第278話 グローリーの披露宴2
グローリーの披露宴2
「じゃあ、ルールを決めましょう、先ず、私と料理長のサシの勝負で、審査員はここに揃って居る料理人たちで良い?」
「構わん、だがそれだとお前は不利だろう?」
「べっつに~? 料理人なら本当に美味しい料理を不味いなんて口が裂けたって言いたく無いと思うわよ?
それこそ料理に対しての冒涜も良い所でしょう?自分自身を否定する所業でも有るしね。
ここ迄言っても不正をしたい人はすれば良いんじゃない?
その後自分の料理を全否定した気持ちでいっぱいになってお仕事辞める羽目に成ってもそれはその人の自由だからね。」
「随分と自信が有りそうだな、嬢ちゃん。
まぁいいや、ルールは解った、じゃあ、どう言う料理対決にするんだ?得意料理で勝負か?それとも課題料理で勝負か?」
「そうね、折角だから同じ物を作って比べましょう、料理はそちらで選んで貰って良いわよ。」
「そうか、じゃあ、料理の種類と言うより、素材を選んでそれをどれだけ美味い物に仕立てられるかで勝負しよう。
うーん、素材は、伯爵領から来たお前さんにも不利にならない様に牛の肉で良いか?あそこに居たなら牛も知って居るだろう?」
「牛肉ね、良いでしょう、じゃあ私が素材は提供するわね。」
「持ってるのか?」
「ストレージに大量にあるわよ、それもただの牛じゃ無くて、魔物の牛の中でも一番味が良いって言われてるハンマーヘッドオックスのお肉ね。」
「何で嬢ちゃんがそんな肉を?」
「あら、言わなかったかしら、私は冒険者、しかもCランクよ?」
「成程、見た目道理の年齢じゃ無いのか。」
「始めからそう言ってるでしょう?私はハイエルフ、現在735歳なんだけど?」
「な!? こ、これは失礼した、お嬢ちゃんなんて言ってしまって。 あんたから見たらワシの方がよっぽどクソガキだったと言う訳か。」
「ま、そう呼ばれるのはいつもの事だし気にして無いわよ、さ、そろそろ始めましょう。
あ、そこの貴方、ジャッジリーダーして頂戴、開始の合図からお願いね。」
「ああ、はい、お、俺ですか? じゃ、じゃあ、判りました。
それでは、制限時間は、半刻とします、始めて下さい。」
さてと、私は作る物は決めて有るんだ。
このハンマーヘッドオックスで、最高のビーフミンチカツを作る。
とうとう必要な食材が揃ったからね。
何が無かったのかって?
それはね、お肉の臭み消しと香り付けに、特にミンチカツに入れるととっても良い香味になるのでクミンシードです。
これを砕いて粉末にしてお肉に混ぜるのよ。
すっごく風味がよくなるんだ。
玉葱の微塵切りとミンチにしたお肉、クミンパウダーをよく混ぜて、好みの大きさに分けて成型、小麦粉を付けて卵に潜らせ、生パン粉の衣を付けたら、手始めに160℃の低めの温度の油で揚げ、音が変わったら上げて油を切って置く。
その後、180℃の高めの温度の油で二度揚げ、こんがりと良い色に上がったらもう一度油を切って盛り付ける。
あ、言い忘れたけどキャベツはコールスローにしてストレージに仕舞ってあったのが有るので先に盛り付けて置きました。
アクセントに紫キャベツか赤玉葱のスライスを一つまみ、キャベツの上に彩りとして乗せるととんかつ屋さんっぽく少し高級そうになるよね。
ソースは私のオリジナルの、野菜や果物をじっくり煮込んで造った特製のとんかつソースとウスターソース。
序でにコールスローに掛けるようにマヨネーズを添えて、完成。
料理長の作った料理は、ラードを引いて丁寧に焼いたと思われるごくごく普通のステーキだった。
「肉ならばこれが一番シンプルに美味いのだ。」
うん、確かに美味いとは思う、だけど、焼き加減がその味を圧倒的に左右するから難しい、最重要な技術だよね。
見た感じ、ウェルダンに焼いてるみたいだけど、焼き過ぎでは無いだろうか、所々炭化して居るように見える。
牛なんだから無理に焼き過ぎない方が硬く成らないで美味しいのに、勿体無いよね、しかもラードって言うのは牛脂では無くて豚の油を集めて固めた物だ、実に残念。
逆に私のビーフミンチカツは、熱はシッカリ通して居るけど中心部はほんのり赤みが残るミディアム仕様。
ちなみに使った油はピュアオリーブオイルと菜種油の混合。
EXヴァージンオイルとか使うと香りが強すぎるので揚げ物には向かないので絶対使わないでね。
