第287話 トーラス、弟子入りする。
トーラス、弟子入りする。
-エリー-
シャーリーちゃんに怒られた直後、トライに電脳通信でお願いしてあたしの主祭の机に置いて在った書類封筒をストレージに突っ込んで貰ったお陰でその場で原稿を渡して、説明し切れずに持ってるならすぐに寄こせともう小一時間説教を受けた・・・
流石にあれは疲れたけども、もうやる事が無くなったので、私達は帰る事にした。
だが、この国の王家としては、絶大な信頼と信仰を背負う事になってしまった私達を帰したくは無いようだ。
「アイン、ツヴァイ、そろそろ帰りましょう、明日の朝早々に引き上げるわよ。」
「そうですね、マスター、もうやる事も大概終えましたし、これ以上此方に御厄介になっても後々面倒になりそうです。」
「私も同意します、あまり依存されても面倒だと告げます。」
流石は私の優秀な助手アンドロイド達だ、私と同意見のようだ。
「よし、じゃあ、夜中の内に空中庭園に戻ろう。」
「了解しました。」
「了解しました、と告げます。」
「ママと一緒にマリイも帰りましょうね~、お家に帰りましゅよ~。」
「あい~。」
ご機嫌なマリイを抱っこしながら、私達の居る客室での密談は終わり、今後の方針が纏まった。
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『アイン、ツヴァイ、そろそろ行動に移るわよ。
センサーをフル活用して周囲を警戒して。』
『了解です、マスター。
現在この部屋を出る為の唯一の扉の前に三名の衛兵、廊下には凡そ20m毎に一名づつ、衛兵が立って居ます、普通に出て行くのは難しいと思われます。』
『アイン、ありがとう、窓は、どう?』
『はい、窓の外、外周には衛兵はほんの3名程ですが、ここは4階ですので、普通には脱出不可能と告げます。』
『ツヴァイも有難う、じゃあ、空中庭園に動いて貰うとしましょうか。』
私は、空中庭園を真上に移動させると、認識阻害をした上でトラクタービームを照射させて引き揚げさせる事にした。
バルコニーに出ると、既に空中庭園は真上でスタンバイして居た。
先ず、マリイを抱いた私がトラクタービームに入る。
続いてアイン、最後にツヴァイ。
ブリッジに転送された私は、そのままコントロールクリスタルを触って空中庭園の高度を上げる。
認識阻害をして居たおかげで、外に居た衛兵にも見つからずに脱出に成功した。
念の為監視用のナノマシンを放って、モニタリングをする事にした。
マリイをアインに託して寝かしつけるように命じ、暫く上空に停滞させたままで王城とその周囲を監視して居た。
するとやはり、恐らく交代時なんかに部屋に居るか、とかチェックして居たのだろう、私達一行が居ないと上を下への大騒ぎとなったのだった。
うん、やっぱりなんやかんや理由付けて軟禁してた訳だけど、私をそんな物で留め置く事が出来る訳が無いのだ。
さ、この混乱をもう少し見て居たい気もするけど、王とプローブ君の様子だけ見て帰ろうかなっと。
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「成らぬ、我が病を退けた術等は確かに貴重で喉から手が出るほど欲しい物ではある、だがしかし、御使い、いや、女神様を我らの身勝手でこの地に留め置く等、あっては成らぬのだ。」
「しかし国王、我らがこの国は未だ新興で認知度の低い国家で御座います、女神の寵愛を受けた国と成れば認知度も上がる事と思われます、是非我が策を。」
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成程、宰相が私達を独断で留めようとして居たのか。
ってか、宰相って、第二王子と結託して乗っ取る気だった奴じゃん?
