第285話 MkⅣ奮闘記

          MkⅣ奮闘記

 -MkⅣ-

 インフラ整備を始めて、かれこれ二週間。

 街の外の整地、トンネルの掘削、橋脚の土台になる基礎作りなどの作業を大人数で同時進行している。

「エリー様、石見トンネル掘削班から無線が入って居ます。」

「又あそこなの?もう今週3回目よ?」

「兎に角問題が多いですよね、あのトンネルは。」

 私は高出力無線機に向き合い、少し面倒臭げに。

「今度は何よ、どうしたの~?」

『あ、エリー様、この石見は元々銀山で有名だったのですが、その銀山部分より下の地層を掘削して居たのです。

 それでですね、今回、その深層の地層から、ミスリル銀鉱脈が出て来て仕舞いました。』

 何とビックリだ。銀山だから可能性は有るとは思って居たけれど、まさかまさかの大当たりだ。

「判ったわ、今すぐそっちに向かいます、今一番最寄りの拠点に居るから一時間以内に到着するから一時作業中断しといて。」

『了解しました、お待ちしております。』

「卯月、ここの守りはお願いね、少し出て来ます。」

「はい、行ってらっしゃいませ、MkⅣ様。」

 フェンリルギアに跨って出発する。

 出発して5分も立たない内に、ゴブリンの群れ?

 いや、これは餓鬼と言う奴か。

 近くに伽梨帝が居るのかも?

 まぁ、伽梨帝は魔物と言うよりも土地神のような部分が強いので、説得出来るならそうして移転して貰えないかの交渉をしたい所だけれど、今は私は急いで居るのでそんな事して居る余裕は無い。

 取り合えず餓鬼を残さず撥ねてそのまま轢き逃げ同然で走り去る。

 残さないように左右にブレードを展開して居るので避けた餓鬼は軒並み断頭され即死だろう。

 だがそんな事はどうでも良い、今重要なのは一分一秒でも早く石見銀山に到着する事だ。

 なんつったってそろそろ日が落ちかけて居るんだから、ストレージの機能で根こそぎ回収して直ぐに帰らないとお腹空いちゃうでしょっ!

 伽梨帝がもしも近くに居たとしたらその対処は弥生達にお任せです。

 交渉して引いて貰うもよし、倒しちゃってあの子達の経験値にするも良しです。(本当に倒しちゃっても良いかどうかは知らんけど)

 だってさぁ、伽梨帝って一説によれば鬼子母神の事って言う噂も有るしなぁ。

 まぁどうでも良いか、倒したとしても私が倒した訳じゃ無いからね、まさかAIアンドロイドが呪われたりせんだろう。

 まぁもしも呪われたところで命が有る者でも無いからロクでも無い事に成ったりはしないと思うし。

 ---

 走って行ける所にも限界はある、何故ならこの先は未だ開拓の手が入って居ないからだ。

 この森を飛び越えないと石見銀山へ続く道には出られないのだ。

 フェンリルギアを変形させ、バックパックの推進力で大ジャンプをする。

 すると、目の前に、小規模のものではあるが、ワイバーンの群れ・・・ち、ついてネェな。

 魔剣グラムを抜いて切って落とす。

 もとい、切ってストレージへ。

 ワイバーンは美味しかったしな。

 唐揚げとかでもうずいぶん食べちゃったしな、補充だ補充。

 兎に角食材大歓迎だから良し!

 ようやく目的地の山肌が見えて来た、けれど向う側から掘削して居るから反対側へ回らねば成らない。

 私は迂回する事にした。

 と、そこにフェンリルの成りそこないと揶揄されるがそれだけにかなり強い狼の魔物、グレーター・ジャイアントファングの、小規模だが群れと呼べる集団が居る、当然それは、此方へ向かってきた。

 まぁ、こんなの10匹程度の規模で襲って来た所で私に敵う訳もねぇんだけどな。

「アクアブレード。」

 並列存在の中でも私が考えたオリジナルの魔法。

 ウォーターカッター系の最上位で、一万気圧の水を扇状に薄く刃として噴射する魔法。

 最長10m先位迄は、多分亜竜の硬い鱗でも確実に切断出来る。

 範囲自体は、どうしても水だから射程が短くなるけど、その水圧による効果は計り知れないだろう。

 実際の話、私の限界まで圧縮したオリハルコンのインゴットが斬れちゃう。

 これで斬れない物は先ず無いんじゃ無いかな?