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‐審査‐
「うまっ! 何だこれ!」
「うん、ムッチャクチャうめぇ!」
「料理長スマン!これは無理だ!」
等々・・・
結果、満場一致で私に軍配が上がった。
「ば、馬鹿なっ!」
慌てた料理長が、審査員の食べているミンチカツを奪って一口。
「ん・・・ぐぅっ・・・か、完敗だ・・・」
「どう?少し私を舐めてたのが最大の敗因だと思うんだけど、どう?」
「いや、そんな生易しいもんじゃない、あんたの技術に比べたらワシなんぞ赤子同然だったようだ。」
「そんな事無いわよ、心の隅で油断があった筈、じゃ無かったらこんなに奇麗な切口のウェルダンに焼いたステーキなのに表面の一部が炭化しちゃってるなんて勿体ない焼き方に成らないと思うわよ?」
実際にナイフを通して見ると、炭化する程焼き過ぎたウェルダンと思えない位に丁寧に焼かれた時のようなウェルダン特有の切口がそこにはあったのだ。
「炭化してる? 焦げ過ぎたって事か・・・」
「そう言う事、でもね、牛の肉はウェルダンよりレアの方が美味しいわよ。」
「それでは火が通らないでは無いか、中が冷たい肉になってしまう。」
「そんな事無いわよ、ちょっと良いかしら、いくつか使わせて貰うけど。」
そう言って厨房に立った私は、料理長の焼いたロースより2倍近い厚みのあるサーロインを一枚取り出した。
フライパンを加熱して、油煙がたつほどに加熱する。
そこに、ラードでは無く、バター、これは乳が由来だけどこれも牛の油の一種だからね。
バターを溶かしてフライパン表面に伸ばす。
おもむろに肉を乗せて、表面にしっかり焼き色が着く様に強火で焼き、裏返して、そこに白ワインを落とす。
火が付いたら蓋をして火を止め、フライパンを濡れた布巾の上に置いて1分半程余熱調理をする。
蓋を開けてお肉を盛りつけて完成。
ちゃんと中まで熱の入った暖かいレアステーキが完成だ。
「はい、食べて見なさいな。」
「なんだこれは・・・中はまだ赤いのにちゃんと温まってる、しかも柔らかい。」
「ちゃんと中まで熱が入ってるでしょう?」
「ああ、ステーキ一つとってもまるで技術が違ったんだな、完敗だ、参りました。」
こうして、私が披露宴の料理を取り仕切る事に成った。
料理長以下、調理員全員に電脳化を施して、レシピを全員にアップロードし、その上で何を出すか検討した。
「あの、一番新人の僕が提案するのもアレですが、ラーメンと言うのに興味が有ります。」
「ほう、良い所に目を付けたわね、私のストレージに今幾らか入ってるし、食べて見る?」
「今食べられるんですか?」
「はい、先ずこれが、ガラスープの醤油ラーメン、で、塩ラーメン、味噌ラーメン、塩白湯、豚骨、豚骨醤油、こっちが牛骨、これは煮干のお出汁の醤油で、これが煮干し出汁と豚骨のダブルスープタイプ。」
一通り、今出せる物を全部出して見る。
「一口にラーメンと言ってもこんなにあるのか・・・」
「まだまだほんの一部よ、このほかに、ラーメンの親戚みたいな、フォーって言うのとか、スープパスタなんて言う、ラーメンの類似品みたいなのも有るし。」
そして、結局、締めの一品として、ガラスープの醤油を半ラーメンで出そうと言う方針に成った。
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先ずは前菜が、何故か棒棒鶏とサーモンのカルパッチョパプリカピクルス添えと言う謎の組み合わせになった。
でもこの二種で前菜が出てもあんまり違和感が無いのよねw
スープは副料理長のたっての希望でコーンポタージュ。
二品目が、モヤシナムルと、煮凝り。 この組み合わせも割と謎だ。
三品目、メインにクルマエビのフライタルタルソースと、鹿肉の一口ステーキ。
付けあわせ的にスライスしたバタールにガーリックバターをたっぷり塗って焼いたトースト。
四品目、ここにラーメン。
五品目のデザート、ここには私がみんなの度肝を抜いてやろうと思って、バニラアイス、ラムレーズンアイス、チョコレートアイスの三色アイスを用意。
メニューが決定し、セドリック夫妻も到着、各貴族も王都へと集まって、翌日、披露宴が開催されたのであった。
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