン、鼻血が・・・

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