第279話 グローリーの披露宴3

         グローリーの披露宴3

 披露宴が開催された。

 料理の評判は、異常な盛り上がりを見せる程の高評価だった。

 食器を下げて居ると、声を掛けられた。

「ちょっと貴女、少しだけお時間宜しくて?」

「あ、私? なぁに~?」

「わたくしは第三王女で、ニスモ侯爵が妻、デイジーと申します、貴方様はエリー様とお見受けしますわ。」

「そうだけど、なんか用?」

「なんですの?その無礼な態度は。」

 ちょっとこの傲慢な反応に少し敵対心が芽生えた。

「どっちが無礼だと? 私は735年を生きたハイエルフで貴方の御父上の友人で大賢者と言われて居るのだけど、そんな私に対してどの面下げて呼び付けたのかしら、この小娘は。」

「ちょ、ちょっとお姉さま、おやめ下さいませ、この方は一瞬で国を滅ぼす事すら出来る大魔導士でも有ります、無礼なのはお姉さまの方よ。」

 なんか私がちょっとムカついただけだったのだけど、慌ててセレナが間に入って来た。

「セレナ、その、わたくしはわたくしが冒険者ギルドへ出した依頼を蹴られたのを少し不快に思ったから声を掛けただけだったのよ。」

「成程、ちゃんと伝わって無かっただけなのかな?

 私が依頼を断った理由は、元々あんたの御父上と友人に成ったので直接依頼を受けてたのと同じ内容だったからよ、友人として受けた依頼なのにその娘からお金取る訳にいかんでしょうが。」

「あらまぁ、それは失礼を。

 後でシルフィーに苦言を呈しておかなくちゃですわ。」

 いやお前、お前の強引な指示が原因でしょうが。

 もしかしてこいつって無自覚悪役令嬢体質か?

 むっちゃ悪気無く周囲を不快にさせる奴な?

 まぁセレナの顔を立てて怒るのはやめるけどさ。

 いつか何かやらかしそうだね。

 一応要チェック人物リストに入れておこう。

「ああ、そうそう、セレナちゃんにプレゼントがあるのよ。」

「え、私にですか?エリー様。」

「はい、これ、私のお料理のレシピ集よ。」

「えぇ~!素敵~!」

「あ、あの、エリー様、わ、わわわ、私にも・・・」

「えぇ~、おめでとうのプレゼント何だけどぉ~?」

「そ、そうよね、御免なさい、つい。」

 うん、根はやっぱ悪い子じゃ無いっぽいな、でも言動が直情的過ぎるんだろうな、きっと。

 仕方無いな、許してやるとしよう。

「ったく、仕方ネェな、同じ物はあげられないわよ~?

 スイーツの項目が無い料理レシピ本ならあげても良いわ。」

「ほ、本当ですの? ありがとう御座います。」

 ホラな、このテンションで喜んで素直にありがとうが言える子なんだ、悪い子では無い、あくまでも悪い子では・・・ね。

 何だか誤解されがちな性格に成っちゃったと言うか、言動がどうにも、なのよ。

 きっとこの言動のせいで誤解された元も過去にも何度も有った筈なんだけど自覚が無い。

 そこへ、冒険者ギルドに依頼を出しに来てたシルフィーちゃんが現れた。

「あら、シルフィー、何処に行ってらしたの?」

 デイジーが気付いて声を掛ける。

「あ、デイジー様、すみません、厨房に回って居りまして。」

「厨房に?何か御用があったのかしら? まぁ、良いわ、此方がエリー様ですわ。」

 デイジーが紹介をしてくれたのだが、突然にシルフィーが私に対して声を荒げた。

「貴様がエリーか! デイジー様の依頼を断るなど言語道断、そこに直るが良い、成敗してくれる!」

「ちょ、何を言って居るの、シルフィー?」

 おろおろするデイジー。

「は? 誰が誰を成敗するって?思い上がるなよ小娘!」

 思わずキレ掛かっちゃった私だった。

 未だ貴族会館の建物内だと言うのに剣を抜くシルフィー。

 パニックになるセレナとデイジー・・・

 成程、デイジーちゃんの勘違いされる言動を更に此奴が誇張してるな?