何で牢に入れてた筈のが出てるのさ。
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さてと、私達は脱出できた事だし、トーラス君の居る牢にこっそり仕掛けて置いた転移魔方陣をそろそろ遠隔動させようかなっと。
転移先はこのブリッジね。
トーラス君を攫って消える女神様、か、面白い展開よね、クスクス。
突然転移魔方陣が稼働して急にこんな所へ転移させられたトーラス君は、転生者にも拘らず驚きまくっている。
「え? え?? えぇぇ???」
「ようこそ、空中庭園、ブリッジへ。」
「!? く、空中庭園??」
「ヒューマンでは招待されたのは貴方で二人目ね、1人目は貴方のお兄さんのプローブ君ね。」
「ブリッジと言う割には、窓が一つもありませんね。」
「そこ気になっちゃったか、こうすると、ほら。全周囲に、外の風景がホログラムで映し出されるようになってるのよ。」
唖然として見回すトーラスだった。
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「んじゃ今度はこっちね、お風呂はちゃんと男女別にしてあるから安心して使ってね、こっちが男湯であっちが女湯だから。
ちなみに女湯は私だけじゃ無くてアイン、ツヴァイも使うからね、もしも覗いたりしたら命の保証は出来ないのでよろしくね。
じゃあ次ぎに行きましょう。」
トーラスは青ざめているように見えるけどまぁ良いだろう。
今私は、空中庭園内の施設を案内して周っている。
「あ、あの、さ、エリー・・・さん?」
「ん?なぁに?」
「ここって、空中に浮いて居るんですよね?」
「当たり前じゃないか、空中庭園だと言ったろ?」
「ああ、いや、何て言うか、こう、全く揺れたりしないし、しっかりと大地に足を付けて歩いて居るみたいと言うか・・・」
「ああ、そう言う事か。
あまり気にしない事だな、この空中庭園がもしも逆さまになって居たとしても今足を付けているこの床は常に床だから、そう言う事だから揺れとか感じたりするはず無いだろう?」
「それはどう言う技術なんです?」
「決まってるじゃないか、この空中庭園は重力を操って空中に有るんだし、重力を操れる以上どんな姿勢になった所で常に重力は必要な方向から搭乗者の体に掛かって居るのだから揺れる訳が無いだろ? そう言う事だよ。」
「半分以上何言ってるのか判らないんですけど・・・」
「君にはまだ哲学は理解の範疇に無いようだな、その辺りも教えて行くか。」
「哲学なんですか?」
「そうだよ? 理を解して真理を探求し、哲理、即ち物の本質を理解する事で得た知識を利用してこその技術を使っている以上私の理学が理学を超えて哲学だと言う事だ。
哲学は奥が深いぞ? 何なら星の重力から開放されて何のストレスも無く大気圏を脱する事も可能な宇宙船さえ私に掛かればプラモデルみたいな物だと言う事よ。」
「まさかの宇宙船をプラモ扱いっすか・・・」
「今はこの世界に来て日も浅いからこの星を理解する事が重要だけどね、なかなか面白いわよ、ここは、私の知らない未知の金属、未知の生物、未知の素粒子に溢れて居る。
貴方には私の弟子に成ってその哲学士として私の助手をして貰います。」
「すみませんが、俺、ヒューマンなのでそんなに長生きが出来ない気がしますが・・・」
「あ、大丈夫よ、その気になったら全身義体で何百年でも行けるし、何なら私と同じような方法でハイエルフに至って貰っても良いしな、何ならこの子のように人工的にハイエルフに進化させても良いと思ってるわよ?」
「・・・・・そんな簡単に言いますけど、マジで言ってます? もう序盤位で理解を完全に超えてますが・・・」
「今は未だそうでしょう? でも私はこの行に自力で達して自力でハイエルフに進化したんだから大丈夫、行けるって。」
「そんなもんですかねぇ・・・」
「難しく考えるから難しいのよ、こう言うもんなんだって強引に理解した後からどうしてそうなのかを探求する方が簡単だったりするもんなんだから。」
「はぁ・・・」
「あ、それからね、貴方のこの空中庭園内でのお部屋がここね。」
「え、部屋も有るんですか?」
「勿論あるわよ、何なら、テレビ番組は少し無理があるけれど、私が電脳で記録して残してある古代のアニメで良ければモニターに映して見られるわよ?」
「は? マジで言ってます?」
「何よ、そんな事ウソ言ってどうする訳?」
「っっっっっっっしゃぁぁっ! 嬉しいっ!」
「まぁ、私が記録してあるのなんて精々9000Ω程度しかデータ量割いて無いから大した数は無いわよ?」
「お・・・オメガって・・・すげえ量じゃ無いですか。」
「そう?大した事無いじゃない。 古~いアニメよ?」
「十分です、2400年代位のとか、2000年代のとか在りますか?」
「お目が高いじゃない、特に2000年代のは良いの多いわよね、その年代なら割と揃ってるかな?」
「嬉しいですね、秀逸なのが多かったと聞くので見たいと思ってたんですよ。
2400年代は俺の生きてた時代なので個人的に。」
「そうよね、そう言うの懐かしいわよね。」
「ええ、楽しみです。」
「良いけど修行もするんだから夜通し見てて起きられないとかは禁止ね、その辺は厳しくいくからね。」
「はい、師匠、これからよろしくお願いします。」
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