 この一発で8体を切断して、残りは、3体居た。

 ので、フェンリルギアで殴る。

 この魔物よりも上位のフェンリルの名を冠しているユニットが負ける訳も無いし負ける訳にはいかんよねw

 そしてようやっと掘削中のトンネルの入り口に到着、もうすっかり夕方になってしまった。

 全く、急いでいる時に限ってこうやって邪魔が入ったりするんだよね~。

「お待たせ、連絡くれたのは貴方?」

「はい、僕です。」

「うん、有難うね、貴重な金属を発見してくれたあなたには特別ボーナスを進呈します。」

 埋蔵量にもよるので正確には算出できないが、100両くらいには少なくともなるだろう。

 ひと財産築いたよね~。

「や、やった!」

 とても嬉しそうだ。

「一本道ですが、ご案内します、此方です。」

 うん、一本道なのも知って居るけどエスコートしようと言うその心根も気に入った。ボウリングマシーンの先までたどり着き、サンプリングした鉱石を手渡された。

「此方がその鉱石のサンプルです。」

「ん、ありがと。」

「鑑定すると、確かにミスリル銀鉱石、それも純度もなかなかの良さだった。」

 これがどの位、この奥に眠って居るのかが問題だ。

「掘削面まで出られる?」

「あ、はい、水も出て居ないと思いますので、大丈夫だと思います。」

 掘削境界面迄出て見ると、思ってたよりもちょいちょいと細かい鉱石があちこちから顔を覗かせると言った体で、中々見ごたえが有る感じだ。

 目視出来る鉱石の中でも一番大きそうな物に触れ、それと同じ物をストレージへ、と言う感じに指定すると、何だか一気に大量の鉱石がストレージに入った感覚を覚える。ンで、一応どの位の量が入ったのかチェックすると、25.5tものミスリル銀鉱石が収納されていた。

 元々持ってたのが凡そ3.5tだった筈だから、22tも収納に入ったって事っすか?

 本当に希少金属なのか不安になる程の量が採掘出来てしまった・・・

 ちょっと見つかっただけで、それもストレージの収納可能エリアの範囲内だけでこの量って言うのは、これまでで初めてだ。

「え?凄い、一瞬で目視で来てる鉱石が消えた。」

「うん、私のストレージの収納可能範囲内の物は全て収納したからね。」

「どのくらい、ありました?」

「それなんだけどね、おめでとう、凄い量だ。」

「え? それって?」

「うん、私の事業だから私の物に成っちゃう訳なんだけどさ、これ程の量が採れたとあっては発見者に褒賞を出さない訳にはいかないでしょうね。」

「ほ、本当ですか!? 今度子供が生まれるので、色々要り様ですから助かります!」

「そうねぇ、これ程の量だったら、この位出しても惜しくはない、か。」

 そう言いつつ、菓子折りのような箱をストレージから取り出す、この箱もストレージ内で作成、中には50枚ひとくくりにした帯封付きの小判が六束。

 要するに300両。

 ハッキリ言えばこんな量の小判が有ったら遊んで暮らせるだろう。

 だけどこの勤勉な人ならばきっと人生狂っちゃったりする事は無いだろうと言う私の認識の基に算出した額だ。

「はい、これが貴方への報酬。

 奥さん孝行して、明日からも一層頑張って欲しいです。」

 手渡した菓子折りがこんなに重いとは思わなかったようで、受け取るなりガクンと落としそうになって持ちこたえた。

「な、幾ら入ってるんです?」

「お家に持って帰ってから確認なさいな。

 貴方は明日お休みで興はもう上がりの筈でしょう。」

 現場で働く、エルフ以外の人種なら、電脳化をして居るのでスケジュールも手に取るように私にはわかる。

「あ、はい、有難う御座います。」

「さ、私も帰るし、もう上がって良いわよ。」

「はい、お疲れさまでした!」

「さ、私も帰ってご飯だわ。」

 ---

 帰り道・・・何だけど・・・

 何なのよ、この異様な魔物の多さは。

 もう日が落ちちゃったから、そりゃ活性化してるのは判るけどさ、幾らなんでも酷くね? お腹空いたよぉ・・・

 ボアやらファングやらベアーやら、ありとあらゆるタイプの魔物が続々私の行く手を阻むんですけど・・・

 私はとっとと帰ってご飯食べたいの!

 食材が多いからってそんな、食われた恨みの様に押し寄せるんじゃない!

 キリが無いよ~、何でンなに集まって来るのよ。

 うう~、マジでお腹空いたぁ~!!

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