 いっぺん痛い目見ないと駄目かも知れん。

「覚悟せよ!」

 いきなり切りかかって来るシルフィー。

 私は紙一重で躱して、その額にデコピンを一発。

「き、貴様! 私を馬鹿にするな!」

「馬鹿にしてるんじゃ無くてアンタが本気で馬鹿なだけでしょう? どんな脳筋なのよ、勘違いも甚だしい!」

 ロングソードを横薙ぎにして来るが、それを私は、左の親指と人差し指でキャッチし、右手でシルフィーの頭にチョップをする。

「こら、目ぇ冷ませ! こんな所でそんなもん振り回したらセレナやデイジーが怪我するでしょうが!」

「う、ぐぅっ! 貴様、私がそんなヘマをするように見えるか!?」

「見えるね、思いっきり、意味不明に頭に血ぃ上らせてこんな室内で剣抜いて振り回すような直情的なアホの子、他に知らないわよ!?」

 面倒くさく成ってそのまま剣を折ってやる。

「な!? くっ! きっと劣化して居たのだろう。」

 足に括りつけてあった短剣、と言うかナイフ迄抜く始末。

 一度距離を取って突進して来たシルフィーを紙一重で避けつつ、ナイフを叩き落し、足を引っかけて転ばしてやる。

 ここでやっとデイジーが我を取りもどした。

「いい加減にしなさい!シルフィー!!」

 起き上がりかけてその声にビクッと反応するシルフィー「で、デイジー様・・・」

「貴女! 何を誤解してらっしゃるのか知らないですけど、エリー様は父上の友人でお友達として先に依頼を受けて居らしたのよ! 私の依頼を蹴ったのは父と同じ依頼内容のわたくしの依頼を受けてしまったらわたくしから不当に報酬を受けてしまう事と、父上に対しての不敬に当たってしまうから敢えてお断りして下さったのです!」

「え? では・・・」

「そうです、貴女の早とちりですわ。」

 はぁ、交友関係はもう少し選びなさいよね、王女殿下なんだからさ。

 頭痛くなって来たわ。

「あのねぇ、シルフィーちゃん?

 そもそも、私と敵対するってどう言う事か知らないの?」

「へ?」

 ああ、ダメだ、ゼンッゼン気付いて無いのね。

「あのな、私に敵対するって事は、この国ごと消し飛ばされても文句言えないって事よ?」

「そうなのよ? 剣をへし折る程度で許して貰えてよかったのよ?」

 デイジーもちょっと頭を抱えている。

 デイジーちゃん、周囲と自分の大らか過ぎる言動が自分を追い詰めるタイプの無自覚悪役令嬢だった・・・

 あかんな、こりゃ。

 電脳化して悪役令嬢物のラノベやコミックの知識詰め込んで贈ってやるとしよう。

 自分の作ったAIアンドロイドに保護の名目で軟禁されてた時代にさんざ読み倒したもんですっかり覚えちゃったんだよね。

 しかも電脳で記憶してるもんだからコマ割からキャラの台詞からすっかり完コピです。

 兎に角こうして一連の騒動はやっと決着を見たのだった。

 ---------

「エリー殿、流石であった、どれも食した事の無い料理ばかり、しかも最高の味だった。」

 王にべた褒めされ、

「大賢者殿、その節は失礼致しました、名代であったとは言え、近衛兵一つも掌握し切れなかったのは不徳の致す所です。

 所で、エリーさんって一体いつの時代から転生して来られたのです?」

 あの王子にも張り付かれる羽目になってしまった。

 その後、王子とは小一時間おしゃべりする羽目になってしまった。

 彼は2080年頃に地球で生活して居た人物らしい。

 彼にも電脳化を施して、当時の様子を私が個人的に興味あったので知識や記憶を読ませて貰う事にした。

 代わりに、興味ありそうだったので電脳技術や全身義体の技術の一部を教えてあげる事にして、今回の王都訪問は終了したのだった。

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